第1回
第2回


●オズフェストと、ラ・ムー
───コラボしてみたいミュージシャンの方とかいらっしゃいますか? 夢でいいです。

上坂:夢ですか?! コラボするってなると全く想像がつかないんですけど……、私この間オズフェストを見に行って。


───僕も見に行きました。

上坂:すごかったですよね! 私実は二日目の人間椅子を見に行ったんですけど、現場終わって駆けつけていったら間に合わなくって、ストーン・サワーから見たんですけど、toolとかかっこよかったですよね。ほんとに、トランス状態ってあるんだなって実感しました。オオトリのブラック・サバスもすごかったですよね!

───もう存在感が……。

上坂:オジーとか今いくつくらいなんですかね? 動きも少しおじいちゃんめいてはいるんですけど、でも魔王さま感があるじゃないですか。さすがにコウモリとかは食べないし、シャボン玉も飛ばさないけど、帝王だなって。そういう往々のメタルレジェンドの皆さんを見ると、(小声で)一緒の舞台にたったらどうなるんだろうって少し想像してみたり……。人間椅子の方は実は私の大学のロシア語学科の先輩なんですよ。

───ベースの鈴木研一さんですね。

上坂:青森からお越しになって、ロシア語を勉強して、江戸川乱歩の世界満載の……。人間椅子が見れなくて悔しくて、結局サイン色紙の付くアルバムを2つ買って、泣く泣く帰りましたけど……。世界観が大好きなので。
人間椅子も大好きですし、オーケンさんもずーっと好きですし、菊池桃子さんがやってたラ・ムーとかも大好きですし。ラ・ムーはもう活動しないんですかね? ないでしょうね……

───もししたら大ニュースですね。それ以前に、ラ・ムーを知らないのでは……

上坂:活動再開したら凄すぎますけどねー。そうですよねー……。

───なんでラ・ムーなんですか?

上坂:ラ・ムーは、当時でこそ斬新すぎて色んな物がおっつかなかったらしいですし、PVとかも謎なんですけど、今純粋に曲を聞くと、菊池桃子さんのかわいい可憐な歌声と、ブラックミュージック的な力強い演奏がすごくあうんですよね。HMVさんの小冊子で連載をやらせてもらったときに紹介をしたんですけど、どうやら在庫がなかったみたいで、非常に申し訳ないことをしたんです。でもiTunesとかにあるので気軽に聞いてみて欲しいです。たとえアルバムが見つからなかったとしても!

───これで聞けますね(笑)

上坂:ダンスミュージックって今も根強いじゃないですか。だから今の人が聞いたら絶対いいなって思うと思うんです。

───早すぎたんですか。

上坂:ちょっと早すぎた気がします。歌詞も最近昭和のリバイバルというか、昭和っぽい雰囲気のものが人気というか。
私Perfumeだと『NIGHT FLIGHT』が一番好きで、ディスコっぽいんですけど、ああいう雰囲気がお好きな方なら絶対ハマると思うんです。だから、ラ・ムーが復活しなくても、ラ・ムー的な曲が復活したらいいなって思ってたり!

───そういうブームが……あ、でも「ブームになる」のってどう思われます? 一過性な感じが……。

上坂:確かに。でも、なんでも一度ブームになってから定着するものだから。テクノとかもそうじゃないですか。いっぱいわーっと竹が生えるように出てきて、そして後世に受け継がれるじゃないですか。

●軍歌って面白い。
上坂:あとはグル・グルとかザ・キュアーとか聞いてますね。筋少より前なんですけど、西洋版筋少みたいで、物語があるんですよ。

───上坂さんは割と古いものを愛しているイメージがあります。

上坂:別にそれがポリシーってわけではないんです。自然と気になるものがかつてレジェンドだったって物が多くて。
レジェンド的なものって何年経っても良さが残るんですよね。だって、『モスラの歌』とか今聞いてもかっこいいじゃないですか。

───それを次に伝える人もいますしね。上坂さんもレジェンドを伝える立ち位置にいるのかなと思ったりします。例えば軍歌とか。

上坂:そうなんですよね。軍歌イコール全て好戦的なもの、みたいに、ミリタリー趣味もそういう理由で迫害されることもあるんですけど、全くそうじゃないんですよね。最近は軍歌を研究されている方がいて、『軍歌大全集』なるものも出版されていて。改めて聞いてみると国策的に、好戦的に作られているけれども、よく聞くと歴史の背景がわかるんですよね。北原白秋とかが作詞をしているのがまた面白くて。

───当時の世相が反映されているところに、興味がわきますね。

上坂:ええ。
ソビエト軍好きとしてソビエトの軍歌をいっぱい調べるわけですけど、ソ連の軍歌は日本の軍歌とセンスが似ていて、ロシアンポップスと日本のポップスはマイナーコードが多いので似ているんです。軍歌も西洋風の歌じゃないというか。アメリカの軍歌はディズニーっぽいじゃないですか。

