
「フレッシュで美しい」もセクハラか……
新規オープン直前の「マルオースーパー」品川インターナショナル店のパートたち18名が突然辞めると言い出した。
コンプライアンス室の秋津渉(唐沢寿明)、高村真琴(広瀬アリス)がパートの大竹満寿子(余貴美子)たちから話を聞いたところ、原因は社長・丸尾隆文(滝藤賢一)のセクハラだという。
丸尾社長が広報のインタビュー収録で答えた、
「品川インターナショナル店では、これまでのイメージを一新するために、フレッシュで美しいコンシェルジュをご案内役に置きました」
「生活に疲れたようなパートのおばさんが、おにぎりなんか売っているのを見るとがっかりするんだよ」
という発言。
実際の映像ではカットされ、外部には漏れていないはずなのだが、何者かが大竹にリークし、パート一揆を起こすようそそのかしたのだ。
前回のテーマ「パワハラ」に続いて、ハラスメント業界におけるメジャーどころ「セクハラ」が今回のテーマ。
「セクハラ」が取り沙汰されはじめた80年代後半頃は、尻を触ったの何だとのといった、直接的なエロ〜いいやがらせというイメージが強かったが、いまやその適用範囲はかなり幅広くなっている。
コンシェルジュのことを「フレッシュで美しい」と表現するのなんて、悪気なくやっちゃいそうだ。怒る側の気持ちも分かるけど、コレで「セクハラだ!」と糾弾されちゃうのはちょっとツライ。
秋津の言うように「えらい時代だなぁ〜」という感じだ。
もちろん「生活に疲れたようなパートのおばさんが……」あたりの発言は思いっきりアウトだし、パートから「原因はセクハラです」という訴えを聞き、「まっさかぁ〜」と吹き出していた品川店店長もアウトだろう。
ちょっと前に、財務省次官のセクハラ疑惑に抗議した野党の女性議員たちに対して「セクハラとは縁遠い方々」とツイートしてた某議員がいたけど、アレを思い出させる脇の甘さだ。
今日は被害者、明日は加害者
意図せずハラスメント加害者になってしまうのは「セクハラ」だけではない。
「セクハラ」を訴え、パート一揆を煽動していた大竹も、「フレッシュで美しい」コンシェルジュたちからは、口うるさく世話を焼く「世話ハラ」だと思われていた。
パート仲間たちも、大竹からの「一緒に辞めろ」プレッシャーを「パワハラ」と感じていたという。
「今日は被害者、明日は加害者。
オープニングのナレーションそのものだ。
秋津は、大竹と他のパートたちとを分断し、大竹のみをクビにすることで事態を収束させようとする(リークした人をあぶり出すための罠だったのだが)。
「こういう時にパワハラやセクハラは便利ですねぇ。辞めてもらう大義名分になる。ハラスメント様様だ」
冗談めかしてはいるが、この発言からは秋津の「ハラスメント問題」に対するスタンスがにじみ出ている。
「ハラスメント」によって理不尽な目に遭っている人を助けたいという熱い気持ちもありつつ、理不尽に「ハラスメント」の加害者にされてしまう可能性も理解しており、何でもかんでも「ハラスメント」として断罪することには懐疑的な面もある。
この辺は、秋津自身がハラスメント疑惑で理不尽に処分された過去を持っていることが大きく影響しているのだろう。
そう考えると、秋津が部下の真琴に対して、ちょいちょいセクハラめいた発言をしているのにも、なにか意図があるんじゃないかと勘ぐってしまうが……。ただ単に軽いだけか?
いい話でまとめすぎだよ!
大竹に社長のセクハラ発言をリークしたのは、丸尾社長と対立する常務・脇田治夫(高嶋政宏)派閥の水谷逸郎(佐野史郎)だった。
新しいお惣菜のアイデアをいくら提案しても若い店長から相手にされず、落ち込んでいた大竹の相談に乗りつつ、偶然を装って社長のセクハラ発言映像を見せたのだ。
……トイレに行くふりをして、その場に置き忘れたスマホで映像を再生するって、さすがにわざとらし過ぎるだろうとは思ったけど。
そんな水谷の露骨な策略に乗っかってパート一揆を起こした大竹だったが、その原動力となったのはスーパーへの愛。
「お店ばっかりキレイにしても、お客さんの前に立つパートを大事にしないスーパーはこんな時代に生き残れない」
セクハラを断罪したかったわけではなく、このことを社長に伝えたかったのだという。
大竹だけがクビになると知って、仕切りたがりな大竹を煙たがっていたパートのおばちゃんたちが突然、
「それでも仕切ってくれる人にはいて欲しいんです」
とか言い出したり、
「あーっ、うるさ! そういうの世話ハラっていうんだけどな」
とまで言っていたコンシェルジュたちまで、
「私たちも他の人が来るより大竹さんの方がいいです。うるさかったけど、何を聞いても教えてくれました」
なーんて言い出したのには、さすがにベタ過ぎるだろとずっこけたけど。
怖くてウザイ仕切りたがりおばさん状態から、スーパー愛を告白して泣き崩れる姿までを演じ分ける余貴美子の演技に圧倒されたものの、ここまでいい話でまとめなくても……。
誰も処分しないのがポリシー?
今回もセクハラ、世話ハラ、パワハラ、リスハラ(リストラ・ハラスメント)など、様々なハラスメントが登場したが、結局誰も処分されなかった。
すべての元凶となった社長はもちろん、大竹の世話ハラ&パワハラも、そしてパート一揆をたきつけた水谷も処分ナシ。
そういえば前回の店長&売り場主任も、何だかんだで処分されていない。
その辺が、見ていていまいちスカッとしない部分でもあるのだが、「ハラスメント問題は解決しつつも、個人は処分しない」というのが秋津のポリシーなのかもしれない。
そんな、ハートフルな一面もある秋津だが、丸尾社長と対立し、秋津自身とも過去に大きな因縁のある脇田にだけは「処分ナシ」というわけにはいかないだろう。
最終回あたりで脇田をガッツリへこませて、スカッとさせてもらいたいところだ。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
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『ハラスメントゲーム』(テレビ東京)
原作:井上由美子『ハラスメントゲーム』(河出書房新社刊)
脚本:井上由美子
演出:西浦正記、関野宗紀、楢木野礼
主題歌:コブクロ「風をみつめて」(ワーナーミュージック・ジャパン)
音楽:エバン・コール
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:田淵俊彦(テレビ東京)、山鹿達也(テレビ東京)、田辺勇人(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作協力:フジクリエイティブコーポレーション
製作著作:テレビ東京