ハラスメントって結局相手次第なんでしょ!?
広報課課長・結城三郎(矢嶋智人)が主催する課内の飲み会で問題が発生した。
バーベキューの最中、女性社員・関根かすみ(岡本玲)が突然泣き出してしまい、その後、出社していないというのだ。
原因は「アルコール・ハラスメント」。
結城主催の飲み会が頻繁に開かれている上、バーベキューの準備など、なにかと手伝わされているのが耐えられなかったという。
確かに2週間に1回の居酒屋・焼肉はまだしも、月に1回のバーベキューはやり過ぎだとは思うが……。
コンプライアンス室室長・秋津渉(唐沢寿明)が聞き取りを行ったところ、「課内の懇親を深めるため」というのは建前で、本当は関根と親しくなりたいがために、ちょくちょく飲み会を開いていたのだということが発覚する。
今回の案件は「アルハラ」ということになっているが、実質、「恋しているだけなのにハラスメント扱いされちゃった」問題だ。
様々なハラスメント問題に取り組みつつも、何でもかんでも「ハラスメントだ!」と言われがちな昨今の風潮に対しては疑問を投げかけてきた本作。やはり、この問題は避けて通れないところだろう。
結局のところハラスメント問題の多くは、行為自体というよりは、相手が誰なのかによるところも多い。
イケメンがやっていれば小粋な恋の駆け引きになっても、恋愛の対象外が相手だったら好意&善意100%でやったことだとしてもハラスメントになりかねない。
『101回目のプロポーズ』の武田鉄矢なんて、今だったら確実に色んなハラスメント扱いされていたことだろう。
「僕にはすごい楽しそうに手伝ってくれているように見えていたし。泣くほどイヤだったなんて……」
という結城の言葉が悲しすぎる。
恋する上での勘違いまでハラスメント扱いされちゃったら、もうどうやって恋愛したらいいのか分からないよ!

変な駆け引きをせず、直球で告白
様々なハラスメント問題を解決してきたコンプライアンス室も、今回の案件に関してはほとんどやることなし。
好意を抱いていた関根からアルハラで訴えられ、心がポッキリと折れた結城は「もう二度と飲み会なんて開きませんから!」と言っているのだから、もはやアルハラもクソもないだろう。
コンプライアンスとハラスメントにがんじがらめにされ、身動きが取れなくなった結城の恋心を成仏させるため、秋津は告白するシチュエーションをセッティングしてあげることにする。
ここからの結末は、告白して玉砕、告白したら意外にもオッケーという2パターン考えられるところだが、今回は玉砕にもほどがある玉砕っぷりだった。
関根には彼氏アリ。しかも相手は同じ課内の部下!(中途半端なイケメン!)
結城の気持ちにはとっくに気付いていたのだが、「彼氏が嫌がらせをされたら困るから」という理由から、笑顔で手伝いをしていたというのだから悲しすぎる。
八嶋智人と岡本玲というキャスティングも絶妙だ。
恋愛のメインターゲットではないものの、アウトというわけでもなさそうな年齢差(八嶋智人は41才という設定)。自信満々にはなれないけれど、「あわよくば……」くらいの期待感は持てそうなルックス。
日本中で同じような上司部下の関係による色恋沙汰が起きて、カップル成立したり、ハラスメント認定されたりしているんだろうなぁ。
結城の「変な駆け引きをせず、直球で告白する」というのは、コンプライアンスが厳しく、ハラスメントと背中合わせの「上司部下」による恋愛に対する、ひとつの解決法と言えるだろう(玉砕したとしても)。
「会社が潰れてもいい」という社長のプライド
今回の案件の裏にも、丸尾社長(滝藤賢一) VS 脇田常務(高嶋政宏)の権力闘争が蠢いていた。
そもそも関根は、男としてはともかく、上司としての結城には嫌悪感を抱いてはおらず、アルハラとして訴えることまでは考えていなかったのだ。
それをそそのかしたのが、脇田派閥の取締役・水谷(佐野史郎)だ。
今回の案件に巻き込むことによって、秋津が社長から何を頼まれているのか探ろうとしていたのだ。
「こう見えて私は策士ですよ、秋津ごときに見抜かれる罠は仕掛けません」
と自信満々だった水谷だが、逆にこのことを知った秋津に罠からはめられ、暴言を吐かされることに。
この暴言を理由に、秋津から「パワハラ」として訴えられることになる。
丸尾社長と脇田常務が対立している理由も明らかになってきた。
脇田常務は、ネットスーパーやコンビニに押されて低迷しているスーパー業界を憂えており、
「(丸尾)社長はその不安に耐えられる方ではありません。社員2500人に影響が出なければいいのですが」
と考えているようだ。一方、丸尾社長の考えは、
「マルオースーパーは祖父の代から丸尾家が切り盛りしてきた。追い出されるくらいなら、私は会社が潰れてもいいと思っている。笑うなら笑え、それが創業家のプライドだ」
……なかなかクソなプライド!
脇田派閥の水谷をパワハラで訴えることによって、秋津も本格的にこの権力闘争に巻き込まれていくことになるが、本当にこの社長についていっていいのか!?
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
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『ハラスメントゲーム』(テレビ東京)
原作:井上由美子『ハラスメントゲーム』(河出書房新社刊)
脚本:井上由美子
演出:西浦正記、関野宗紀、楢木野礼
主題歌:コブクロ「風をみつめて」(ワーナーミュージック・ジャパン)
音楽:エバン・コール
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:田淵俊彦(テレビ東京)、山鹿達也(テレビ東京)、田辺勇人(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作協力:フジクリエイティブコーポレーション
製作著作:テレビ東京