
1話は、「周産期医療」とか「未受診妊婦」だとか知るひとぞ知る出産に関する問題に切り込んだ興味深い内容であり、苦労の末、生まれた赤ちゃんの無垢な美しさが問答無用に感動を呼んだ。
現場を俊敏に駆け回る医療従事者たちの熱や風も、画面を生き生きさせる。演出は、大ヒットした映画『ビリギャル』の土井裕泰。
なんといっても、評判がいいのは、主役の綾野剛。
生まれたばかりの赤ちゃんに指を握られ微笑む主人公の産婦人科医・鴻鳥サクラを演じた綾野剛の笑顔は、これっぽちも嘘がなく見え、いままでやや影のある印象だった綾野剛に、柔らかな部分が出て好感度が上がった。
つくづく新しい命は人間を浄化するのだと思わされる。
それも、単に人気俳優のイメージを一新させる俳優プロモーションドラマではないところがいい。
赤ちゃんに指を握られて微笑む場面にも、幾重にもドラマがあった。
「生まれてきておめでとう」と赤ちゃんを激励するサクラ。天才的な腕をもち、人間的な器の大きさにも定評のある産婦人科医・サクラには、実は自分の誕生にまつわる暗い過去があった。
第1話のおわり、生まれた赤ちゃんに握られたサクラのひと差し指は、ピアノを弾く少年の指になる。
サクラのもうひとつの顔──天才的ピアニストは、彼の子供のときからの資質だった。
乳児院で育ったサクラは保育士の小野田にあたたかく育まれる。
人間の指が、命を生み出す手伝いもして、生まれた命と手を握り合う。人間の指は美しい音楽を生み、共同作業でもっと素敵なメロディーになっていく。そんなたくさんの可能性を描いたいいシーンだった。
こんなふうに概ねすばらしい。
ただひとつ気になるのが、BABY。
サクラのもうひとつの顔だ。医療の傍ら、銀髪のカツラをかぶって化粧をした謎のピアニストとして、活動していて、ふだんは温和な彼が、ピアノを弾く時だけ、感情を発散させる。
彼の天才的な医療テクニックやうちに秘めた熱情を、ピアノ演奏で表現するのはいいし、カツラをとった瞬間、口調ががらりと変わる綾野剛の芝居の巧さもなかなかのもの。
ただ、どうも銀髪のカツラのカツラ感が・・・。
正直、1話の冒頭は、笑いそうになった。
あえてのコスプレキャラなのだろうけれど、それにしても、スマホなどで見るならいいが、大画面テレビだときびしくないか。
産婦人科のシーンが生き生きしているだけに、ライブのシーンの嘘くささが際立ってしまう。
1話ではあんまり顔を映してないのはそのせいなんじゃないかと思うのだが。
原作の漫画だとこういうケレン味や違和感かがうまく馴染む。実写が漫画を超えられないのはこういう部分なんだよなあ。せっかくなので、そこまでクリアして見せていただけたら、スタオベする。
あと、小栗旬が準レギュラー(1話にもちらっと登場)として出演するのは豪華だなと思うものの、綾野剛ひとりに頑張らせてあげてよっていう気もしないでない。そんなに視聴率欲しいのか・・・。
(木俣冬)