「ヒゲは戦う成人男子のシンボル!」と最近思っている。戦国時代の武将たち(信長、秀吉、家康など)の肖像画を見ると、立派なヒゲを生やしているではないか。
観衆が手に汗握るような凄まじい戦いを日々繰り広げている彼ら。ところが、最近インターネットを中心に注目が集まっている名人戦、竜王戦、電王戦などの対局で観るように、ヒゲを生やしている棋士をほとんど見ない。現代は棋士といえどもヒゲを生やすことをはばかる風潮または慣習があるのだろうか。そこで僭越ながら、「どうして、ヒゲを生やした棋士が少ないのか」という疑問を棋界に聞いてみることにした。
「棋士に限らず、一般的に少なくなっているのではないでしょうか」(日本将棋連盟)
確かに、ビジネスマンはもちろん、政治家、実業家、学者、研究者、スポーツ選手といった特殊な職業の人にも常時ヒゲを生やしている人は意外に少ない。ところで、棋界でとくに身だしなみについて規則などがあるのか。
「特にこうでなければという規則はありません。一般常識の範囲内で、ということだと思います」
そう、ヒゲ、髪型、服装といった外見にルールがないにもかかわらず、みな判で押したようにカジュアルではなくスーツを着て、長髪にすることもなく清潔な髪型をしている。棋士というのは何と常識を弁えていることか!
では、過去にヒゲを生やした棋士はいなかったのか。
「平成3年に亡くなった升田幸三・実力制第四代名人は、現役時代“ヒゲの九段”として、よく知られていました。全盛時代、『オレはひげを家内に切らせると良い将棋が指せる』と話していたそうです。
なるほど、写真を見ると戦国時代劇に出てきそうな野武士のような風貌。これぞ私が想像していたような勝負師の姿だ。
では現在、ヒゲを生やした棋士はいるのか。
「現役棋士では中川大輔八段、大平武洋五段、中村亮介五段、遠山雄亮(ゆうすけ)五段、といったところでしょう」
中川大輔八段はとても渋みのあるダンディーな棋士で、ヒゲがとてもよく似あう。格好いいなぁ。
その中から、立派なあごヒゲを生やしている遠山雄亮五段にヒゲについて話を聞くことができた。
――いつごろ、どのようなきっかけ、理由でヒゲを生やしたのですか。
「一年ほど前から生やし始めました。髪の毛を短くしたので、それと合わせて。要するにお洒落の一貫です。よく相撲取りとかは勝ち負けで剃ったり生やしたりしますが、私はとくにそういうことはしていません」
――升田名人や中川八段のヒゲを生やした顔を見て、どんな感想をもたれますか。
「お二人ともダンディで素敵ですね。
――羽生三冠、森内名人、渡辺竜王の中で、もしヒゲを生やしたら誰が一番似合うだろうと思われますか。
「渡辺竜王でしょうか。顔が薄い人のほうが似合うと思います。彼とは時折アンオフィシャルな場で会うと無精ヒゲを生やしていることがありますが、なかなか似合っています」
――最後に、棋界でヒゲが少ない理由は何だと思われますか。
「“対局の時に気になると嫌”ということはあるでしょうか。私も対局の前に気にならないように整えていくケースがあります。しかし単純に、プロ棋士はヒゲをたくわえるより白星をたくわえることに興味が強い、というのが真相でしょう」
――しっかりオチをつけていただき、ありがとうございました。無精ヒゲではなく、遠山五段のようにお洒落の一貫としてヒゲを位置づけ、きちんと手入れしている棋士がもっと増えていいように思う。中川八段に劣らず、なかなか似合っていますよ!
俗説としてある、東洋人はヒゲが似合わないとか、泥棒顔だとか野蛮人とか不潔とか、そうしたネガティブな印象はないとここで断言したい。それぞれの顔の特徴に合ったヒゲの形、生やし方があるはずだ。「あなた、男らしくないわね」と女性に言われないためにも、男らしいヒゲを生やしてみよう!
