はじめまして、ガリバーと申します。女性アイドルのライブや握手会に通いまくり、主に現場から日々アイドルを応援している一介のヲタクです。

好きが高じて、年間で最高466の現場に通ってしまったこともあります。現在は1児の父親として、家庭とヲタ活の両立を楽しんでいます。

 そんな立場から、現代日本の女性アイドルシーンに対する考えを、連載という形で書き連ねていきたいと思っています。第1回のテーマは、8月の2日(金)、3日(土)、4(日)に開幕される世界最大のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」です。

 国内フェス動員数ランキングTOP10の中に、アイドルフェスが入っていることをご存じだろうか? 「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の約27万人、「SUMMER SONIC」の約15万人、「フジロックフェスティバル」の約12万人等と並び、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」の約7万人を上回る動員を記録しているのが、いまや“世界最大のアイドルフェス”に成長した「TOKYO IDOL FESTIVAL」(以下、TIF)。その来場者数は8万人超!(2017年時/2018年も同等数とされる) 日本固有の女性アイドル文化の象徴ともいえる存在にまで成長したこのTIFも、今年で10年目、10回目の開催となるのだ。

 数々のグループアイドルが誕生し、その状況をもって「アイドル戦国時代」といった呼称も一般化し始めていた2010年に産声を上げたTIF。このフェスは、いかにしてアイドルシーンとともに歩みを開始し、拡大し、そしてアイドル界の揺るがぬトップランナーイベントへと変貌を遂げたのか、その歴史を振り返ってみたい。

アイドリング!!!あってのTOKYO IDOL FESTIVAL

 TIFの歴史を語る上で欠かせないアイドルをひとつ挙げるとするならば、アイドリング!!!をおいてほかにはないだろう。なぜならばTIFの主催者はフジテレビであり、そのフジテレビが2006年より手がけていたアイドルこそ、アイドリング!!!だからである。アイドリング!!!が解散する2015年の前年まで、TIFの総合プロデューサー=アイドリング!!!のプロデューサーであったことからも、その関係性が推し量られよう。AKB48グループを中心として、一時の低迷期を脱し始めていたアイドルシーンを、アイドリング!!!を中心により広くPRするために開始されたイベント――。

少なくとも開始当初においてTIFとは、そのような存在だったのである。

 ROCK IN JAPAN FESTIVALが音楽誌という紙媒体から始まったフェスであるならば、TIFはテレビ局が始めたイベント事業である。それは、フジテレビに冠番組を持つアイドリング!!!がホスト役としてイベント進行を担当していたことからも明白であるし、アイドリング!!!解散後も、ライブステージの一部がテレビの収録スタジオであったり、番組として放送されることを重視した構成となっていることなど、10年たった現在でも濃い残滓が見て取れる。

10年たっても変わらないコンセプト

 2010年当時の記者発表において、初代プロデューサーである門澤清太氏が語った言葉――

「東京にて新たなアイドル誕生の流れをつくる」
「アイドルとメディアの新たな関係性を創造する」
「日本最大級のアイドル見本市を目指す」
「フジロックフェスティバルのように、どこに行っても何かが行われているという空間を意識」
「チケットを買った人だけが楽しむのではなく、売店や共有スペースなどでたくさんのイベントを開催しているので、ふらっと来て楽しんでいただきたい」

 といった言葉の数々は、10年たった今でも変わらない、TIFの“コア理念”であろう。

第1回2010年の衝撃、ももいろクローバーの躍進

 2010年の第1回TIFは、現在の東京・お台場ではなく、東京・品川で開催された。そこでの出演から一気に次のステージへと駆け上がっていったのが、ももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)だろう。そのメインステージで披露された彼女たちのアンセム・ソング「走れ!」は、これがグループとして最初で最後のTIF出演だったこともあり、そして、特に大サビにおける百田夏菜子の感情のこもった表情をありありととらえた映像が残り(それは、テレビ放送を前提とする機材が入ったがゆえに実現したものであった)その後多くのファンを魅了し続けたこともあって、いまだにTIF史上に残る名演として語り継がれている。

 一方で、世間の注目を一身に浴び、グループアイドルとしてスターダムに立ちつつあったのが、AKB48である。第1回TIF開催と同じ夏に「ヘビーローテーション」をリリース、“国民的アイドル”のポジションを確立しつつあった彼女たち。TIF開催の前年に「AKBアイドリング!!!」としてコラボユニットを組んだという経緯を持つTIFのホスト役アイドリング!!!はその後、AKB48と自身らとの“格差”をしばしば自虐的に語ってみせていた。

 この初年度のTIFの観客動員数は、約5000人であった。

地方アイドルにスポットが当たった2011年~2014年

 2011年の開催第2回以降は、東京・お台場のフジテレビ湾岸スタジオ周辺に開催場所を移し、心臓部ともいえるフリーのオープンスペース「SMILE GARDEN」や、屋上の絶景ステージ「SKY STAGE」が誕生。

