テレ東の贈るビジネスドラマ枠「ドラマBiz」第2弾『ラストチャンス 再生請負人』(テレビ東京・月曜22:00〜)最終回。

十和子フード、伊坂商事との資本業務提携が決まり、ほっとしていた樫村(仲村トオル)。


しかし、100億以上の含み損を「週刊文潮」にすっぱ抜かれ、「デリシャス・フード」の株価は急落してしまう。

リークしたのは「伊坂商事」の小沢常務(竜雷太)。株価を急落させ、資本業務提携するよりも安上がりに「デリシャス・フード」を買収しようと考えていたのだ。

この窮地を切り抜けるため、樫村が考えた手段は「カタヒラ食品」に「新潟屋」を売却すること。

……今さら!?
最終回「ラストチャンス 再生請負人」仲村トオルよ、たまたまできただけだから調子に乗らない方がいいよ
イラストと文/北村ヂン

樫村さん、人を見る目がないよ


そもそも以前、「カタヒラ食品」が「新潟屋」を買いたいと言ってきた時に、話をつぶしたのは樫村自身だ。

「店を単なる商品と考える経営者に大事な新潟屋を任せるわけにはいきません。そんなことをしては現場で懸命に働いている従業員たちに申し訳が立たない!」

とかなんとか言ってたはずだけど、従業員たちに申し訳が立つようになったの? いいの!?

今回の再建案の中核となっている「社員が中心となっての会社分割」というアイデアも、もともとは創業オーナーである結城(池田成志)が提案してきたもの。その時も樫村は、ブチ切れて話を断っていた。

しかしその後、結城の打つそばを食べて「飲食業を愛している人だ!」とか思い、「カタヒラ食品」の片平社長が焼く餃子を食ったら「この人に、新潟屋を大事に育てて欲しい!」なーんて思い直していた。

小沢常務にはまんまと騙され、アヤシイ占い師をいちいち信用し……樫村さん、人を見る目があんまりないよね!?

そういえば、樫村が銀行を辞める原因ともなった、ITベンチャーに勤める先輩も、だいぶアヤシかったのにすっかり信用しちゃってたもんね。

このドラマでは、「いい人かと思いきや裏がありました〜……と思ったら!」みたいな、どんでん返しパターンが多く、樫村と一緒になって視聴者も翻弄され、若干食傷ぎみだったのだが、前社長の大友(本田博太郎)だけは最初っから最後まで一貫してクズだった。

最終回には出てきもしなかったし……(残念!)。

人を見る目のない樫村でも、ひと目で分かるクソ野郎だったということか。


現場の従業員たちが会社を救った!


「カタヒラ食品」に「新潟屋」を買ってもらう計画は、既にライバルチェーンを買う話が進んでいるということで断られてしまう。

だったら「新潟屋」の価値を高めることによって考え直してもらおうと、以前、出ていた香港企業と組んで海外進出する話を進めようとするが、「本社が傾いているブランドはイメージが悪い」と交渉は決裂。

どちらも、もっと早く決断していれば……。

樫村が頼みにしているアヤシイ占い屋は「臨時休業」(頼ろうとするなよ!)。

思わず線路に飛び込みそうになる樫村だったが、そこに山本から連絡が。

香港企業の社長・ウォンさんを直接「新潟屋」に連れて行ったところ、新メニューや接客態度をいたく気に入り、アジア圏でのフランチャイズ権を買うことを了承してくれたのだ。

本社がひどい状態にある中でも、実直にがんばってきた現場の従業員たちの働きが認められ、会社を救ったのだ。

……でも、その「新潟屋」も売られちゃうんだよな。

これによって「カタヒラ食品」「十和子フード」との資本業務提携が決まり、「伊坂商事」の敵対的買収から「デリシャス・フード」を守ることに成功した。

しかし、ラスボスである小沢常務が、樫村たちの買収防衛策を妨害するでもなく、すんなり手を引いてしまったのは若干物足りなかった。

一応、「お・み・ご・と・で・し・た」と悔しそうに電話をしてきたが、竜雷太も、本田博太郎級の顔芸を見せて欲しかった!

その代わりというわけじゃないだろうけど、銀行のふたりが「土下座→再び上から目線→再び土下座」となっていたのには笑ったが。

来期は唐沢寿明主演


基本的にはストレートなビジネス・ドラマである本作に、「スピリチュアル要素」という奇妙な味付けをしてきた占い師は、「臨時休業」したまま忽然と姿を消し、最終回には登場せずじまいだった。

これまで散々降りかかってきた「人生の七味とうがらし」から、樫村が解放されたということか。


会社の再建が終わったからって、何も社長を退任しなくても……とは思ったものの、それこそが「誠意大将軍」樫村だろう。

最後は、香港のファンド会社社長となった山本から再び会社再建の依頼が入り「再生請負人」誕生。

シリーズ化しようと思えば続編もいけまっせ的な含みを持たせて終わった。

テレビ朝日における、医療ドラマ、刑事ドラマのように、テレビ東京もこの「ドラマBiz」枠で長期シリーズのビジネスドラマを狙っているんじゃないかと予想するが、どうなるか?

ただ、「デリシャス・フード」の再建は他人頼りと運まかせな部分が強かったから、調子に乗って「再生請負人だぜ!」なんて思わない方がいいよ、樫村っさんっ。

さて、来期の「ドラマBiz」は唐沢寿明主演の『ハラスメントゲーム』。

会社内で起こる様々な「ハラスメント」事案を次々に解決していくとのこと。

それにしても唐沢寿明主演とは、テレ東が「ドラマBiz」にどれだけ力を入れているか分かるというもの。

テレ東は深夜ドラマだけじゃなく、ビジネスドラマも面白いということが、もっと広まって欲しい!
(イラストと文/北村ヂン)

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『ラストチャンス 再生請負人』(テレビ東京)
原作:江上剛『ラストチャンス 再生請負人』(講談社文庫刊)
脚本:前川洋一
演出:本橋圭太
主題歌: 村松崇継「Starting over」(Climbing Records)
音楽 - 村松崇継
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:川村庄子(テレビ東京)、松野千鶴子(アズバーズ)、木川康利(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
製作著作:テレビ東京
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