「いいものを作れば売れる」。日本の産業界に深く根付くプロダクトアウトの思想だ。
前回の記事では、日系化粧品企業にはない、韓国化粧品企業による“美”の「文化づくり」と「企業戦略」について解説した。今回は引き続き国内外のスタートアップ支援や韓国エンターテインメント業界の裏側に精通する佐野 Mykey 義仁氏(以下、マイキー佐野氏)に、国内化粧品企業が韓国企業と渡り合っていくための戦略について伺う。
モノづくりがすごいから商品が売れるわけではない
現実の消費者は必ずしも「モノづくりがすごいから」という理由だけで財布を開くわけではない。そこには、より複雑で計算された“欲望のメカニズム”が働いている。
「消費者からすると、「モノづくりがすごいかどうか」は必ずしも主要な判断軸ではありません。ここで重要になるのが、韓国が作ったもう一つの仕組みです。元PayPalのピーター・ティールがFacebookに投資するきっかけにもなった、ルネ・ジラールの『模倣の欲望』という理論があります。人は純粋に何かを欲しがるのではなく、常に『誰かを介して』模倣したがる。
美容で言えば、仲介になるのがK-POPスターや韓国ドラマ。対象は『理想の自分』です。映像や音楽を通じて彼らのビジュアルを浴びることで、『あの人のようになりたい』という欲求が生まれる。
さらに現代では、スマートフォンの高度なカメラ機能もこの欲望を加速させています。高解像度のレンズや進化した撮影機能によって、自身の顔の細部までを客観視し、理想のビジュアルとシビアに比較する機会が日常的に増えました。結果として、その理想と現実の差を埋めるツールとしてコスメが必要になる。韓国はエンタメを世界中に輸出することで、この欲望の三角形が形成されている側面があります」
韓国企業は、相手国のふところに入り込む天才
韓国コスメの強さは、商品力やSNSの巧みさだけではない。社会全体に“理想の美”の基準を浸透させ、その姿に近づきたいという欲求そのものを消費の原動力にしている点が大きい。
マイキー佐野氏は、「ブランドごとの差を競うというより、『標準化された理想の美に追いつきたい』という欲求を市場全体でつくっているんです」と話す。
さらに、韓国企業は世界市場を前提に、現地の文化や価値観に合わせる力にも優れている。徹底したリサーチを通じて、「相手国のふところに入り込む天才」だという。
「イスラム圏向けに『ハラール認証』を取得する動きがわかりやすいですね。一般的な化粧品にはアルコールや豚由来の成分(コラーゲンなど)が含まれることがありますが、これらはイスラム教の戒律で禁じられています。
韓国企業は、そうした成分を避けた設計で厳しい基準をクリアし、それぞれの地域の価値観にしっかり寄り添った製品を作っています。こうして現地の文化との摩擦を避けながら、同時に世界中へシェアを広げていくビジネスのしたたかさを持っているんです」
では、日本企業に勝機はないのか。品質や安全性の高さは、今も日本の大きな武器である。ただ、マイキー佐野氏は「マーケティング能力、商品開発のスピード感、文化的波及力に関しては、日本は残念ながら負けています」と語る。
韓国はOEMやODMを活用し、SNSやK-POPの流行を即座に商品化して世界へ広げる。この“仕組みの差”が、すでに勝敗を大きく左右しているのだ。
「世界一の品質」という最強の武器を活かし、仕組みで勝て
そんな日本企業が韓国に対抗するための第一歩は、彼らの「エコシステム」自体を模倣することだ。例えば、日本の大手メーカーが自社工場をオープンソース化し、新興ブランドが参入しやすい土壌を構築するといったアプローチだ。
ところが、マイキー佐野氏はこの解決策に対して「韓国エンタメに見られる苛烈な労働環境や圧倒的な練習量など、日本国内では実現が難しい要素も多々あります」と指摘する。表面的な仕組みを真似るだけでは限界があり、より本質的な意識改革が必要だというのだ。
「重要なのは、とにかく“最初から世界に目を向けること”です。日本はガラパゴスな国内市場の中だけで完結してしまいますが、韓国はスタートの時点から世界市場を前提に動いています。1億人に売るのと80億人に売るのとでは、見込み顧客のパイがまったく違いますからね。日本の企業も一度現地に入り込み、彼らがどのようなシステムで世界へものを売っているのかを肌で感じて学ぶ、パラダイムシフトが必要だと思います」
韓国コスメのグローバルな躍進は、決して表面的なプロモーションの成果ではない。
「共有エコシステムによる超高速製造」「データに基づく美の標準化」、そして「エンターテインメントをハブとした欲望の設計」。これらが三位一体となった、緻密に構築された競争力の強いビジネス構造をしている。
日本企業がふたたびグローバル市場で存在感を示すためには、自前のモノづくりに対する過信を捨て、世界を巻き込む新たな仕組みづくりへと直ちに舵を切らなければならない。
西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。











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