キャッチフレーズは「史上最も美しいシャーロック・ホームズ」。主人公は人並み外れた観察眼と知識を持つ捜査コンサルタント、シャーロック(竹内結子)。なりゆきから同居することになった和都さん(貫地谷しほり)とともに難事件に挑む。シャーロックの行動原理は「目の前にある謎への好奇心」のみだ。ほとんどまばたきをしない竹内の演技がシャーロックのマッドさを強調している。
先週配信された第2話「ひげの幸子像の謎」では、絵画への理不尽な落書き事件と美術商の転落死事件の謎を解く。今週もネタバレなしです。

絵画にひげ! 誰が何のため?
シャーロックのもとへ新たな依頼が持ち込まれる。依頼主はシャーロックが暮らす屋敷「221B」の家主、波多野夫人(伊藤蘭)の友人、舞原鞠子(左時枝)。彼女が夫からプレゼントされた岸田実篤の絵画「幸子像」を美術館に懇願されて貸出したのだが、展示中、謎の男(山根和馬)に油性ペンでひげを落書きされてしまったのだ。男は逃走中に交通事故に遭い、意識不明の重体に陥ってしまう。彼の身元と動機を探ってほしいというのが舞原からの依頼だった。
シャーロックと和都は舞原に「幸子像」の売却を持ちかけた画廊のオーナー・柳沢(名倉右喬)から事情を聞こうとするが、柳沢は自宅マンションの屋上から転落死を遂げていた。シャーロックは警察からの情報をもとに、柳沢に「幸子像」の買い取りを依頼していた絵画コレクター、高倉リゾート開発の高倉社長(木下ほうか)に接触。一方、「幸子像」は絵画修復家の桑畑(児嶋一哉)によって修復作業が進んでいた。
偶然シャーロックの部屋を訪れた鑑定士のミッキー(吉田メタル)から、絵画の贋作を描くのは修復家が多いと聞いた和登は、桑畑に疑いの目を向けるが――。
「感情的なものは、冷静な理性の邪魔をするだけ」
今回のエピソードは、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズの51番目の短編「三破風館」を元にしている。原題は「The Adventure of the Three Gables」だが、「幸子像」を借り受ける美術館の名前が「ゲイブル美術館」だった。ドラマの冒頭、シャーロックがチェロを弾いているが、これはバイオリンの名手だった本家シャーロック・ホームズへのオマージュ。今回の事件の謎とも関連している。
絵画修復家が贋作画家を兼ねるというストーリーは、先だって放送された『コンフィデンスマンJP』の第3話「美術商編」とまったく一緒である。事件の裏側にいるのが「強引な開発」を行うリゾート開発会社の社長というのは第2話「リゾート王編」と一緒。偶然ってすごい。
先クールに放送された『アンナチュラル』との共通点もある。刑事の柴田(中村倫也)は柳沢が借金を抱えていたことから自殺と断定したが、シャーロックはそれをきっぱりと否定してみせる。
また、和登が「幸子像」が描かれる過程の“いい話”を知り、それを舞原の夫が絵をプレゼントした意味に重ねて感動していると、それもあっさり否定する。
「そういう感情的なものは、冷静な理性の邪魔をするだけ」
このシャーロックの言葉は、『アンナチュラル』に登場したUDIの三澄ミコト(石原さとみ)らの遺体の検証に対する態度と非常に似ている。事実と推理を積み重ねた先にあるのは、常識的な結論からかけ離れていることが少なくない。シャーロックはこう言う。
「ある問題からありえない事柄をすべて排除すれば、おのずと真相は見えてくる。それがどんなに突飛な結論でもね」
“食”で紡がれる女性2人のパートナーシップ
第2話の謎解きの裏側で描かれていたのは、シャーロックと相棒・和都のパートナーシップの形成だった。竹内結子がシンガポールで行われた記者会見で「私たちのバディドラマをお楽しみに」と語っていたが、このドラマの主人公はシャーロックと和都の2人ということになる。そして、劇中で2人の距離感を表していたのが“食”だ。
最初、和都はシャーロックにルームシェアのお礼として焼き魚、だし巻き卵、味噌汁、土鍋で炊いたごはんという丁寧な朝食をつくるが、シャーロックは拒絶して淹れたてのコーヒーを1人で楽しむ。その後、捜査の途中に2人で立ち寄った甘味処(コレド室町3の「鶴屋吉信 東京店」)では和都が注文したクリームあんみつを横取りし、シャーロックの居室では波多野から差し入れられた栗カステラを和都が手にする(シャーロックは証拠の検分に夢中で手をつけず)。
ドラマに登場する美味しそうな食べ物は、それを囲んでいる人たちの人間関係を表していることが多い。『ミス・シャーロック』もその一例だろう。
第3話は、製薬会社のヘッドハンティングにまつわる事件の謎にシャーロックと和登が挑む。予告を見るからにヤバそうな事件だ。田中圭も出るよ。本日午前10時配信。
(大山くまお)
●Huluにて配信中