メインステージのスクリーンに、5人と客席が映るのを見た中居は、
中居「みてみな、あの画面。
中居が隣にいる木村を見ると、木村も笑っている。
木村「そんじゃひとつ、2003年夏のツアーMIJ、これにてしゅーりょーー」
「SMAP '03“MIJ Tour”」
2003年7月からスタートしたSMAPのコンサートツアー「SMAP '03 “MIJ Tour”」。DVDには8月24日に横浜国際総合競技場公演(現・日産スタジアム)の模様が収められている。
会場全体が映し出されると、すごい人の数。ドームクラスでさえ圧倒されるのに、スタジアムクラスともなるとものすごい熱気が伝わってくる。
2003年6月に発売されたアルバム『SMAP 016/MIJ』をひっさげてのツアーは、札幌からスタートした。
ライブ前日の7月4日に札幌入りしたメンバー。舞台裏をリーダーの中居が明かしている。
「せっかくの機会なんだから、見にきてくれた人には本当に楽しんでもらいたいじゃない。僕はホントに欲が深いんで、あれもやりたい、これも見せたいとなっちゃって、初日は4時間近いライブになっちゃったの。でもさすがにそれは長すぎると…」(ポポロ/2003年9月)
本番前日から会場入りして寝ずにリハーサルを行い、寝ずにステージに立った。初日が終わっても夜中の3時までミーティングを重ねたという。
「みんなでソファにくっついたまま横になってさ、木村がすかさず“ちょっと暗くして”って頼んで、一瞬部屋が夜みたいになったね」
リハが終わって開場から開演までの2時間のうち、1時間だけ仮眠をとった。そこから汗だくになりながらのハードなステージが3時間。
ステージにかける情熱は、1年に1回という理由の他に、こんな思いがあった。
「僕はよく野球を見に行くけど、いつもグランドでプレイする選手たちとの距離を感じてたのね。それはそれでスポーツだから、見るのも、応援するのも楽しいんだけど、僕らのファンにはそういう思いをさせたくないといつも思ってた」(ポポロ/2003年9月号)
ファンのことを単なる“観客”ではなく、身内のように思いやるSMAP。
「僕らとみんなと一緒にひとつの団体みたいな感じがして、それは年々強くなってきた気がする。会場はこんなに広いけれど、距離的には近くなってるような。そんな感じ」(ポポロ/2003年9月号)
木村も、「会場が大きいから、お客さんが景色にならなければいいなって思ってる。それだけが心配」(ポポロ/2003年8月)
ファンとの距離を何よりも考えているSMAP。その精神は、2005年のツアー『SMAPとイク? SMAP SAMPLE TOUR FOR 62DAYS.』の演出をはじめ、ずっと貫いている。
国民的アイドルと呼ばれるようになり、ミリオンセラー、視聴率、動員数、コンサートの規模……数々の記録を樹立していく彼らを、遠い存在に思っても不思議ではないのに、それどころかより身近に感じさせてくれるのが彼らのすごいところ。
木村は、「俺たちもただステージを見せるだけじゃない、お客さんだってただ見るだけじゃない。
(ポポロ/2003年8月)
1年に1回のステージのために奮闘するSMAP
「コンサートで1年に1回会うためにまた頑張るって言ってくれる人がいたりするからね。1年に1回って、なんか七夕様みたいだけど、それまでの1年の間にはいろんな事柄があって、またそこで顔をあわせた時、お互いに成長していると素敵なことだなって思う」(ポポロ/2003年8月)
草なぎがツアーを振り返って語った。
「これは僕にしかできないことだから」と今回は、バク転バク宙にこだわった。大阪公演1日目にバク転を失敗したことを悔やみ、練習に励む様子が語られていた。さらにソロステージ『la.la...Shall we Tap?』では、タップダンスを披露した。
「応援してくれるパワーってホントにすごい。何でもできそうな気がするし、できることはみなやってあげたい気持ちにさせられる」
