10月4日より『ブラックスキャンダル』(日本テレビ系)がスタートした。

仕組まれた嘘のスキャンダルで芸能界を引退した女優が顔と声を変えて復讐する内容である。
このドラマが、昨年10〜12月に放送された『ブラックリベンジ』の延長線上にあることは明らか。両者の共通点は多い。
・「週刊星流」という週刊誌が登場する。
・捏造されたスキャンダルで主人公の身内が自殺した。
・スキャンダルが捏造された5年後に復讐が始まる。
・公式ホームページへ訪問するとフラッシュが焚かれる。
・木曜深夜のプラチナイト枠。
ただ、ちょっとした差異はある。『ブラックリベンジ』の主人公・今宮沙織(木村多江)が勤務していたのは「週刊星流」編集部だった。週刊誌編集部が舞台だったのだ。打って変わり、今回の舞台は芸能事務所。
変わらない点といえば、『ブラックスキャンダル』は『ブラックリベンジ』に続いて佐藤友治が脚本を担当している。
ベッキーのような衣装、主題歌はゲス極
とにかく、初回から小ネタが満載なのだ。
人気女優・藤崎紗羅(松本まりか)は、突如、根も葉もない嘘の不倫スキャンダルを報じられる。記事の見出しは「清純派女優 衝撃のゲス不倫」。身に覚えがなかった彼女は、釈明会見を開いた。
この時、紗羅が選んだ衣装は白のボタンダウンシャツとシックなカラーのロングスカート。……既視感がある。間違いなく、謝罪会見時のベッキーを意識してる。でも、ベッキーと違って紗羅は不倫をしていない。この会見は、そもそも開く必要があるのだろうか?
ちなみに、今作はゲスの極み乙女。の楽曲が主題歌に選ばれた。
会見場に、俳優の棚城健二郎(波岡一喜)が現れた。そして「申し訳ありませんでした!」と涙ながらの土下座を敢行し、紗羅との不倫を認めたからパニックである。紗羅は「不倫なんかしていません!」と訴えるも、報道陣は紗羅を糾弾。遂には、報道陣は紗羅の自宅に押しかけた。追い詰められた母親はガソリンをかぶり、報道陣の前で焼身自殺した。紗羅は全てを失った。
そして、現在。紗羅は整形手術を受け、矢神亜梨沙(山口紗弥加)という別人に成り代わり、芸能事務所「フローライト」にマネージャーとして勤務中だ。かつて、紗羅が所属していた事務所である。
第1話の主役は袴田吉彦
第1話で亜梨沙がターゲットとしたのは、5年前の釈明会見を仕切ったテレビプロデューサー・五色沼仁(袴田吉彦)である。
彼は、「フローライト」所属の若手女優・小嶋夏恋(小川紗良)との枕営業を暗にリクエストした。ドラマのオーディションに合格したい夏恋は寝てしまった。
「やらなきゃ意味ないよ」(五色沼)
悪徳プレーを強要する日大アメフト部のような言い草である。
夏恋のマネージャーになった亜梨沙は、二度目の枕を制止した。そして、五色沼への復讐を開始する。亜梨沙の代わりにホテルへ向かった亜梨沙は、部屋を真っ暗にしたまま五色沼を迎え入れる。五色沼は夏恋と亜梨沙が入れ替わっていることに気付いていない。
「今日は、私に全部委ねてくださいね」(亜梨沙)
身を委ねる五色沼に目隠しし、手錠をはめる亜梨沙。パンツ一丁の五色沼は「私は全日テレビプロデューサー五色沼」というタスキをかけられたのも気付かず、ドキドキしっぱなし。この哀れな状態をスマホで撮り、ドラマの完成披露試写会のスクリーンに生配信する亜梨沙。映像はネット配信され、五色沼は全国の晒し者に……。五色沼は、地方へ左遷された。
でも、まだ終わらない。
「本当の地獄は……これから」(亜梨沙)
枕営業を強要された60人の女優から証言を引き出した亜梨沙は、その動画を一ヶ月に一人のペースで公開すると五色沼に宣言。ということは、このスキャンダルで5年引っ張れることになる。たまらず、五色沼は土下座して亜梨沙に許しを請うた。でも、復讐を誓う亜梨沙は許さない。
「お前みたいな、テレビ局員ってだけの口だけ性欲バカがいるからテレビが腐ってくんだよ!」(亜梨沙)
このセリフ、よくテレビでどストレートに放送できたもんだ……。
タブレットを手に取った亜梨沙は、枕映像の証言動画をその場で動画サイトに公開した。
「一滴残らず、地球上から干されて消えて」(亜梨沙)
『ブラックリベンジ』での決めゼリフは「骨の髄まで炎上しなさい」で、今作はどうやらこれのよう。リベンジ後、決めゼリフと共に「ゴーーーン!」と音が鳴るのは『ブラックリベンジ』を彷彿とさせる。泣き崩れた五色沼は絶叫した。
「あぁ〜ぱぁ〜っ」(五色沼)
アパだけに。
とにかくこのドラマ、機を見るに敏だ。
「フローライト」の社長・勅使河原友和を演じるのは片岡鶴太郎。CM明け、唐突に裸でヨガしてる勅使河原の姿が映し出される場面に、きっと深い意味はない。このドラマがぶっ込みたがる小ネタ、時事ネタなのだろう、これも。
『ブラックリベンジ』を超えられるか?
初回の感想としては、『ブラックリベンジ』のほうが衝撃的だった。もちろん、第2弾(?)ということもあり、新鮮味が劣るのは当たり前。ただ、前作の木村多江があまりに鬼気迫る演技だったので、山口紗弥加の迫力の無さが若干気になる。まだ助走だと受け止め、右肩上がりになっていくと期待をしたい。
内容については、復讐のテキスト的内容を提示するお披露目的な初回だと解釈した。今後、より一層のカオスが待ち構えていることを望む。
にしても、小ネタに走りすぎた感は否めない。
そして、最も気になるのはリベンジの行方。誰が黒幕なのか。真っ正直に、勅使河原? そんなわけない。
そういえば『ブラックリベンジ』では、主人公の復讐を協力する理解者が大ボスだった。この方式に当てはめると、最も怪しいのは亜梨沙の後輩の阿久津唯菜(松井玲奈)だ。5年前の会見は勅使河原らが仕掛けたものと沙羅に知らせたのは唯菜だった。沙羅と自分のツーショット写真を眺めながらうっとりしている姿も怪しい。『ブラックリベンジ』の結末は同性愛(百合)絡みだった。ただ、前作の方法論をそのままなぞるだけというのも、芸がないではないか。予想もつかない展開があってほしい。
『ブラックリベンジ』のせいで、我々のハードルは上がりに上がってしまっている。もっともっとゲスくていいと思う。
朗報と言えるか? 今夜放送、第2話が扱うテーマは「クスリ」である。芸能界とは切っても切れないトピック。勇気を持って、タブーに触れまくっていただきたい。
(寺西ジャジューカ)
脚本:佐藤友治ほか
監督:長沼誠ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:「ドグマン」(ゲスの極み乙女。)
チーフプロデューサー:岡本浩一
プロデューサー:福田浩之、中間利彦、茂山佳則(AX-ON)、西紀州(AX-ON)
制作協力:AX-ON
制作著作:読売テレビ