
新人刑事が主役なのだから、ストーリーの主軸に“成長”が据えられるのは必然。
皇子山も斑目を通じて煙鴉に育てられている
斑目勉(中島健人)の師匠とも言える煙鴉(遠藤憲一)の出番が、6話はかなり少なかった。
ルーキーである斑目と小平美希(石橋杏奈)は、“無錠の空き”と呼ばれる窃盗犯・鳥飼和子(余貴美子)に簡単に心を許してしまう。それどころか、取調べ中に和子に悩みを相談する2人。刑事と犯人の間にあるべき壁がなく、社会人としての手ほどきまで受けてしまった。そして、情が移る。
「だって和子さん、どう見ても本物の窃盗犯らしくないでしょう」(斑目)
例によって、皇子山隆俊(中村倫也)や宝塚瑤子(江口のりこ)ら13係の先輩たちは新人に説教だ。
「犯罪者は親しくなった刑事を取り込もうとする。一線を越えてくる! 取り込まれたら終わりなんだよ」(皇子山)
「優しいなあ、お前ら! 自分に。自分がええ人に思われたい。だから、人に優しくする。それだけや。そんなもん、本物の優しさちゃう」(瑤子)
斑目も言い返そうとするのだが……
「犯罪者を敵視しすぎじゃないんですか? ほら、北風と太陽っていう話もあるんだし」(斑目)
結果的に、和子は窃盗犯ではなかった。
斑目と美希の直感は当たっていた。犯罪者にも容易に心を開いてしまう2人の弱さは、真実を見抜く慧眼として作用した。煙鴉と出会って以降、被疑者の心情を察する能力を斑目は伸ばし続けている。
そんな斑目を見て、プライドの高い皇子山にも心情の変化が起こる。
「北風と太陽か……」(皇子山)
斑目だけでなく、煙鴉との出会いで皇子山も成長している。煙鴉に「何も見えてないんだなあ。もう一度、ドロ刑勉強し直したほうがいいよ」と言われた日を忘れられない。当初は三課の仕事にやる気を見出せずにいた元エリートも、今では「随分やる気ですねえ、最近」と斑目に気付かれるほどだ。
皇子山と瑤子は捜査慣れしているが、真相究明にたどり着けない。
つまり、斑目だけでなく13係が成長している。育てているのは煙鴉。今回の事件は、煙鴉のアシスト無しに4人が一丸となって真相究明に辿り着いた初めてのケースだ。
中島健人は“アホ太郎”のふりをしている?
斑目の漫画的なキャラクターには、今まで賛否があった。そんな、彼特有のぶりっ子な振る舞いが明らかに減少している。コメディドラマがおちゃらけを抑え、シリアスが増すと、ドラマが佳境に入ったのだと実感する。6話は、まさにそれだった。
実は、煙鴉は13係全体に期待している。
斑目 なんでそんな心配してくれるんですか、みんなのことまで?
煙鴉 ちゃんとしてもらわなきゃ困るからだよ、お前らには。
斑目の成長を実感した煙鴉の顔は、どこか寂しげだ。そして、「GOOD BYE」の書き置きを残して姿を消した。自分の助けが必要なくなった斑目だから距離を置くということ?
13係にちゃんとしてほしいと願う煙鴉。やはり、「自分を捕まえてほしい」と願っている気がしてならない。だから、斑目も皇子山も育てた。
「GOOD BYE」の書き置きを見たときの、斑目の表情。戸惑うでも落ち込むでもなく、すでに覚悟しているかのようにさえ見えた。勘が鋭い。煙鴉が見込んだだけはある。
このドラマの今後の見どころは2つ。
・成長した斑目vs煙鴉の師弟対決
・イマドキっ子を装う斑目が隠している能力をいつ全開にするのか
誰も見破れない煙鴉の正体をあっさり見抜き、なんだかんだ13係で最も手柄を挙げてきた斑目。“アホ太郎”は仮の姿だと思う。
(寺西ジャジューカ)
『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』
原作:福田秀「ドロ刑」(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
脚本:林宏司
主題歌:Sexy Zone e「カラクリだらけのテンダネス」(ポニーキャニオン)
音楽:木村秀彬
演出:大谷太郎、中島悟、高橋朋広
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:能勢荘志、次屋尚、関川友理
制作協力:The icon
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中