動員数も右肩上がりに伸びていくことになる。ここで存在感を見せたのが、同年に発生した東日本大震災の被災地であった仙台を拠点に活動していたアイドルグループ「Dorothy Little Happy」(以下、ドロシー)だ。

 1日目のステージが評判を呼び、2日目にはその口コミによって集まったファンが詰めかけ、いわゆる「TIFで見つかった」という現象を起こす。同じく仙台を拠点としていたテクプリやParty Rockets、関西からはJK21、キャラメル☆リボン、いずこねこ、Dancing Dolls、Especia、新潟からNegicco、RYUTist、中部からしず風&絆~KIZUNA~、OS☆U、愛媛からひめキュンフルーツ缶、北海道からはJewel Kiss、九州からはLinQ、CQC’s、GALETTe、広島からまなみのりさ、SPL∞SH、沖縄のLucky Color’s、山梨のPeach sugar snow等々、ドロシーをきっかけとして地方アイドルの出演は増え、西日本/東日本くくりでのステージが作られるなど、大手芸能プロには属さない地方のアイドルグループが一堂に会する場として、この時期のTIFは熱い視線を浴びることとなる。48グループからは、初参加となった名古屋のSKE48(2012年に初出演)、福岡のHKT48(2013年に初出演)も、この時期に相次いで参戦している。

 今ではEXILE陣営の一角として女性ファンを多く獲得しているE-Girls(2012年に初出演)が、アイドルマーケットをターゲットにTIFに出演していたという歴史も、現状から振り返れば実に味わい深い。この年代の貴重なアクトとしては、後に海外に活躍の場を広げていったBABYMETAL(2011年に初出演)も挙げられよう。

“限界”に挑戦した2012年

 TIF史上、2012年は歴史に残る年である。

 出演組数が前年の57組から111組と増加。メインステージはZepp Diver Cityへと拡大したものの、細かいステージも増加し、急激に増えた出演アイドルたちを詰め込んだタイムテーブルはあっという間に崩れ、開演が20分30分押しは当たり前の状態に。そこに、ステージの崩壊によるライブ中止のハプニングや、急激な雨によるステージ振替などが重なり、良くも悪くも運営の“緩さ”にファンが振り回されることとなる。

 中止になってしまったステージの代わりに、急遽lyrical schoolが夜にオープンスペースSMILE GARDENの周りを歩きながらサイファー(即興アカペラフリースタイルラップ)をやってのけたのもハイライトだ。

アイドリング!!!河村唯酒井瞳がMCを務め、卒業後の今もなお健在のトークコーナー「スナックうめ子」が始まったのもこの年。さらなる深夜帯の運営が強行されスケジュールが押した結果、朝4時までのライブステージ(生放送はオールナイト)や朝6時からの早朝ショーと、とにかくやれる限りのすべてを詰め込んだような年となった。

2014年、今ではあり得ないソロアイドルのステージ

 2010年代のアイドルシーンとは、すなわちグループアイドルのシーンであった。ソロのアイドルにとっては厳しい時代だといわれ続けているが、そんななか、ベテランから新規までソロアイドルをピックアップしてソロステージとしてまとめたのは、2014年開催の第5回TIFの大きな特徴といえよう。

 小桃音まい、寺嶋由芙、吉川友、小池美由、大森靖子、吉田凜音、クルミクロニクル。小桃音まいはその後グループ活動に移行し2019年夏には卒業、小池美由はテレビタレントとして成功、吉田凜音はアイドルとしての活動は終了、クルミクロニクルは2015年に活動終了――と、今となってはあり得ない夢のようなキャスティング。当時のアイドルシーンの重要ないち側面に見事フォーカスしてみせた、貴重なステージであった。

 先に挙げた2012年のトラブルを筆頭に、フジテレビ主催ということでアイドル業界の中心にありながらも、どこかでTIFが一定の“緩さ”を併せ持っていたのは、総合プロデューサーである門澤清太氏の存在によるところが大きい。その門澤氏がまさにその職にあった2013年頃までが、現在にいたるまでのTIFの礎が築かれた時期だったといえるのではないか。継続開催されるかもわからない状態でスタートしたこのイベントが、今では“世界最大のアイドルフェス”にまで成長した原動力は、間違いなくこの時期に形成されたものだ。

 そして、そのホスト役を務めていたアイドリング!!!における“まさかの展開”が、TIFの大きな転機となっていく。

【後編へ続く】

(文=ガリバー)

ガリバー
アイドルのライブに通い始めて14年目。

メジャーアイドルからインディーズ、地方アイドルのライブや握手会まで、年間約300回ほど足を運んでいます。大阪の地を拠点に、北は北海道から南は沖縄まで全国を回りますが、最近の遠征先は東京が多め。現在もっともハマっている「推し」は、乃木坂46の齋藤飛鳥さん岩本蓮加さん、ラストアイドル・Love Cocchiの西村歩乃果さんです。<Twitter:@gulliverdj&gt;

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