「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(以下「あの花」)のBDDVD一巻の限定版に、長井龍雪監督の絵コンテがまるまる一話分ついてきます。
これが非常にお得なので、ぜひアニメ好きには見て欲しい、とオススメをしたい次第なのです。

 
とはいっても、絵コンテって結局何に使うの? と分かりづらいところがあるので、簡単に説明しておきます。
「絵コンテ」とは、アニメーションや映画などを実際に撮影する時に使う、設計図にあたるものです。
「脚本」があっても、それをそのまま原画にはできない。となるとどのカットでどういう動きをするか、どんな雰囲気を作りたいのかの緻密な計算が必要になります。当然、しっかり時間の枠(30分アニメなら22分前後)に収まるように計算しなければいけません。
特にアニメの場合はカットごとの絵とアクションの尺合わせをきちんとしておかないと、音やセリフがあわなくなってしまうため、この絵コンテが非常に重要になってきます。
 
絵コンテの描き方には色々な作家さんごとのやり方があって、これが正解、というのはありません。緻密に絵がうまい絵コンテもあれば、極端な話絵はなくて文字だけのもの(字コンテともいいます)もあります。
ようは、最終的にできるアニメーション・映画の出来がよければそれでいいので、いかに原画家などのアニメーターに「作品の構造」と「どう演出するか」を伝えるかが一番大事なわけです。
 
手軽に絵コンテを楽しみたい場合、入手しやすいのはスタジオジブリ作品の絵コンテです。
スタジオジブリ絵コンテ全集 (16) 崖の上のポニョ」などのように、まとめられたものが手に入るので興味がある人は見てみるといいでしょう。特に宮崎駿が手がけた絵コンテは、彩色までされているイラスト、動きのわかる描き込みで、単なる現場ツールにとどまらず資料価値のあるものとなっています。

また「時をかける少女 絵コンテ」の細田守氏の絵コンテもかなり面白いです。絵自体も動きが感じられて面白いのですが、特にガリガリに描き込んだわけじゃないのにしっかりと見ていて何をどう動かしたいのか、どのようにアニメを現場で作っていたのかがわかる、まさに設計図です。
書き込みがものすごく細かくて有名な絵コンテ監督には、故今敏監督などがいます。まるで原画のような絵コンテはファンの間でも話題になっているので、8月24日発売の妄想代理人 BD-BOXで一話分まるまる付くマルチアングルの絵コンテを見てみるのもいいかもしれません。
 
で、「あの花」の絵コンテなわけですよ。
何がいいって、BD・DVDの特典として気軽に入手できることですよ。
本当はアニメ製作に興味がある場合は製本された絵コンテ集を見るのがベストではありますが、どうしても「絵コンテ集」となるとそこそこ値段もしますし、そこまでして買おうかどうかと二の足を踏む場合も多いと思います。
DVDの機能で絵コンテの絵だけ動画と合わせてみることが出来るものもありますが、セリフや構図以外の設定描写の書き込みを見ることが出来るのはやはり絵コンテの面白さ。これは実物を見て味わっていただきたい。となると特典として絵コンテがつくのはまさにお得。

長井龍雪監督の絵コンテ、絵も非常にうまく、いい具合に表情指定などがわかるほど細かく描きこまれています。そのままマンガにできそうなくらいです。

でもあくまで設計図なのでアニメーターにイメージを任せるところはしっかり任せられるようになっているさじ加減が絶妙。映像でどう表現されているか比較しながら見ると面白さ倍増でしょう。
アクション設定は今まで見ていて気付かなかった細かい仕草まで書かれているので、一話が好きな人にはぜひ見ていただきたい! 特に「あの花」の第一話は一つ一つの仕草が細かいため、読んでいてハッとなる部分が多いです。また背景設定も、第一話目なのでものすごく解説が丁寧。部屋のどこに何がおいてあるか、という設定だけでもキャラクターを表現しているのがよくわかります。

絵コンテなどを見たことがない人の入門編としては最適の特典。
一話分なので気軽に見ることもできます(とはいっても結構なページ数ありますが!)。
時間の計算や動き・背景の指定を、はっきりとは分からなくても見ているだけで、どのようにアニメが作られているかが分かるはず。製作者側の目線が感じられるのは非常に貴重な機会になるでしょう。
これを見て興味の湧いた人は佐倉大(北久保弘之)の「アニメの絵コンテ講座」などを読んでみるのもいいかもしれません。
アニメを3倍楽しめる、絵コンテの世界に脚を踏み入れてみるのはいかが?
(たまごまご)
編集部おすすめ