
参考→絶好調ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は原作でも星野源=津崎がヒロインだ
津崎は男子高校生が陥るアレ
別居状態を乗り越えた二人は、元よりも恋人らしい関係に近づいていた。しかし、雇用契約書に雇用主との恋愛についての条項がないのでシステムの再構築をと、津崎は誰も求めていない合理的かつ童貞丸出しの発言を未だにしてしまう。そんな中、みくりは津崎が他の女性と歩いているのを目撃する。
今回のみくりの悩みは、津崎が自分の事を好きなのではなく、初めての彼女らしき相手に盛り上がっているだけなのではないか? というもの。男子校に通ってる高校生が、ちょっと女の子に優しくされると好きになってしまうというアレだ。これは津崎にも大いに当てはまる。しかし、その真実は津崎本人にもわからないことだろう。
なぜなら、周りから見ればうわっついた偽物の感情でも、その男子高校生は本当に好きだと思っているのに違いはないからだ。ただそれが津崎の場合、自分の事を女性が好きになる訳がないという絶対的なネガティブ自信のせいで、あっさりと人を好きになることはなかった。たまたまその大きな壁をみくりが壊したから、簡単に好きになってしまっただけなのかもしれない。まぁ、それはそれで全然良いことだが、みくりの心配はあながち間違っていないし、確かめようがない。
童貞は30越えると魔法使いになるというヤツ
「僕、女性経験がないんです」このカミングアウトによって津崎は大きく成長をした。
そのおかげで第9話の津崎は、とても素直だった。仕事でトラブルがあり、なかなか家に帰れない津崎は、「バグの日か!」珍しく声を荒げている。2話か3話辺りにも、仕事で帰れないシステムエンジニアの大変さを描写していたシーンがあったが、あの時は無表情で誰よりも仕事をこなしていた。その時に比べたら実に人間らしい。
もちろん、その素直さはみくりにも向けられる。みくりは、津崎が女と二人でいるのを偶然見かけてしまい、すねてしまう。もちろんこれは勘違いだったのだが、この時のみくりは少々めんどくさい。筋も見えづらい少し取り留めのない話し方で津崎を追い詰めようとする。よほど女性になれたイケメンでも手こずりそうな状況だ。
しかし、素直になった津崎は違う。
「もし違っていたらすいません。調子に乗っているわけではなく、嫉妬してくれたのですか?」
「かわいいなぁと思って。ずっとみくりさんが僕のこと好きなら良いのになって思ってました」
ヒステリックな女性に対して、素っ頓狂と言えるほどの素直さでその場を収めたのだ。これは、童貞ならではのテクニックと言えるかもしれない。
何も知らない純粋無垢にしか言えない感じ、思ったことをそのまま言っている感じが、ロボットとの恋愛物や動物との恋愛物に似ている。
「しずかさん、泣いているのですか?」「誰だ? しずかさんを泣かせるのは!」
映画「ドラえもんのび太の海底鬼岩城」の喋る車・バギーのセリフだ。バギーは、車だから泣くという事がいまいちわからない。しかし、大好きなしずかちゃんが悲しんでいる事はわかる。この後、バギーは自分の命を投げ捨て、大ボスであるポセイドンに特攻している。
「ごめんなさい。こういう時、どんな顔をすればいいのかわからない」
人間かロボットかの説明はややこしいので省くが、これはエヴァンゲリオンの綾波レイのセリフだ。エヴァンゲリオン零号機が破壊され、エントリープラグから綾波を救出した碇シンジが泣きながら喜んでいるのを見て、このセリフを言った。
“童貞は30は越えると魔法使いになる”というのをよく聞くが、あながち間違いでもないかもしれない。もちろん魔法を使えるようになる訳ではないが、今回の津崎は、間違いなく普通の人では有り得ない人外のやりとりをみくりと行った。恋愛というものを全く知らないからこそ言えたセリフだった。
今夜放送の第10話は、最終回前にしての15分拡大スペシャルだ。エリートなはずなのにリストラ候補になってしまった津崎。何も知らずに朝までみくりとハグしているが、そのクビは一体どうなってしまうのだろうか?
(沢野奈津夫)