中谷を打ち砕いた井上。その鋭いパンチの数々は米メディアを感嘆させた(C)産経新聞社

 モンスターは、しっかりと王座を守り抜いた。

 5月2日、世界スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥(大橋)は、東京ドームで行われた同級4団体統一タイトルマッチ12回戦で、WBA&WBC&WBO同級1位の中谷潤人(M・T)にフルラウンドを戦い抜き、3-0で判定勝ちを収めた。

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「どんなことがあろうが、自分がしっかりと勝つ」

 試合前最後の会見で、そう意気込んでいた怪物が王者の矜持を見せつけた。

 静かな立ち上がりとなった序盤、いつも以上に引き締まった表情を浮かべた井上は、強打を警戒して距離を取る中谷との探り合いの中で、的確なジャブとコンビネーションで、相手の情報を収集するような振る舞いを見せた。

 上半身やステップで細かなフェイントかけながら一進一退の攻防が続いた。中盤5回以降も中谷とのリーチ差による“距離の壁”を打開する時間が続いた井上は、ステップインからのボディショットを繰り出して模索し続けた。

 8回から近距離戦で打ち合う形にシフトした中谷が主導権をわずかに握る展開となり、井上はロープを背にする局面が散見。しかし、百戦錬磨の絶対王者はパンチを受けても、鋭いジャブで呼応。その目は死んではいなかった。11回には、渾身の右アッパーで中谷の左目を捕らえ。まぶたを大きく腫れさせるダメージを負わせた。

 そこから最終回まで相手が見えなくなった右からの攻撃を徹底した井上。「負けられない」と死力を尽くした一戦はフルラウンドを消化。

終了後に揃って抱き合った試合だったが、判定決着で勝利した。

 まさに紙一重の攻防だった。そんな試合が生んだ熱狂は、PPV配信を通じて世界にも広まった。試合の速報を打った米格闘技専門サイト『Uncrowned』は、「ナオヤ・イノウエは日本ボクシング史上最大級の試合で、洗練されたパフォーマンスを披露した」と。中谷に押し込まれながらも、崩れなかった王者の技術を激賞した。

「5つも年下のジュント・ナカタニとの試合はイノウエにとって世代交代の瞬間になるかもしれないと多くの人が考えていた。しかし、実際は全くそうならなかった。イノウエの素早いハンドスピードと、パンチの的を絞らせない巧さは、ナカタニを翻弄し、序盤から試合を優位に進める要因となった」

 一部で飛び出た加齢からくる肉体的な衰えを指摘する声を吹き飛ばすような激闘で、東京ドームを熱狂の渦に巻き込んだ井上。中谷の反撃に苦しみながらも、無敗を維持した偉才の戦いは、間違いなくボクシング界の「伝説」となった。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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