───ポジティブなマーチですね。

上坂:そう、我らが海兵隊が全部なぎ倒すぜ、って感じのが多いんですけど、ロシアのは違うんです。

───ガルパンで歌ってらっしゃった『カチューシャ』とか、日本人好みですよね。

上坂:そうですね。あの曲は元々歌声喫茶とかで歌われてたじゃないですか。カチューシャって日本語歌詞も別にありますし、明るく歌う「合唱カチューシャ」もありますし、モスクワの合唱団の音源で聞くと、歌詞が哀しいんですよね。戦いに行ったあの人が帰ってこないのを見つめている、岸辺にはリンゴの花が芽吹き、だけれども私は一人だ、と娘が歌っているっていう歌詞で。

───そういうの今の人も好きそうですね? ぼくはステキだなって思ったんですけども。

上坂:結構物語があるんですよね。
イケイケドンドンな感じのもありますけど、『ダスヴィダーニャ』っていう『別れ』って曲もありますし、戦場に行く家族を見送る時の心情とか。日本の軍歌だと『雪の進軍』もガルパンで出て来ましたけど、あの曲は勇ましいけど、歌詞はすごいですよね。

───しょんぼりですよね。「ここはいずくぞ皆敵の国 」(笑)

上坂:「馬はたおれる捨ててもおけず」。そんなに!?って感じじゃないですか(笑)「どうせ生きては帰らぬつもり」をそんなアップテンポで歌っちゃだめですよって思うんですけど。でも日本人のメンタルが出てる気がするんですよね。自虐ネタを極力笑って歌いたいみたいな。だから、時代は変わるけど、歌に込められるメッセージとかって変わらないなって思いますし、だからこそ今軍歌を聞くと面白いんですよね。

●ルサンチマンはみんなある。
───自虐ネタといえば、『spoon.』で大槻ケンヂさんと対談をされた時のタイトルが「ルサンチマン芸伝承対談」と書かれていて。そういう意識はありますか?

上坂:ルサンチマンって、無いわけがないんですよね。ルサンチマンの無い人間って、アダムとかイブとか、そんなレベルの方だと思います。
神が作ったまんまの人じゃないと(笑)。

───完全な人間じゃないとだめですか(笑)

上坂:誰でもなにかしらの鬱屈したものは、あると思うんですよ。それを、気づかないか、無意識のうちに抑圧するか、それとも抜け出せないか。色々あると思うんです、ルサンチマンの処理の仕方は。私はもう本当に、ルサンチマンがなみなみとある人だったので……、表に出しても解決しないのはわかっているので、あんまり出したくないんです。昔ほどではないですけど、今も感じることは多いですね。ラジオとかで、学校のお話で「お友達がー」とかのお便りをいただくと、ひどいことばっかり言っちゃうんです。あれもやっぱりルサンチマンがあるから、怒りのなにかに変換されるのかなって(笑)

───そのへんの感覚が、上坂さんの歌われる曲にもあって、大人、特に30代40代にも受けているのかな?って気もするんですよね。

上坂:そうなんですかね。肝心の私が21歳なので、きっとズレはあると思うんですけど、もしそうだったら嬉しなって思いますね。アニソンに今まで馴染みが無かったとか、声優さんを知りませんという方がたくさん聞いてくださったと聞いて。なんかいいですよね、それこそ「枠にとらわれない」というのが。

───今後アーティストとしてやって行きたいものはありますか?

上坂:そもそも一枚目と二枚目が何もかもが違うじゃないですか。なので、方向性を決めるっていうことをあんまりしたくないなって思っていて。私自身が色んな分野が好きで、それぞれの分野を愛している方々がたくさんいるというのもあります。ジャンルにとらわれないけれども、言いたいことは、一貫しているっていうのが理想ですかね。

───言いたいこととは?

上坂:「革命的ブロードウェイ主義者同盟」が提唱する、「生産・団結・反抑圧」っていうスローガンがあるんですけど、自分の好きなもの好きって言っていこう、自分の気持ちに正直でいてほしい、っていうのをテーマにして。「それは普通と違うからだめ」とかそういうことを言わないで、きっと共感してくれる人がいるよって。自分の気持ちに正直でいてほしい、っていうのをテーマにして。でも私の曲の形は様々なんですよね、おもちゃ箱みたいな。

───中野っぽくないですか。

上坂:そうですね! ブロードウェイ的なあれですね。

───秋葉原ではないですね。

上坂:そうですね、私、秋葉原はそんなに馴染みがなくて。今も行きますけど、アキバは町が移り変わっていくので……、中野はその点変わらないところが好きなんです。そういうのを目指しているところもあるのかなって思いますね。

(たまごまご)
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