「いやー面白かったな、今日は。いやもうね、本当に幸せだった」
稲垣吾郎が手際よくワインボトルを開けてグラスに注ぐ。
ブランデーみたいな色をした年代物のワインで乾杯。相手は香取慎吾だ。
12月に放送された「おじゃMAP!!」2時間スペシャルに稲垣吾郎が出演。番組の最後に、香取と稲垣がワインを飲みながら激動の2017年について語った。
木村拓哉「敵じゃない」稲垣吾郎「一生忘れられない」SMAPの転機から1年を見つめ直す、噛みしめる
「GQ JAPAN」が選ぶ「MEN OF THE YEAR 2017」でインスピレーション賞を受賞した3人

SMAPの転機から一年が経つ。6月には稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が所属事務所を退所することが発表され、9月8日の契約満了を以って巣立った。22日には「新しい地図」をスタート。大きな新聞広告への出稿を皮切りに、11月3日にはインターネット番組「72時間ホンネテレビ」(AbemaTV)にチャレンジ。森且行との再会も果たした。以前から務めているレギュラー番組の出演に、SNSの開設、パラリンピックのスペシャルサポーター就任、クリスマスには3人が歌う「72」が配信された。これからCM、映画、ドラマへの出演が控えている。しばらく休暇を取ってもよさそうなタイミングに、精力的に活動をする3人。
40代で大きな転機を迎えたこの一年を振り返ってみたい。

「もう一生忘れられない」稲垣と香取が2017年を振り返る


「おじゃMAP!!」は香取慎吾が2012年からレギュラー出演している旅バラエティ番組で退所後も継続。今年11月には草なぎ剛が愛犬のくるみちゃんと一緒に出演している。

香取と乾杯し一口飲んでグラスをぐるぐる回すと、「あ!おわ、あー!さすがソムリエ、俺」自分で褒めるゴローちゃん、どれだけワインが好きなんだ。
ビールとウイスキーを愛する香取慎吾が、食事会の時に飲んで「はじめておいしいと思った」ワインと近いものを稲垣が用意していた。「覚えていてくれたの?」香取が嬉しそうに驚いていた。ワインは味わうほかにもこういう楽しみ方があるのか。

香取が「2017年どうでしたか?」と切り出した。
それ、聞きたかった!

稲垣:まあいろいろあったね、もう一生忘れられない2017年だね。それは誰でもそうだし、こうやってテレビをみて応援してくれてる人にとってもいろんな思いがあった2017年だと思うし。でも、少しは成長できたかなと思う、2017年があったから。ほんとノンストップでずっとやってきてるから、いろんなことが麻痺してて。自分のことを考えたり自分のまわりのことを考えたり、家族のこともそうだし。
改めてさ、考えすぎなくて。いままでやってきて。すごい人を傷つけてきたのかなと思って、これは本当に素直に。忙しすぎてイライラしちゃったり……。
香取:見えてなかった?
稲垣:うん。一つの仕事のありがたみとか……。
香取:それはわかってはたずなのに、わかってなかった。

SMAPとして小・中学生の頃から一緒に過ごしてきたものの、今年始めたSNSを通して新たな一面を知ることもあった。番組の冒頭から、お互いのことを「誰よりも知ってるって勝手に思ってた」、「言葉にするって大切」と口にすること数回。これぞホンネテレビだ。

香取はSNSをはじめてファンから喜ばれる一方で、「この年齢でおまえなにやってるのみたいなコメントが寄せられた」ことを明かした。「いやいや、俺こうやって生きてきたんだよー(笑)」と笑いながらも、年齢を軸に考えるきかっけになったようで、稲垣にも40代という年齢を踏まえて質問をした。


SMAPのCDデビュー前、1991年元旦に武道館で行われたコンサート直後に当時17歳だった稲垣は、
「昨日、緊張で眠れなかった。でも今、すごく気持ちいい。コンサート、病みつきになりそう」(1991年1月24日/週刊明星)
あれから26年。

香取:踊りは?踊りたい?吾郎ちゃんって踊りが下手ってパブリックイメージがあるじゃない?(笑)吾郎ちゃんは踊りが好きなの?
稲垣:踊りは大っ嫌い!大っ嫌いだけど、すごい気持ちいいなとか、あ、好きかもとか思うときはいっつもある。
香取:あれだけ何万人の前で歌う、あの気持ちよさはさぁ……
稲垣:そう、それは僕らにしかわからない。

香取が少し間をあけたところで稲垣が言葉をつないだ。私生活の細かな部分は知らないかもしれないけれど、ステージにたった5人、同じ景色を一緒に見てきた仲間の言葉だった。

雑誌のインタビューで3人の関係をどう受け止めているかとの質問に草なぎは、「今年のことだけではなくて今までもずっとそうだったんですけど、一緒に歩いたり走ったりしてきて、いろんなことを乗り越えたうえで同じ方向を向いているんだなって」(GQ JAPAN/1&2月号)
「Abema」を「新しい別の窓」と表現して視聴者から「お見事」と言われたり、愛犬・くるみちゃんとテレビ出演を果たしたり。ギターをかき鳴らして歌う、生き生きとした草なぎの表情があるから、新たな出発を前向きなものとして捉えることができる。