棋界では世間の常識に即するようにヒゲ派が少数にとどまっているが、将来ヒゲを生やした名人や竜王が登場すれば、トレンドは一気に変わるかも知れない。
(羽石竜示)
で、現代の戦国武将、勝負に生きる男たちといえば、将棋の棋士だと私は考える。
観衆が手に汗握るような凄まじい戦いを日々繰り広げている彼ら。ところが、最近インターネットを中心に注目が集まっている名人戦、竜王戦、電王戦などの対局で観るように、ヒゲを生やしている棋士をほとんど見ない。現代は棋士といえどもヒゲを生やすことをはばかる風潮または慣習があるのだろうか。そこで僭越ながら、「どうして、ヒゲを生やした棋士が少ないのか」という疑問を棋界に聞いてみることにした。
「棋士に限らず、一般的に少なくなっているのではないでしょうか」(日本将棋連盟)
確かに、ビジネスマンはもちろん、政治家、実業家、学者、研究者、スポーツ選手といった特殊な職業の人にも常時ヒゲを生やしている人は意外に少ない。ところで、棋界でとくに身だしなみについて規則などがあるのか。
「特にこうでなければという規則はありません。一般常識の範囲内で、ということだと思います」
そう、ヒゲ、髪型、服装といった外見にルールがないにもかかわらず、みな判で押したようにカジュアルではなくスーツを着て、長髪にすることもなく清潔な髪型をしている。棋士というのは何と常識を弁えていることか!
では、過去にヒゲを生やした棋士はいなかったのか。
「平成3年に亡くなった升田幸三・実力制第四代名人は、現役時代“ヒゲの九段”として、よく知られていました。全盛時代、『オレはひげを家内に切らせると良い将棋が指せる』と話していたそうです。
テレビの時代劇に素顔のまま、浪人役で出演したこともありました」
なるほど、写真を見ると戦国時代劇に出てきそうな野武士のような風貌。これぞ私が想像していたような勝負師の姿だ。
では現在、ヒゲを生やした棋士はいるのか。
「現役棋士では中川大輔八段、大平武洋五段、中村亮介五段、遠山雄亮(ゆうすけ)五段、といったところでしょう」
中川大輔八段はとても渋みのあるダンディーな棋士で、ヒゲがとてもよく似あう。格好いいなぁ。
その中から、立派なあごヒゲを生やしている遠山雄亮五段にヒゲについて話を聞くことができた。
――いつごろ、どのようなきっかけ、理由でヒゲを生やしたのですか。
「一年ほど前から生やし始めました。髪の毛を短くしたので、それと合わせて。要するにお洒落の一貫です。よく相撲取りとかは勝ち負けで剃ったり生やしたりしますが、私はとくにそういうことはしていません」
――升田名人や中川八段のヒゲを生やした顔を見て、どんな感想をもたれますか。
「お二人ともダンディで素敵ですね。
中川八段は棋士の中でもお洒落で知られています。印象に残りやすいという意味で、ファンへのアピールにもなるという利点があります」
――羽生三冠、森内名人、渡辺竜王の中で、もしヒゲを生やしたら誰が一番似合うだろうと思われますか。
「渡辺竜王でしょうか。顔が薄い人のほうが似合うと思います。彼とは時折アンオフィシャルな場で会うと無精ヒゲを生やしていることがありますが、なかなか似合っています」
――最後に、棋界でヒゲが少ない理由は何だと思われますか。
「“対局の時に気になると嫌”ということはあるでしょうか。私も対局の前に気にならないように整えていくケースがあります。しかし単純に、プロ棋士はヒゲをたくわえるより白星をたくわえることに興味が強い、というのが真相でしょう」
――しっかりオチをつけていただき、ありがとうございました。無精ヒゲではなく、遠山五段のようにお洒落の一貫としてヒゲを位置づけ、きちんと手入れしている棋士がもっと増えていいように思う。中川八段に劣らず、なかなか似合っていますよ!
俗説としてある、東洋人はヒゲが似合わないとか、泥棒顔だとか野蛮人とか不潔とか、そうしたネガティブな印象はないとここで断言したい。それぞれの顔の特徴に合ったヒゲの形、生やし方があるはずだ。「あなた、男らしくないわね」と女性に言われないためにも、男らしいヒゲを生やしてみよう!
棋界では世間の常識に即するようにヒゲ派が少数にとどまっているが、将来ヒゲを生やした名人や竜王が登場すれば、トレンドは一気に変わるかも知れない。
「月下の棋士」ではなく、「ヒゲの棋士」という将棋マンガがあるといいなと思ったりする今日このごろである。
(羽石竜示)
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