第7週「私がなんとかします!」 第40回 11月15日(木)放送より
脚本:福田 靖 
演出:安達もじり
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功、瀬戸康史ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎
「まんぷく」40話「世良の搾取は吉本と同じ」華丸大吉ブラックジョーク炸裂
イラストと文/木俣冬

40話のあらすじ


精魂込めて作り上げた塩を、再び、世良(桐谷健太)が売りに行く。結果、最上級と認められたものの、世良に大量に中抜きされていることを萬平(長谷川博己)は気づいていなかった。

忠彦さんが倒れた!


39話の流れで、寿司屋で修業していた赤津裕次郎(永沼伊久也)が鈴(松坂慶子)の部下として家事をやらされている場面からはじまる。
どうやら休めてないらしい。

週末はタカちゃん(岸井ゆきの)が来ると思ったら、来られなくなって、赤津はさらに働かされそうな予感……。
この、なにげない、休みなく働かされている発言が40話では重要になって来るから要チェックだ。

タカちゃんが泣きながらもう行けないかもしれないと電話してきたことを心配した福子(安藤サクラ)は香田家に出向く。世良のジープに乗せてもらって。

香田家では忠彦(要潤)が倒れていた。戦争から帰って来てからというもの、忠彦は根を詰めて絵を描いていたため体に負担がかかったのだ。

「今しか描かれへんのや」と切迫感を出す忠彦。戦争で色弱になってしまったから、いつ目が見えなくなるかわからない恐怖を感じているのかもしれないし、そこまででなくてもいつ描けなくなるかもしれないトラウマにとらわれているのかもしれない。忠彦は戦争で人生が大きく変わってしまった人の代表だ。

騙す人、騙される人


戦争のせいなのかわからないが、世良は悪どく生き抜こうとしている。
またしても、塩を売りに行って、半分だけ専売局で満額、半分を闇市で売ってボロ儲け。
何も知らない萬平は、かます20個、全部最上級と評価され、4000円、満額支給されたと思い込んでいる。
のんきである。

福子も、タカちゃんの家に行くため、車で送り迎えしてもらいながら、ついでに専売局に立ち会うこともしないし、相変わらず証書をちゃんと確認もしない。

騙し騙されの駆け引きの面白さが最近のエンタメの潮流で、映画化も決定している「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太)が信用詐欺のドラマで、仲間内でも騙し騙され、誰がたくさんお金を巻き上げるか合戦が楽しく描かれていた。
でもそれは、元々あぶく銭だからいいのであって、悪いことをして儲けたお金を使った遊びのようなもの。古今東西からある泥棒の物語も義賊だから愛される。
ところが世良はそうではない。
真面目に汗水たらして働いている萬平、戦争で食うに困っている若者たちの労働の成果を搾取しているのだから、爽快感はひとつもない。
爽快ではないが、こういう人も実際にいる。そして、萬平、福子のような騙されやすい人も。

福田靖はつくづくリアリストなんだなと思う。
これまでも「まんぷく」で彼は例えば、幽霊をファンタジーとしてではなく、見る人の願望として描いた。
今回の世良のことも、世間でよくある労働者からの搾取である。間に入って中抜きする仕事はあるわけで、
「あさイチ」で華丸大吉が所属する吉本興業がそうだと笑い話にしていた。
ほんとのところは知らないが吉本は芸人の売上からマネージメント料をたくさんもっていくネタは、せちがらい世の中のわかりやすい例になっている。
萬平のようにいいものをつくることに夢中になっている人から搾取していく人がいる。
その萬平だって、赤津を鈴の下で休みなく働かせているし、ほかの若者も労働待遇に不満を持っている。
会社なんて作ったことないから、萬平も福子も世の中の仕組みがわからない。

余談だが、萬平のモデルの安藤百福は、故郷・台湾にも奥さんがいたらしいし、福子のモデルの仁子と結婚することで日本国籍を得たそうで、それだって生きるための知恵であろう。きれいごとだけでは生きられないのだ、哀しいけれど。

ドラマでは、純粋の極致のように描かれている萬平と福子が厳しい世間とどう立ち向かって、世の中のためになるものを作り出すのかってことを面白おかしく噛み砕いて描いていくドラマが「まんぷく」なのかなと思う。
世良の描き方もどこかで救いが欲しいところだ。

以前、レビューで世良の生き方は「真田丸」の真田昌幸(草刈正雄)ようだと書いたことがある。戦国武将は生き残るために寝返ることは仕方なかったようなので、世良はその時代のメンタリティなんだと思えば少しだけ気が楽になる。

手ぬぐいの似合う女


福子は手ぬぐいを肩にかけていることが多い。主に家事をしているとき。これがとても生活感が出ていい。

しかも、手ぬぐいをとったりかけたり、それでふいたりすると、動きにアクセントがつく。
ともするとぼーっと立ってるだけになりがちなホームドラマ。家事の動作も俯いて手を動かずことに終始しがちだし、手を動かしながらしゃべるのはなかなか難しく、家事に慣れてない俳優だと手がおろそかになる。
それが手ぬぐいによって手を上に動かすことができるうえ、これなら慣れてないとか関係ない。しかも、素朴な雰囲気が出る。まったくすばらしい小道具だ。手ぬぐい万歳。

ちなみに、公式グッズに「まんぷく」手ぬぐいがあるので、これを肩にかけて生活者福子ごっこするのも良し。
白地にまんぷくロゴがどどーんとプリントされている。ただ、注染じゃないのは残念。
(イラストと文/木俣冬)
「まんぷく」40話「世良の搾取は吉本と同じ」華丸大吉ブラックジョーク炸裂
「まんぷく」手ぬぐい

連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝夕、本放送も再放送も オールBK制作朝ドラ


「べっぴんさん」 BS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。 
「まんぷく」と同じく安達もじり演出週。
栄輔がすみれとさくらに急接近。
40話

「あさが来た」 月〜金 総合夕方4時20分〜2話ずつ再放送
相撲でおやすみ
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