持ち寄りの宴席も増えるこれからの季節。でもハレの宴席となると何を持って行ったらいいのやら……。
そんな悩みを解決してくれるマンガと言えば、やはり名作『美味しんぼ』! どんな難問も“食”で丸く収めてしまうこの作品ならきっとこの難問も解決してくれるはず。しかも原作はグルメで知られる雁屋哲先生! 高級感あるハレの料理も載っているに違いない!

ちょうど先日、「新婚さん」となったエキサイトレビューライターのはたなおこさん(&ご主人)の新居で引っ越し祝いをやることに。そこで早速『美味しんぼ』のページをめくり返してみたところ「これは!」というメニューに巡り会うことができました。96巻「チーズの伴侶」に載録された“フィグログ”です。

フィグはイチジク、ログは丸太。その名の通り、イチジクを中心としたドライフルーツをフードプロセッサーで切り混ぜし、丸太の形に成形したチーズのおとも。イタリアのマルケ州というイチジクの産地に伝わる保存食で、チーズと合わせるとワインの最高のつまみになるという一品です。パッと見はサラミに似ていますが、味わいはまるで別モノ。ドライフルーツの甘酸っぱさとナッツの香ばしさが絶妙のハーモニーを奏でます(美味しんぼ風)。

じつはフィグログには『美味しんぼ』で読んで以来、何度か挑戦したことがあって、適当に作ってもだいたい美味しく仕上がるのが、素人にはありがたいところ。さすがイタリア! しかもこのフィグログはレーズンが苦手な人でも、他のドライフルーツの味やナッツの香ばしさで食べ進められてしまうというオマケつき。ごく一部のマニアックなワイン好きと『美味しんぼ』読者以外には、「何これ!?」と驚かれるので、ダブル・トリプルの意味で「美味しい」メニューでもあるのです。
さて、散々引っ張りましたが、今回のレシピに参りましょう。用意した素材はこちら。

●用意するもの(5~6本分)
ドライ白イチジク 300g
種抜きプルーン200g
レーズン 200g
はちみつ 適量(お好みで大さじ2~4杯)
くるみ 200g

上記の基本となる素材に加えて今回は、ドライアプリコット松の実を各100g、あとレーズン臭を抑えるために、ラム酒ブランデーを各大さじ1用意しました。あとはハイパワーのフードプロセッサーさえあればラクショーです。今回はクイジナート先生にご登場頂きました。

まずプルーンとレーズン、イチジクなどのドライフルーツをフードプロセッサーにかけます。ラム酒やブランデーを入れる場合には最初から入れておきましょう。あらかた切り混ぜられたところで、はちみつを投入し、再度スイッチを入れます(A)。ただしリキュールやはちみつなどは粘度を下げるため、入れすぎると固まりにくくなります。成形しやすいかたさを目指したいので、液体は香りや味のトッピング程度に考えておきましょう。

くるみと松の実などのナッツ類はオーブントースターなどで数分ローストして、香りを引き出します。くるみはローストしたあと、ペーパータオルや乾いたふきんなどで揉んで薄皮を取りのぞいておきましょう(B)。


この(A)と(B)、それに今回は、歯ごたえが残る程度にスライスしたドライアプリコットをボウルで混ぜ合わせます。上にラップを敷いた寿司用の巻きすで丸太状になるように成形。ラップを外し平らなバットや皿に移し替えて冷蔵庫で一週間ほど乾燥させれば、とりあえずは完成です。3~5mm程度に切ってチーズとともに楽しみましょう。一般的にどのくらいの期間保存できるのかはわかりませんが、僕はアルミホイルにゆるく包み、冷蔵庫で徐々に乾燥を進行させながら、ちびちびとつまんで半年以上楽しみます。

気をつけたいポイントは「粘度」。今回のようにラム酒やブランデーなどを入れる場合には、入れすぎると、ジャムのようになってしまいます。液体の量を抑えることと、選べるならはちみつも粘度が高いものを選びましょう。その他の素材選びでのポイントはイチジクの種類。日本産やカリフォルニア産などのソフトタイプのセミドライイチジクだと、水分量が多いので乾燥まで時間がかかってしまいます。水分量の少ないイラン産やトルコ産のドライ白イチジクなら、乾燥させる時間が少なくて済むというメリットもあります。

もっとも柔らかくなっても、むき出し状態で冷蔵庫に数か月放り込んでおけば、それなりに乾いていくので衛生面に注意してじっくり育てるという手も。
どうしても柔らか過ぎて切りづらい場合には、冷凍庫に一晩放り込んでおけば切りやすくなります。

ちなみに今回の「新居祝い」の参加者ではとりわけ女性から大好評で
「ストライク」(21歳・♀・学生)
「ドストライク」(30歳・♀・広告)
「フィグなんとか、購入希望です!」(はたなおこさん・新婚)

と絶賛を頂きました。作ろうという気概が見えないのはさておき、名前は「フィグログ」です。フィグ=いちじく、ログは丸太小屋=ログハウスのログ。「いちじく製の丸太」と覚えておきましょう。たまに販売しているサイトもありますが、作った方が断然安上がりで美味しいですよ(ワインくるくる)。(松浦達也)
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