まあ、ちのやん&カメコも夫婦愛の話だったし、キレイにつながって……ないな、やっぱり。

菊村先生、浮かれ過ぎですよ
若かりし頃、菊村栄(石坂浩二)が熱を上げた結果、亡き妻・律子(風吹ジュン)が自殺未遂を起こしてしまったという、ワケありの女・安西直美。
その直美の孫である榊原アザミ(清野菜名)が菊村に会いたがっているという。シナリオの勉強をしており、菊村のシナリオはすべて持っているほどのファンなんだとか。
しかもそのアザミ、若い頃の安西直美にそっくりなのだ。
アザミの顔写真を見、一気に浮かれてしまい「アザミ嬢のララバイ」が脳内再生される菊村。
「やすらぎの郷」の老女優たちからモーションをかけられても相手にしないし、何だかんだで亡き妻・律子のことを今でも愛している真面目な菊村先生……と思っていたのに、ちょっと若い子からアプローチされただけで、「アザミ嬢のララバイ」を歌いながら律子の写真を伏せてしまうとは。
マヤ(加賀まりこ)から「直美本人より、あの頃の直美に会いたくなったわけだ」と言われていたが、菊村先生、アンタも若い子にしか興味ないタイプか。
その後も、釣りをしながら延々「アザミ嬢のララバイ」を歌い続け、アザミから手紙が届いたと知れば脳内でBGM再生! 菊村先生、ちょっと浮かれ過ぎじゃない!?
これまで、何があってもわりと冷静に対応してきた菊村が、アザミ絡みとなると、ウキウキソワソワしちゃって「これが恋なのかしら」状態になっており、見ていてニヤニヤしてしまった。
苦心してメールの使い方を覚えてようやく会う約束を取り付け、「機械文明はやっぱりすばらしい!」とつぶやいてしまうほどのテンション。か……かわいい。
加藤茶超えの年の差カップル誕生
菊村の浮かれっぷりも気になるところだが、実際にアザミと会うのは次週から。今週、注目の恋愛話はやはり、マロ(ミッキー・カーチス)と松岡伸子(常盤貴子)カップルだろう。
マロ81歳、伸子35歳。年齢差46歳のカップル。
そんな面白いネタ、当然「やすらぎの郷」中の話題となるのだが、そこで持ち上がってきたのが「何歳差カップルはアリかナシか」問題。
老人側からするとやはり、基本的に「そんなに若い子を引っかけてよくやった!」という反応が大多数。
「気持ち悪いわ」と言っていた姫(八千草薫)たちも、自分の身に置き換えて、大好きな若手俳優・シノと63歳差で付き合ったら……と考えると、
「気持ち悪くはないけど、ムリよねぇ……」
「最初からあきらめちゃダメよ」
と、まんざらでもない感じなのだ。
一方、「やすらぎの郷」理事長夫婦をはじめとする若い人側は否定的な反応が強め。
特に名倉みどり(草刈民代)は、伸子に「あなた、本気なの?」「あなた、正気!?」「男性経験はおありなの?」などなど、失礼な質問を連発して、分かりやすく「お前、あんなジジイと付き合うなんて頭大丈夫か!?」的なリアクションを見せていた。
みどりさん、老人ホームを運営しているわりに、老人に対して辛辣なんだよなぁ……。
いや、この『やすらぎの郷』というドラマ自体、シニア向けと言っているわりに、しばしば老人ディスがぶっ込まれている。
たとえばヌーディスト・ビーチのエピソードの時は、ジジイ3人組が老女の裸体と若い子の水着姿を比較して「時っていうのは残酷なもんですねぇ……」となげいたり。ちょいちょい「若い子(女)サイコー」的な描写が入ってくるのだ。
このあたりは、やはり脚本家・倉本聰の個人的嗜好が反映されているのだろうか。
そう考えてみるとこのドラマ、老人(というかジジイ)にとって都合のいい言動をする若い娘がやたらと登場してくる。
金も持っていないジジイとの恋愛に前のめりな伸子をはじめとして、「私が先生のことを好きになっても、さしつかえない世の中になってきたわけでしょ」など、ちょいちょいジジイ転がし発言が飛び出すハッピー(松岡茉優)。そして、メールと手紙の文面のみからだが、アザミもかなりジジイ転がしのスキルが高そうだ。
そんなアザミと実際に会って、菊村がどんな感じに転がされてしまうのか、注目だ。
しかし今回、マロと伸子の年齢差ばっかりに話題が集中していたけど、老人ホームの職員が入所している老人と交際するというのはアリなのだろうか? しかも、施設の敷地内で抱き合ったままキスしまくっていたみたいだし……。
元・芸能界で活躍していた人たちが入所する「やすらぎの郷」には、金を持っている老人も多いはず。コレをオッケーにしちゃうと、遺産目当ての交際が横行しそうなもんだが。
恋愛話と徘徊老人が同時進行するドラマ
マロや菊村の浮かれた恋愛話が進行する中、及川しのぶの認知症がまたまた悪化して、「やすらぎの郷」の外にまで徘徊するようになってしまったのも衝撃的だった。
スターだった時代を思い出しつつ、中島みゆきの「ファイト!」をボソボソとつぶやきながら徘徊する姿は本当に悲しい。
一方、菊村は若い子との出会いに浮かれて「アザミ嬢のララバイ」を口ずさんでいるという……嬉しい時も悲しい時も、中島みゆきの楽曲フル活用なのだ(「アザミ嬢のララバイ」も浮かれて歌うような曲じゃないと思うが)。
しかし、こんな恋愛話と徘徊老人の話が同居できるドラマというのは、『やすらぎの郷』くらいしかないだろうな。
さて、第17週ではいよいよアザミとご対面。
死んでいたという事実が発覚するようだ。
以前、「人は過ぎたことを忘れる」という話題の中で秀サン(藤竜也)が、
「東日本大震災のことだって、原発事故のことだって、みんな簡単に忘れたじゃないですか」
と、唐突に震災の話を持ち出して違和感があったのだが、ここにきて東日本大震災の話題をガッツリとぶっ込んでくるのか!?
ドラマの序盤「全然話が展開しねーな……」と思っていたのがウソのようにグルングルン話が転がっていく『やすらぎの郷』から目が離せないぞ!
(イラストと文/北村ヂン)