(ポポロ/2003年10月)
ファーストライブから10年が経過しても、“1年に1度”の重みを特に感じている草なぎ。
「僕のファンの子なんか、昔はキャピキャピしていたのが今ではすっかりお母さんになってる子も多いんだよ。だから、お互い環境も生活も変化していく中で、SMAPっていうひとつのものを通してさ、会話してるみたいな感じがするの。そういった意味でも1年に1度だし、感動的なステージにしたいよね」
(ポポロ/2003年10月)
“奮闘”といえば、この方も試行錯誤を重ねて挑んでいた。
「お客様に申し上げます。このあと、音の悪いエリアを通過します…」
映像には乗客と機内アナウンスの様子が流れる。
中居のソロステージになると、トイレに駆け込む人が増えている事態を受け、トイレに行くなというメッセージをこめた『トイレットペッパーマン』を披露。自虐的な作戦に出ていた。
MIJツアーの中でも特に印象的だったのが、木村も好きな曲として挙げた『A Song For Your Love』。2014年放送の「FNS27時間テレビ」のライブでも披露した曲で、メインステージに稲垣、草なぎ、香取。中居と木村のツートップが花道に降りて歌う。これは引きで見ていたい演出。はじめに中居と木村が前へ出たり背中合わせで歌ったりするシーンに、デビュー当時のSMAPが重なって涙が出てくる。
「せっかく空の下だから…」木村の言葉の途中で、いわんとすることがわかったのか会場の歓声が大きくなる。
「これ、みんなで一緒に歌おうぜ!」
すっかり日が暮れた会場とマッチする『夜空ノムコウ』。天井がない分、高い位置からスタジアムを見下ろす景色に、ブルーの照明がきれい…と、浸ったのも束の間、中居と香取が向かい合ってカメラ目線でポーズをきめている。バラードなのに(笑)
スタジアムならではの演出もあり、横浜国際総合競技場公演もラストを迎える。
木村「今年のツアー、会場に来てくれた100万人近い客席のみんなと、ここにいるみんなと、それから俺らを応援してくれた沢山のあったかい気持ちと、これからのみんなの明るいこの先の人生に…」
中居「“せーの”っつたらみんなも言って」×2
全員「乾杯!!」
シャンパングラスを高らかにあげて乾杯するSMAP。
むせるつよぽん。
香取「あぁーービール飲みてぇ!」
草なぎ「酔っぱらったこれ?」
中居「すいません、おかわりー」
会場が大きくなっても、いつもと変わらないSMAPがいた。
ちなみに、DVDの発売日は2003年12月24日。SMAPからのクリスマスプレゼントのようで、当時DVDを見ながらクリスマスを過ごした人もいたんじゃないかな。
アルバムとツアータイトルになっている「MIJ」とは、Made in Japanの略。多くの日本人が国を越えて活躍している中で、今一度、日本人であることを誇りに思おうじゃないかという意味が込められているそう。
木村はこのコンセプトを「強制したくない」、「表現の一つだから好きなように聞いて」と語っていたけれど、日本で生まれたSMAPのステージを多くの人に観て欲しいと思う。
約100万人を動員したMIJツアー。スタジアムともなると、約6万人を前にパフォーマンスをすることになる。ステージに立ったときの気持ちを聞かれた稲垣は、
「すごいでかいものを抱えているような、たとえば大海原というか森というか、そういう自然にたとえられるような、すごい広大なものが目の前にある感じ。それがみんなでこちら側に向かって何かを発してくるみたいな。
(柚月裕実)
【SMAPライブDVDレビュー企画】(毎週金曜更新)
SMAPの解散が報じられ、ジャニーズファンのライターとして何かできることはないかと、SMAPライブDVD全作レビューに挑戦することにしました。
SMAPがこれまでに見せてくれたステージを、改めて振り返ってみたいと思います。