新料金プラン「ペイトク 2」などを2026年6月2日に導入することを発表し、さらにブランドによっては既存プランも値上げするなど、競合に追随し値上げへと大きく舵を切ったソフトバンク。サブブランドの「ワイモバイル」ブランドは、実質的に2度目の値上げとなりましたが、その内容からは携帯各社を取り巻く厳しい事情も見えてきます。

限界を迎え値上げに踏み切ったソフトバンク

インフレが続く昨今、さまざまなモノやサービスの値段が上がっていますが、長年料金引き下げが続いた携帯電話料金も、2025年を境に値上げが急速に進んでいます。すでにNTTドコモとKDDIは、メイン・サブブランドの値上げ、あるいは新料金プランの投入による実質的な値上げを2025年に実施しましたが、大手3社の中で唯一、メインブランドの値上げをしていなかったのがソフトバンクです。

ソフトバンクは、サブブランドの「ワイモバイル」で新プラン「シンプル3」を2025年9月より投入し、実質的な値上げをしました。ですが、メインブランド「ソフトバンク」の料金プランは、競合が値上げをするなかにあっても値上げを見送っており、本格的な値上げには踏み込んでいませんでした。

とはいえソフトバンクも、競争力維持強化のため料金値上げを辛抱していたというのが実情だったようです。それゆえ、ユーザーが利用する通信量が年々増加する一方で、円安やメモリー不足などでネットワーク構築に必要な機材が高騰する中にあって、従来の料金水準で高い通信品質を維持し続けるのには限界が来ていました。

そのソフトバンクは2026年4月10日に記者発表会を実施。ついにソフトバンクブランドも含めた事実上の値上げを打ち出すに至っていますが、その施策の1つとなるのが、これまで見送ってきたソフトバンクブランドでの新料金プラン導入です。

実際、ソフトバンクブランドの主力となるデータ通信が使い放題の料金プランは、従来の「ペイトク無制限」に代わって新プラン「ペイトク 2」が導入されます。こちらはペイトク無制限同様、スマートフォン決済の「PayPay」を利用することで多くのポイント還元が受けられる料金プランですが、基本料金は月額1万538円。ついに1万円を超えてしまっているのです。

それだけに、決済利用によるポイント還元で実質料金を安くする仕組みが強化されており、PayPayに加えてクレジットカードの「PayPayカード」を使っての決済も、ポイント付与特典の対象となりました。
さらに、年会費が有料の「PayPayカード ゴールド」利用者は、ポイント付与率が従来の5%から10%にアップするようになっています。

それに加えて割引をフルで活用すると、実質負担金は月額3,678円にまで抑えられるとしているのですが、条件達成にはPayPayをはじめとしたソフトバンク関連のサービスをより多く利用する必要があり、安くするためのハードルが高いことには変わりません。

インフレ下では安い料金プランほど不利に

そしてもう1つ、ソフトバンクが打ち出したのが既存料金プランの改定で、これにより既存のペイトク無制限などを利用している人たちも、料金値上げがなされることとなります。ですが、この料金改定でより注目されるのは、ソフトバンクだけでなくワイモバイルブランドの料金も値上げがなされることです。

先にも触れたように、ワイモバイルはすでにシンプル3を導入し、実質的な値上げを図ってきました。ですが、ソフトバンクは今回、そのシンプル3も含めたワイモバイルの主要プランすべてを値上げするとしており、以前のプランである「シンプル2」からシンプル3に移行したユーザーは、短期間のうちに再度値上げされることになります。

この点について、同社の専務執行役員コンシューマ事業統括の寺尾洋幸氏は、シンプル3について「昨年検討の段階で(料金引き上げを)もう一段行くかどうか議論していた」と答えています。シンプル3の提供後は、シンプル2からそちらにユーザーが移行する一方、シンプル2も新規契約ができないとはいえ、サービス自体が終了したわけではありません。

それゆえ、シンプル3に多くの人が移行しても、シンプル2と同じくらいの収益性となる構造を作る必要があるとし、もう一段値上げするという判断に至ったとのこと。コストの上昇が想定を超えたことで、シンプル3の当初の設計では現在のサービス水準を維持できなくなった、というのが正直なところではないでしょうか。

ですがシンプル3、とりわけ最も容量が少ない「Sプラン」では、割引なしの場合シンプル2の月額料金2,365円から、月額3,278円にまで上昇することとなり、その値上げ幅は913円となります。もちろんその分、割引施策の強化などサービス面での拡充が進んでいるのに加え、シンプル2も今回の値上げで月額2,695円にまで上昇することから、実質的な価格差は583円と見ることもできるのですが、それでも消費者にとって厳しい内容であることは間違いありません。


ワイモバイルは、低価格を求めるユーザーが多く選ぶブランドだけに、もともとの金額が高額なソフトバンクブランドと比べ、価格上昇が不満要素につながりやすいことから、度重なる値上げがユーザーの不満を高める懸念は大いにあります。ですが、KDDIも2025年の値上げの際、メインブランドの「au」よりサブブランドの「UQ mobile」の値上げ幅が大きく、小容量・低価格のプランを止めるなど、低価格帯の料金プランほど厳しい改定をしていました。

そうしたことを考えると、携帯各社もインフレが進むなかにあって、低価格帯のプランを維持するのは非常に難しくなっている様子がうかがえます。それだけに、携帯電話料金そのものを安く抑えたいならば、今後は唯一料金が上がっていない「LINEMO」などのオンライン専用プランや、MVNOのサービスを選ぶなど、消費者側が明確なアクションを起こす必要があるといえそうです。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら
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