「木村とデュエットするわけじゃない…」中居と木村の「ツートップ」は


12月28日放送の「長嶋さんと中居くん」(テレビ朝日)では、長嶋茂雄と松井秀喜とドライブを楽しむ道中、長嶋監督から「中居さん大変じゃないのよ、どういうことだね? なんとかして、3人はもう決まったわけ?」と、質問を投げかけられると中居は、笑いながら「はい、3人は、はい……(笑)」。
ロケが行われたのは6月。ちょうど3人の退所が報じられた頃だ。


長嶋監督が続ける。「(中居と木村)2人は一緒に?」。「そうですね、木村とデュエットするわけじゃないですが(笑)」。今度は中居から松井にボールを投げたが、「直接聴かせていただければ一番嬉しいなと思います」松井が打ち返えした。
直球の会話が続いた。東京ドームが見えると、「1988年、SMAPができた年なんですよ」昔から野球とSMAPが大好きな中居くんらしい会話だった。

木村は12月29日放送のラジオ「Wat’s UP SMAP!」(TOKYO FM)で、リスナーから今年の漢字について聞かれると、「“撮”かな撮影の撮、それか現場の“場”。フィールドって意味ですけど、ずっと現場にいたので“場”かな」。
年内最後の放送で、番組のおわりにはSMAPの楽曲「ありがとう」を流した。ごく自然な流れでSMAPの曲を選んでは聴かせてくれる木村。

また、意外?にもFRIDAYの直撃インタビューに応じていた。ドラマの衣装、白いパーカー姿で笑顔を浮かべた写真が掲載されている。

一部で報じられてきた確執に対して、「全然ないですよ」。
3人については、「彼らは(『SMAP』解散を)選択した。でも、敵になったわけじゃないから。彼らの選択を応援してほしいなって思います」(FRIDAY/1月5・15日号)
そうそう、読みたかったのは憶測ではなくこういう取材記事。
木村はラジオで謝罪をして以降、他では沈黙を貫いていた。何かにつけてバッシングを受けることも少なくなかった。明石家さんまと共演した際に「言いたいことあるやろ、編集できるから言うとけ」などと気にかけてくれたそうだが、「自分が現場でやるべきことをやって返していけばいい」と自分に約束したことを語っていた。
このタイミングでインタビューに応じたのは、3人がうまくスタートを切れたことを見届けたからだろうか。

香取に至っては萩本欽一との対談で文藝春秋を訪れている。「週刊文春」に衝撃的なインタビュー記事が掲載されたのは2015年のこと。あれから2年、まさか文春を訪れるとは……。しかも欽ちゃんの計らいつきだ。

「今日は、俺がちゃんと編集の人に言っておいたから。後でまずいところがあったら、ちゃんと削ってね、って」。
一連の騒動の発端とも言われている文春を避けて通ることもできたんじゃないかと思うが、“芸能界の父”と共に笑顔でインタビューに応じた。
「この人と一緒に仕事をしたい」と思える人の存在を明かし、欽ちゃんは喜んだ。「俺は慎吾に「誰かのために」と思える人がちゃんといると聞いて、ホントに嬉しかったんだ。それなら、これからの慎吾の仕事はいいものになるぞ、って思えたから」。

稲垣も「ゴロウ・デラックス」(TBS系)で、作家としてゲスト出演した北野武から、「転機はいっぱいあったほうがいいと思うよ、転機がいろいろあるってことは生きている、進化している証拠」とアドバイスをもらった。「チャンスって思っちゃったほうがいい。また転機がきたっていい」、蚕にたとえて「羽化するまでの段階だと思えば、実に今いいところに来てると思ったほうがいいんじゃない」脱皮と捉えよと芸能界の先輩から言葉を受け取った。
場所が変わっても変わらず一緒に仕事をしたり、温かい言葉をかけてくれたりする人の多さに驚く。

昨年のちょうど今頃はどん底のような気持ちだったものの、2017年、特に後半からは少しずつ本人たちの言葉を聞けるようになってきた。
たとえ銃を手にしたとしても銃口は天井を向き、最後は放り投げてしまう「華麗なる逆襲」のMVのように愛のある戦い方、進み方が彼ららしい。
「ついさっきまでの全てを予兆と呼ぶ」と歌詞にあるように、以前のみたいに歌って踊る姿や、バラエティ番組でわちゃわちゃする姿が見られない寂しさはあるけれど、今後もそれぞれの活躍を通して、“くらくら”するような景色を見せてくれそうで、悲しんでばかりもいられない。
「未開拓な世界つくろう」と歌い、広げた「新しい地図」。SMAPの2018年も楽しみだ。

(柚月裕実)
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