大手芸能事務所に所属していた男性アイドルグループが独立したものの、かつての事務所による圧力か、仕事を干されてしまう──。

どこかで聞いたような話だが、これはAbemaTVとメ〜テレ(名古屋テレビ)が共同制作するドラマ「星屑リベンジャーズ」のなかでの話である。


新川優愛演じる本作の主人公・楠木春は、知り合いの社長から芸能事務所クリークプロモーションを譲り受けたために全財産を失うが、所属するアイドルグループ「TRANSITION(トランジション)」──速水祐也(塩野瑛久)・泉遼太郎(花沢将人)・前沢太一(内藤秀一郎)・小宮山陸(本田響矢)・結城史人(森永悠希)の5人組──のプロデュースに乗り出す。かつて一世を風靡した彼らだが、所属していた大手芸能事務所・渡長プロダクションに対する不満から独立して以降、渡長側の圧力のためかほとんど活動ができなくなっていた。
新川優愛「業界のルールとかくだらない圧力とか、くそほど興味がないだけです」衝撃「星屑リベンジャーズ」
「星屑リベンジャーズ」で芸能事務所社長を演じる新川優愛は、女優のほかモデルとしても活躍中。今年3月には写真集『Atlas』(画像)を刊行している

新川優愛はくじけない


春は、芸能事務所の社長になる前は、インスタグラムで収入を得ながら派手な生活を送っていた。それが知り合いの社長からクリークプロモーションを「いくらでもビジネスを広げられる」などと言われて譲り受けたところ、直後にその社長が詐欺罪で逮捕されてしまう。しかし契約は正式なもので取り消せず、彼女は全財産を失い、事務所の負債を背負わされるはめに。さらにネット上では自業自得だといったバッシングを受け、クライアントからも契約を解除され、収入口も失った。

クリークプロモーションのオフィスに行くと、スタッフは間野あかり(生駒里奈)一人だけ。所属タレントもほとんどがすでにほかの事務所へ移籍が決まり、唯一残ったのがトランジションだった。

春にはクリークプロモーションを処分するという選択肢もあった。しかし彼女はトランジションの写真を見て、かつて学生時代、いじめられてどん底にいたころ、彼らの歌に励まされたことを思い出す。ここから彼らに賭けようと決意し、プロデュースに乗り出したのだ。

だが、曲を依頼した人気音楽プロデューサーのウチダ(ファンキー加藤)には、無名時代に春から冷たくされたことを根に持たれ、屈辱的な仕打ちを受ける(第1話)。さらに渡長プロダクションにトランジションのメンバーともども呼び出されると、元マネージャーの羽鳥(コトブキツカサ)からメンバーが一人ひとり才能を否定され、社長の渡長(光石研)は春に対し、芸能界から手を引くよう圧力をかけてきた(第2話)。


それでも彼女はくじけない。ウチダに渡した試聴用のトランジションのCDをプールに投げ捨てられても、泳いで取りに行き、いま一度手渡した。また渡長から、君は自分の力を過信しすぎだと言われて、「そんなんじゃありません。ただ単に業界のルールとかくだらない圧力とか、くそほど興味がないだけです」と啖呵を切る。主演の新川優愛は、看護学校の学生を演じた「いつまでも白い羽根」(4〜5月放送、東海テレビ・フジテレビ系)に続き、今回も逆境にめげない芯のしっかりした女性を好演していて頼もしい。

ファンからのメッセージに社長とメンバーが一体に


さて、クリークプロモーションは、シェアオフィスに移って再出発、当面の運営資金として50万円をクラウドファンディングにより募るが、なかなか集まらない。一方、曲をつくるミュージシャンを応募したところ、新谷恭介(清水尚弥)という青年がデモテープを持って現れる。新谷はもともとウチダのアシスタントだったが、彼の名義で代作までさせられることに嫌気が差して、袂を分かち、春のもとへと移ることになった。ちなみに最初にクラウドファンディングで出資したのも新谷だった。

ちなみに春が新谷と初めて会ったとき、彼の目の奥が暗いと感じ、「これがあなたの本当につくりたい曲なんですか?」と訊ねる場面があった。それだけ人を見ぬく眼力がありながら、なぜ知人にそそのかされて芸能事務所など譲り受けてしまったのか、ちょっと不思議ではある。

まあ、そんなことをいうと元も子もないけれど、きっと彼女も痛い目にあって、人を見る目が養われたということだろう。トランジションのメンバーとも、先述のとおり渡長プロダクションに呼び出されたのを機に、一緒に戦いたいとあらためて思った春は、彼らにSNSに集まったファンからの励ましのメッセージを見せる。
メンバーたちはそれによりいまも自分たちを必要としてくれる人たちがいることを知り、春もまた、メッセージから彼らおのおのの魅力を把握した。こうして彼女とメンバーはともに再起を誓うのだった。

現実の芸能界のできごとを想起させる描写


メ〜テレで今夜放送の第3話(深夜1時25分〜)では、「17ライブ」というライブ配信アプリの公式契約を得るため、アプリの運営会社の社長・牧野(淵上泰史)の発案で、渡長プロダクションとのあいだでタレント同士が生配信を行ない、どちらが多くリスナーの支持を得ることができるか競い合うことになった。そこへ来てトランジションのセンターの祐也が、養成所時代の同期の古家(柳俊太郎)という男に脅される。古家は、暴力事件により芸能界を引退していたが、じつはその事件は、元はといえば祐也に原因があった……。はたして祐也はこの危機をどう切り抜けるのか。

それにしても、独立したタレントに対する元事務所からの圧力といい、ネットでの生配信により世間の支持を集めようとする手法といい、このドラマでは、あれがモデルかと勘繰ってしまうような話が次々と出てくる。そもそも5人の男性アイドルを世に出すべく、女性プロデューサーが奔走するさまからして、一昨年末に解散したあのグループを思い出さずにはいられない。ドラマの制作元の一つであるAbemaTVは、昨年、そのグループの解散後、事務所から独立した3人を起用して長時間の生配信を行なっているだけに、よけいにそう思ってしまう。

おそらく、制作側もそう見られることは織り込み済みなのではないか。現実の芸能界でモヤモヤとさせられるできごとが多い昨今、せめてドラマのなかでも、「業界のルールとかくだらない圧力」なんかに屈しないアイドルグループの逆転劇を見せてやろうという思惑も、きっとあるに違いない。そう考えるにつけ、このドラマは、東京のキー局ではなく、インターネットテレビ局のAbemaTVと地方局のメ〜テレだからこそ可能だったともいえそうだ。
欲をいえば、芸能人が独立するたびに持ち上がる芸名の問題にからめて、トランジションというグループ名を前の事務所が使用を禁じるなんてエピソードも入れてほしかったところだが。

なお、AbemaTVで今夜先行配信される第4話(夜11時〜)では、牧野と春に熱愛騒動が持ち上がり、またしても春がバッシングを受けるという。これまた現実にもありそうな展開だが、「星屑リベンジャーズ」は、はたして世にはびこる理不尽に一矢報いることができるのだろうか。
(近藤正高)

【作品データ】
「星屑リベンジャーズ」
脚本: 山岡潤平、仁志光佑、三浦希紗
監督: 岩田和行、菊川誠
プロデューサー: 神通勉(AbemaTV)、たちばなやすひと(AbemaTV)、太田雅人、大池雅光(メーテレ)、高田良平(共同テレビ)
制作プロダクション: 共同テレビジョン
製作著作: AbemaTV・メーテレ
※各話はAbemaビデオにて配信中
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