
安藤と大島の五反田グルメツアー
今回部屋を探しているのは、人間関係のトラブルに巻き込まれて仕事をやめ、求職中の貴子(趣里)。彼女が吉祥寺の「リトル・スパイス」でカレーを食べているシーンから始まる。「好きな飲食店がたくさんあるから」という貴子を双子が連れて行った先は、五反田。「風俗とかあるところですよね?」と怪訝そうな貴子に「じつはオフィス街なんだよ。隠れたグルメタウンでもあるんだ」と話す富子。
そして「リトル・スパイス好きならここ!」とさっきカレーを食べていた貴子に「ホットスプーン」で牛すじ煮込みカレーを食べさせる(貴子も「わたし、今日カレー2杯目です」とちゃんとツッコんでいるが)。そのあとも、「グリルエフ」のハヤシライスこそ紹介のみで食べていなかったが、「ブレッド&コーヒー イケダヤマ」のクロワッサンをほおばり、さらにいっぷう変わった「ダ・カーポ」でたい焼きもペロリ。これはかなりのグルメツアーだ。
第1回で重田姉妹らが食べたのはクリームパン1個だったし、今回も、原作で食べていたのはさいごのたい焼きくらいだった。カレーやクロワッサンの費用は誰がもっているのか、気になるところだ。客からしてみれば勝手に連れまわしておいてワリカンはちょっと納得がいかないし、かといって重田姉妹が全部払っているのだとしたら太っ腹すぎる。
ふくよかに挟まれた華奢、見た目の説得力
紹介した物件で、貴子は訥々と仕事でのトラブルを語り始める。上司が社内で二股をかけていることを自分だけが知ってしまった貴子。一番仲のいい同僚と先輩、どちらにも言えぬままそれがばれてしまい、同僚は気まずいまま会社を辞め、先輩にはいじめられるようになったというものだった。
やがて、原作では館内を巡っていた五反田TOCの、館内はスルーし屋上にのぼる三人。そこから貴子のいた会社の方を眺め「会社なんてちっさいものなんだよ」と富子が話すと、表情を変えないまま都子が吹き矢を吹く真似をして「吹き矢でいじめた先輩撃っといた」とつぶやく。ユーモアとやさしさが入り混じった、ドラマならでは、このキャスティングならではの名シーンだ。
深夜にそっと開く、窓のようなドラマ
さて、突然のピース又吉ゾーン。部屋を探しているていの又吉に重田不動産から送られたメールは「部屋における窓とはどのような役割でしょうか」。先週はかろうじて「引越し業者に求めるものは?」とギリギリ実際に質問されてもおかしくない内容だったが、これはもう完全にお題だ。なぜ不動産屋がお題を送るのかはよくわからないが、又吉はちゃんと逡巡を続ける。結果、送った返事は「そんなことより、月が綺麗ですよ」。一見お題に答えず関係ないことを言っているようだが、この答えを見た人はきっと自然に窓の外に目をやらざるをえない、とてもいい答えだ。
そして、双子が新しい街を紹介することで悩みを抱える人々の心に風穴をあけるこのドラマこそ、窓のようなものだな、とも感じる。このまま、一週間の終わり、それぞれいろんなことのあった人々の心の風通しをよくするドラマとして、回を重ねていってほしい。
(釣木文恵)