フジテレビ系ドラマ「僕たちがやりました」第5話。レン子(永野芽郁)が襲われているシーンが全く話題になっていないのは、トビオ(窪田正孝)と今宵(川栄李奈)と5回もやってしまい、その姿がエロ過ぎたから。
過激な描写の連続で、観ているこっちも色々麻痺している気がする。
「僕たちがやりました」5話。友だちを裏切りまくる超ゲス野郎マルがどうしても嫌いになれない
イラスト/小西りえこ

トビオが冷静になれたのは、ただの賢者タイム


トビオはヤング(桐山漣)に襲われたことで、大好きなレン子に無性に会いたくなる。街中を走り回り、やっとの思いで見つけるが、レン子は市橋(新田真剣佑)の車椅子を押していた。トビオは2人が付き合っていると勘違いし、反射的に逃げてしまう。そこでの心の声がこれ。

「もうヤダ。らしくないことしようとするから、こんなクソみたいな気持ちになるんだよ。昔から、熱くなって良かった試しがない。だからそこそこでいいんだよ。好きとかどうでもいいんだよ」

わかる。その気になっている時に落とされると一気にやる気をなくし、自分を否定したくなるという心理状況、弱い人間あるあるだ。こうやって、弱い者は新しいことにチャレンジする気概を失っていく。すごくわかる。
「もうヤダ」の部分だけで、全て説明出来ている気さえもする。

これのせいでトビオは自暴自棄になり、偶然出会った今宵の家に上がり込み、童貞を捨てる。こじらせかけていた童貞をあっさりと。そして今宵の優しさに甘えて、どんどん深みにハマっていく。現実逃避以外の何ものでもない。

ある夜、トビオは冷静になる。自分を大切にしてくれる家族の存在に気付く。しかし、母親(榊原郁恵)の電話に出ることは出来ない。次の日、「なさけないけど自首する勇気はない。けど、もう逃げるのはやめよう」と、現実としっかりと向き合うことを心に決めたのだ。まぁ、冷静になったというのは、営みを行った後の空しさ、いわゆる賢者タイムな気もするが。

もうさすがはマルとしか言いようがない


トビオは現実逃避の先で、自分の本当の気持ちに気付いた。それはキャバクラ遊びで金を使い切ったマルも(葉山奨之)同じだったようだが、そこはさすがマルと言ったところ。
出た結論は全く違った。

マルはキャバ嬢のうらら(おのののか)に入れ込んでしまい、パイセン(今野浩喜)からもらった300万と、トビオから盗んだ300万を使い果たす。まだまだうららと遊びたいマルは、「また盗めばいい」と、伊佐美に会いに行く。

マルは、巧みな嘘と下剤入りカニ飯で、伊佐美から300万を盗むが、直後、道を聞いてきた外国人女性(春香クリスティーン)に睡眠薬を飲まされ、その金を奪われてしまう。

そして、トイレから戻った伊佐美に全てがバレたマルは、見事な逆ギレを披露する。おそらく、現時点でのこれがマルの本心だろう。

「言っとくけどね、悪いのは俺じゃないから。一番ゴミなのがヤバ高なのは明らかっしょ?ってゆーか俺、そもそも助けてくれなんて頼んでねーし。お前らが勝手に盛り上がって復讐とか言い出さなきゃこういうことにはなんなかったんだよ!お前らの正義感が俺の人生をめちゃくちゃにした!つまり!一番の被害者は俺なの!あの金はその賠償金!だから貰って当然の権利!はい終わり!」

一字一句書き逃したくないほどの不条理発言。第1話で爆破の準備をしている時に、「みんなありがとう。俺のためにヤバ高に復讐しようとしてくれるなんて」と、友情を噛み締めていた頃の可愛いマルはどこにもない。

どっちに共感?大人になったトビオと、子供になったマル


現実逃避の末、人との絆や恋愛といった眼に見えない綺麗なものを守ろうとしたのがトビオで、自己肯定のためにそれを全部捨て去ったのがマルだ。
言い換えると、大人になったのがトビオで、子供になったのがマル。「なんで僕のことをわかってくれないんだよー!」と、自分のことしか見えていないのがマルだ。

追い込まれた人間の醜さを描写している今作だが、こう2人を比べると、トビオは全然キレイだ。好きな子がいるのに友達の彼女と5回もやっちゃってるけど、全然キレイ。やっぱり、物語の主人公って感じがある。根っこの部分が、すごく真面目だ。

対してマルはもう最悪。友達だろうがなんだろうが、自分の快楽のために切り捨てられる超ゲス野郎だ。自分が傷つかないためなら、手段は問わない。

このドラマのファンの皆さんは、誰に共感しているのだろう?それとも、完全に俯瞰で観て楽しんでいるのだろうか?僕は、本当に残念ながら、超ゲス野郎マルにちょっと共感してしまっている。
「僕たちがやりました」5話。友だちを裏切りまくる超ゲス野郎マルがどうしても嫌いになれない
イラスト/小西りえこ

第5話のラスト、菜摘先生(水川あさみ)の証言で、真犯人を名乗る男(山本浩司)が緊急逮捕され、パイセンが釈放された。その証言を嘘だと感じ取ったのは飯室(三浦翔平)と、菜摘先生を金で操った弁護士の西塚(板尾創路)の2人。
急に話が転がり始めた。

(沢野奈津夫)
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