人気の変態キャラクター辺見和雄が登場して、煌めきまくっている8話と9話の「ゴールデンカムイ」。公式もこの人気をよくわかっているようで、辺見の股間がホログラムでキラキラする、煌めきステッカーをプレゼント、というフェアを開催中。よりによって感がすごいけれども、これがゴールデンカムイらしさ。




9話は、2種類の人間の、言葉ではない通じ合いを描いた回だ。
「ゴールデンカムイ」殺人者同士の交歓!たくさん人を殺してきた同士のかわすキラキラ9話
「ゴールデンカムイ」8巻表紙は、スナイパー尾形百之助。アニメ序盤で死にかけた彼が、9話では脅威になる。腹の内の見えなさはトップクラス。

人殺しは人殺しとしかわかりあえない


前半は、金塊のありかのヒントである刺青が入った男であり、息をするように人を殺していくシリアルキラー、辺見との決戦。
もっとも辺見の顔を知っているのは、かつて網走刑務所で一緒だった白石だけなので、主人公の杉元佐一も彼を善良な漁師だと勘違い。
ものすごく優しくかばっていた杉元、彼が辺見だと知った途端、容赦なく脇腹にナイフを何度も突き刺す。

辺見が求めていたのは、杉元のような抗えない力の持ち主。
たくさんの人を殺し続けていたのは、自分を殺してくれる最高の相手を探すため。
自分をわかってくれる人を探す辺見のレーダーは、ドンピシャの相手として杉元を見つけ出した。

辺見「不死身の杉元、さっきそう呼ばれてましたよね。わかる気がします、あなたも輝いて死にたいからこそ戦うんだ」
杉元「俺は死ぬつもりなんてない。絶対にまだ死ねない」
辺見「それですよ! その想いが強い程強く激しく煌くんです」
杉元「わかった。それじゃあとことん一緒に煌こうか」

彼の理屈を義で跳ね返さないのが、杉元というキャラクターの、善良ではない深みを感じさせるところ。
2人に共通するのは、死に抗うために人を殺してきた、という部分だ。
抗う理由が、杉元は生きるためで、辺見は殺されるため、と逆なだけ。

同行している白石は「辺見の頭の中なんて理解したくもねえな」と述べていた。
白石は脱獄を繰り返す極悪犯ではあるが、人を殺したことはない。アイヌの凄腕狩人であるアシリパも同じだ。
言うなれば殺してない2人は「こっち側」で、辺見と杉元は「あっち側」の人間。
白石は、辺見の死体の皮をすぐに剥ぎ取る杉元を見て、彼の感覚に怯える。
「あいつが一番おっかねえ」

辺見の皮を剥ぎ取りながら「お前の煌めき、忘れないぜ」という杉元。
これがどういうことなのか、推測は出来ても、共感するのは難しい。
たくさん人を殺してきた2人だけがわかる感覚。
だから浜辺の一連の殺し合いは、愛をささやきあうかのようにキラキラしているし、第三者からみたら滑稽だ。

引き継がれるアイヌとマタギの魂


後半は、この作品のもう1人の主人公的な活躍を続けている、元マタギで兵士になった谷垣源次郎の話。
アイヌの毒矢罠にかかってしまい、その怪我を治していた谷垣。アシリパの村のフチ(おばあちゃん)とオソマ(子供)が彼の世話をしていた。
ところが彼を追ってきた兵隊の尾形百之助二階堂浩平が、フチらに近づいて来た。
もうここにはいられない。

谷垣は作中人物の中でも、かなり深くアイヌの生活に食い込んでいる人物。治療の件もさることながら、アイヌの人々に対しての感謝と敬意が人一倍強い。
助けてくれたフチと話していて、彼は涙を流している。お互い言葉が全くわからないはずなのに、通じ合えた瞬間だ。

尾形の策で銃を失った谷垣。彼が戦うために手にしたのは、以前共に狩りをした二瓶鉄造の単発銃だ。
一発ずつしか撃てない上に、作りが古くて今の銃弾が使えない。銃の中に残っている一発しか撃てない。

二瓶が使いづらい単発銃を使っていたのは、一発に命をこめて動物と向き合っていたからだ。殺すからには、負けたら喰われる覚悟だ。
狼と命を賭して戦った二瓶の姿を見た谷垣。一瞬に全てをかける生き様に打たれて、彼は兵士からマタギに引き戻される。

この後、谷垣はアイヌの衣装を身にまとい、二瓶の単発銃を担いで、旅をすることになる。

(たまごまご)
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