健康のために“意識して飲むもの”だったお酢ドリンクが今、分岐点を迎えている。
ミツカンのお酢ドリンク「フルーティス」は2月にブランドリニューアルを果たし、あえて主役をお酢から果実へと転換。
その裏側には、逆風のなかでも挑戦を続ける“お酢のリーディングカンパニー”としての矜持があった。今回は、ミツカン 家庭用事業本部 飲料事業部 飲料企画課で働く田中菜々美さんにリニューアルの背景をうかがった。
○主役は「果物」! フルーティスが目指す新境地
――まずは、田中さんの現在のご担当業務について教えてください。
主に飲料カテゴリーのマーケティングを担当しています。ミツカンの飲料ブランドの中でも、今回リニューアルした「フルーティス」と、特定保健用食品の「マインズ」のふたつを担当しています。
――そもそも「フルーティス」とはどのような商品なのか、改めて教えていただけますか?
「フルーティス」は2020年に誕生したブランドで、現在は「ざくろ」「あまおう」「シャインマスカット」「白桃」の4つのフレーバーを中心に展開しています。
りんご酢をベースにしたお酢ドリンクなのですが、お酢を美味しく、日常的に取り入れていただけたらと考えています。お酢ドリンクが初めての方でも、ジュース感覚で手軽に美味しく飲めるポジションを目指しています。
――今回、ブランドを大幅にリニューアルされましたが、その理由やきっかけをうかがえますか?
大きく分けて2つの理由がありまして、1つは市場環境の変化です。実はお酢ドリンク市場は近年、右肩下がりで推移しています。その要因として、お酢ドリンク特有の「酸味の強さ」による継続のしにくさ、「健康のために飲まなければならない」という“健康疲れ”などがあったと考えています。
でも、お酢のリーディングカンパニーであるミツカンとしては、やっぱりこの市場をもう一度復活させたい。そのためには健康を前面に出すのではなく、もっとライトに「美味しいから飲む」という価値を改めて提案する必要があると考えたんです。
――なるほど。もう1つの理由は何でしょうか。
フルーティスというブランド自体の価値を再定義したかった点です。以前から「フルーティスは美味しくて飲みやすい」という評価をいただいていたのですが、一時期の韓国のお酢ドリンクブームなどで入ってきたライトユーザーの方々が、ブームの終焉とともに離れてしまったという背景がありました。改めてフルーティスが持つ「本当の美味しさ」を生活者の方に届けたいと考え、今回のリニューアルに踏み切りました。
○料理人の技を応用した「フルーティアップ製法」の秘密
――リニューアルにあたって、具体的にどのような点を変更されたのですか?
簡単に言うと、美味しさに全振りしました。これまでは「お酢を果実で飲みやすくしたドリンク」でしたが、今回は「果実を美味しく飲むためのドリンク」に立ち位置を逆転させました。主役はあくまで「果実」で、お酢は果実の美味しさを引き出すためのサポート役、名脇役に徹しています。
――お酢をあえて脇役にするというのは、ミツカンさんとしては大胆な決断ですね。
そうですね。
今回、私たちは新しい製法「フルーティアップ製法」で特許を取得し、本商品に採用しました。これは料理人が使う「隠し酢」という技法を応用したもので、料理に少量のお酢を垂らすと味がはっきりして、素材の持つ味わいを引き出すという経験則があるんですよ。この効果を利用することで、果実のおいしさを引き出しつつ、後味はスッと切れる、ベタつかない美味しさを実現しました。
――パッケージも以前とは印象がガラッと変わりましたね。
今回は果実のシズル感を前面に出して、「直感的に美味しそう」と感じていただけるデザインにしました。
デザインチームが実際に新大久保などのトレンドスポットへ足を運び、コアターゲットである30~40代の女性が好む色使いやデザインを研究して作り上げてくれたんです。お酢ドリンクの棚には、まだ古き良きデザインの商品が多いのですが、その中で新しさが際立つパッケージになったと思っています。
○反対の声を押し切り、昨年の倍以上の店頭導入を実現!
――開発から発売まで、苦労された点も多かったのではないですか?
実は、家庭用のリニューアルに先駆けて、業務用(居酒屋やレストラン向け)で展開していたフレーバーが非常に好評だったんです。産地指定の果実を使っている点などが評価されていました。そこで、家庭用と業務用の世界観を統一し、連携してブランドを復活させようという戦略を立てました。
ただ、お酢ドリンク需要が下がっている時期だったので、社内外からは「本当に売れるの?」「なぜ今またフルーティスをやるの?」と前向きじゃない声をいただくこともありました。一度期待を失ってしまったブランドをもう一度盛り上げようと、周囲を納得させるのはなかなかハードルが高かったですね(笑)
――その逆風をどうやって乗り越えたのですか?
何度も何度も、新しくなった「味」と「コンセプト」を伝え続けました。実際に飲んでいただくと、「これならお酢らしくなくて美味しいね」とバイヤーの方々も徐々に前向きになってくださって。結果として、リニューアル後の店頭導入数は、昨年の倍以上にまで広がりました。
――発売後の反響はいかがですか?
以前からユーザーインタビューを続けているのですが、おかげさまで大変好評をいただいています。多くの方が、自分へのご褒美として夜に飲んでくださっていることもわかりました。
とあるお客様は、「フルーティスは安全圏の中の最大のご褒美」とおっしゃっていました。甘いものやアイスを食べたいけれど、夜遅い時間だとカロリーや罪悪感は気になる。でもフルーティスなら、お酢も入っていて体にも良さそうだし、何よりしっかり甘くて美味しいから満足できる、と。こうしたコメントをいただけたのは本当に嬉しかったですね。
――夜にカフェインを避けたい方にとって、いい選択肢になっているんですね。
そうなんです。
――最後に、フルーティスの今後の展望を教えてください。
まずは認知度を現在の倍々に引き上げ、より多くの方にこの美味しさを体験していただきたいと思っています。将来的には“お酢の棚”を飛び出して、希釈飲料の棚やフルーツ飲料の棚など、もっと幅広い場所に並べられるようにもしたいですね。
業務用では現在10種類以上のフレーバーを展開しており、宮崎県産マンゴーや静岡県産マスクメロンなど、全国各地の果実を使ったものもあります。家庭用でもこうした多様なフレーバーを追随させ、「日本各地の果実を楽しめるドリンク」としてブランドを成長させていきたいと考えています。











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