連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第15週「恋、しちゃったのよ」第88回 7月13日(木)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:渡辺哲也
「ひよっこ」88話。ミュージカル風に初デートは東京タワー
イラスト/小西りえこ

88話はこんな話


恋人になったみね子(有村架純)と島谷(竹内涼真)が、はじめてのデートをする。

愛しちゃったのよ♪


87回で、みね子(有村架純)と島谷(竹内涼真)のカップルが成立し、お祝いムードの中、「ただね、あっさりくっついたからこの先何があるのかなと思いながらの・・・」と「おはよう日本」で、高瀬耕造アナは冷静な意見を述べた。

確かに、あまりに、あっさりだ。
ここまで来るまでの、恋の葛藤が全くなかった。
まあ、現実には、こういう、すぐになんとなくいいなとお互い思って、なんとなく状況に流されてつきあうことになるケースはままある。
いずれにしても、“今後が気になる”という、作劇としては成功している。

また、本人より、まわりが囃し立てるというパターンもよくある(飲みの席などで)。こうなると、絶対、幸せになってほしいけれど、どうなるんだろう。さんざんまわりに盛り上げてもらって、ダメになるパターンってほんと、気まずいから、と余計なお世話だが心配になった。

はじめてのデート


みね子はさっそく、お母ちゃんに「恋人ができました」と手紙で報告する。隠し事しないのがほんとうにえらい。「彼氏」じゃなくて「恋人」という言葉を使うのが、古風で新鮮。「よろしくお願いします」という挨拶や、デートに当日「おまたせしました」というのもすべてが新鮮。これが、“昭和”なのか! こういう礼儀正しさは、復活させてもいいような気がする。

はじめてのデートは、東京タワー。いきなりミュージカル仕立てで、ふたりの周囲を、踊っている人たちが彩る。

周囲は楽しいミュージカル調だが、みね子と島谷は、ふたり並んでおしゃべりしながら歩き、東京タワーから
島谷の大学に行くだけ。みね子の知らない、島谷の生活を知るというのは素敵なことだけど、今日もまた、15分、ゆるやかな内容だった。

高いところにのぼる


朝ドラヒロインが高いところに登るパターンがある(木や屋根や高台)。一般人が現在見ることのできる、現存する朝ドラの中だと、「おはなはん」(66年)でヒロインが木に登っている場面が、最初だ。それ以前は映像が確認できないのでわかりません。
この高いところに登るパターンは、女性の物語であるという暗喩のように使用されている印象があるが、「ひよっこ」のみね子は、社会進出するふうでも、女手ひとつでがんばるふうでも、いまのところないので、高いところに登っても、その痛快さに意味はない。だからなのか、登ったシーンは映らなかった。
ひとつ、おもしろいのは、男の島谷が“高いところが苦手”ということだ。
そして、それでもタワーに登ったわけをみね子にていねいに説明する。チケットのことといい、島谷は理屈っぽい。顔がいいのと、真面目なのはいいが、正直、面白味はない気がする。どちらかといえば、夢をもって行動しているヒデ(磯村勇斗)や、なにごとにも一生懸命な正義(竜星涼)のほうが良いのでは? と思うが、大きなお世話であろう。


最後にもう一言。
カップル成立はあっさりだが、愛子(和久井映見)の行動の謎を引っ張るところが、すてきな岡田脚本。
(木俣冬)
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