恋人の過去が気になるか、否か。永遠のテーマだ。
個人的には、サラッと「全然、気にしないよ」と詮索しないタイプでありたい。
では、愛人の過去についてはどうだろうか?

デートへ誘う際は「手書きのメモ」を使い、待ち合わせ場所には「書店」を選べ


「愛人を作るためのHow toドラマ」を謳う『フリンジマン~愛人の作り方教えます~』
「フリンジマン」4話。ホテルへ誘われるも、女の過去にビビる男にシンパシー、それにしても筧美和子が光る
原作コミック2巻

“愛人教授(ラマン・プロフェッサー)”の異名を持つ井伏真澄(板尾創路)が率いる「愛人同盟」。そのメンバーの一人、田斉治(大東駿介)は社内の独身男性ほとんどが狙う入社2年目の後輩・山口詠美(筧美和子)を“愛人の原石”だと見定めた。

山口も、田斉に思わせぶりな態度を見せている。「ウチに寄っていきません?」と自宅へ誘ったり、つきまとう元カレを諦めさせるため「彼氏のフリをしてほしい」と依頼してきたり。しまいには、自分の方から腕を組んできたり。

消極的で度胸のない田斉も、井伏からの薫陶を受け、また「愛人を作りたい!」という欲が本格的に目覚め、ようやく能動的に動き始める。
田斉 教えていただきたいんです、彼女を本当のデートに誘う方法を。
井伏 田斉さん、いよいよ本気になってきたようですね。

田斉治、覚醒の時か!? っていうか、愛人作りに目覚める瞬間を、なに“いい話”みたいに描いてんの、このドラマは……。

せっかくだから、井伏教授が授けた“デートに誘う方法”2つを以下に列挙しよう。
・デートに誘う際は、メールではなく手書きのメモを使え
「昨今の不倫は、メールやSNSが原因で足がつく場合が多いのです。
その点、証拠の残らないメモは一番安全です。そして何より、肉筆のやり取りはそのスリルもまたひとしおなのです」(井伏)
・待ち合わせ場所は、会社近くの書店にしろ
「万が一見つかっても、さして怪しまれない」(井伏)

筧美和子の攻め気を意気に感じるべき!


第4話の主役は筧美和子だ。この回は、彼女に見どころが集中していると言っても過言ではない。

まず、書店に現れた彼女のファッションがやる気満々。胸の谷間を大胆に見せ、笑顔で駆け寄ってくるのだ。
「これって、世に言う不倫ってことになるんですかね? でも、エッチしてないから不倫じゃないか」(山口)
この攻め気を、意気に感じないでどうする。……が、やっぱり田斉は田斉。この日の2人は、食事をしただけで解散してしまった。

しかし、責められない。こんな経験は、男なら誰しもあるはずだ。男性視聴者の心の傷に塩をまぶす展開である。

AV出演の過去に怖気づき、“愛人の原石”を逃す


山口の元カレが働くショップへ行った際、元カレが落とした携帯電話を拾い、持ち帰ってきた田斉。待ち受け画面には、山口ではない女性とのツーショットが設定されていた。


この“待受の女”の正体だが、「愛人同盟」の一員・坂田安吾(森田甘路)が不意に突き止めてしまう。レンタルビデオ店でアルバイトする坂田は、棚戻し時に“待受の女”がジャケットに写るDVDを発見。なんとこの女性、AV女優だったのだ。
田斉 す、凄い男だ……。
坂田 凄いか? AV女優なんて、誰にでもやらせんだろ?
井伏 いや、AV女優は極めて難敵です。男たちからの口説きの最前線で戦うキャバ嬢をはじめとする水商売の女たち(ピンサロ嬢、ソープ嬢など)。その中でAV女優は、最終進化形と言っても過言ではない、ハイレベルな種族なのです。

そして、急展開。井伏から「女性のホテルへの誘い方」を教えてもらいたかったものの、AV女優の話題で盛り上がってしまい策が伝授されなかった田斉は、社内で“待受の女”が出演するAVを何気なく検索。
すると、背後から山口がパソコンの画面を覗き込んできた。そして、彼女の表情は一変する。

田斉 ちっ、違うんだよ! これ、ウイルスでさ。
困ったな……。
山口 ……あの、今夜空いてますか? ちょっと、お話したいことが。

山口をホテルへ誘おうと策を練っていた田斉であったが、なんと、この日は山口の方から田斉をホテルへいざなった。そして、告白する。
「私がAV女優をやっていたことをご存知だったんですね……」(山口)
“待受の女”は、なんと山口だった! 整形して顔を変える前、彼女はAV女優として活動していたのだ。
「私、自分の顔が死ぬほど嫌いだったんです。子どもの頃から、目も鼻も口も全部コンプレックスで、大っ嫌いでした」(山口)

整形費用を稼ぐためAVに出演し、顔を変えて別の人間として生きていこうと彼女は決意したのであった。
ここからの山口……というか筧美和子が凄い。服を脱ぎ捨て「私を抱いてください」と田斉に申し出るのだ。セックスを引き換えに、全てを忘れてほしいということか。

だが、相対する田斉が男前だった。
「山口さんの元カレは、本気で君のことが好きなんだと思うよ。
彼のスマホを拾ったんだけどさ、待受が君の整形前の顔だった。彼は外見を変えても過去を捨てても、ありのままの君が好きだったんだと思う」(田斉)

後日、この件を「愛人同盟」に報告する田斉。
田斉 俺は彼女と接してるうちに、愛が芽生えてしまった。これは、愛人同盟の掟に反する。彼女には幸せになってほしい。話を聞いてるうちに、そう思ったんだ。
井伏 田斉さん、重要なことを言い忘れてませんか? あなた、ただ単にAV女優とセックスして自分が試される気がして怖かっただけでしょ。
田斉 (手が震える)

しかし、責められない。この気持ちは、多くの男なら共感できるはずだ。男性視聴者の心の傷に塩をまぶす展開である。


「やんちゃな過去は男にとって武勇伝だが、女にとっては黒歴史にしかならない」という考え方がある。山口が持つAV女優としての過去に田斉は怖気付き、元カレは受け止めようとした。
その差が十中八九手にしていた“愛人”の存在を取りこぼすという、田斉の結果につながったわけだ。

世の男性たちよ、「しょせんドラマ」だと思うなかれ。意外にいる。風俗勤務経験を持つ女性、AV歴のある女性は、男が思うより少なくない。もしそういう女性と巡り合った時こそが、男の“愛”と“器量”と“価値観”を測るリトマス紙になるのかもしれない。

……『フリンジマン』ってそういうドラマでしたっけ? あやうく騙されるところだった。あと、筧美和子のサービス精神と攻め気に大感謝です。
(寺西ジャジューカ)


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