『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)の第7話が3月2日に放送された。

「青梅のカサノバ」と呼ばれる資産家の若妻に夫殺害容疑が掛けられたのが今回の内容。
「紀州のドン・ファン」を意識していることは言うまでもない。
「イノセンス」嘘をついていた依頼人に苦悩する坂口健太郎、冤罪ではない場合冤罪弁護士はどうすべきか7話
ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」 オリジナル・サウンドトラック/バップ

依頼人の罪を立証してしまう拓


資産家の乗鞍権三郎(団時朗)が練炭による一酸化炭素中毒で亡くなった事件。殺人を疑われているのは、年の離れた若妻の満里奈(川島海荷)だ。この時、満里奈自身も中毒症状で病院に搬送されている。

満里奈の弁護を担当するのは、黒川拓(坂口健太郎)。彼は裁判を優位に進め、勝訴さえ見えかけていた。しかし、検察側の主張を潰しているだけで満里奈による殺人の可能性が残されていることに拓自身が気付いてしまう。

例によって科学者・秋保恭一郎(藤木直人)と共に、拓は立証実験を行った。練炭による一酸化炭素の室内の充満を検証したのだ。その結果……
「これは周到に準備された計画的な殺人だ」(秋保)
本来は弁護すべき被告人の殺人を、拓は立証してしまった。

かつて、投資詐欺で倒産し練炭で無理心中を図った一家がいた。満里奈はその家族だった。しかも、その投資詐欺には乗鞍が関わっていた。
生き残った満里奈は、両親を死に追いやり弟に脳障害を負わせた乗鞍に結婚前から恨みを持っていた。

被告人が嘘をついていた場合、弁護人としてどうする?


事件の謎解きより、弁護士として拓がどのように理念を確立させるか、こそがこのドラマの本筋だ。今回は依頼人・満里奈の嘘が明らかになった。真実を塗りつぶしてまで、拓は依頼人を無実へ導こうとするのか?

事務所の所長・別府長治(杉本哲太)は「被告人に嘘をつかれることも、結果に救いがないことも刑事弁護には付いて回ること」と拓にアドバイスをした。

父であり最高検察庁・次長検事である真(草刈正雄)は拓を呼び出し、被告人が嘘をついていても弁護士なら無罪を主張するべきではないか? と迫った。
「それができないなら、そのバッジは外したほうがいい。『本当のことが知りたい』という動機で成り立つ弁護活動などない」(真)
「被告人が嘘をついていた場合、弁護人としてどうする?」と問われ、拓は答えに窮してしまっている。

結局、彼は“本当のこと”を取った。「私を無罪にするために戦え!」と強硬な満里奈と衝突し、「情状弁護に切り替える」と主張したのだ。
「僕は満里奈さんに救われてほしい! 弁護士の仕事は、確かに依頼人の利益を守ることだ。でも、犯した罪から目を背けて逃げ切ることは……本当に満里奈さんの利益になるんですか?」(拓)
満里奈は拓を弁護人から解任した。

後日、満里奈の弟の容態が急変し、他界した。拓の「救いたい」という呼び掛けを無下にした満里奈には、守るべき弟がいなくなった。
罪を背負って生きる理由がなくなった彼女は法廷で罪を告白し、改めて拓に弁護を依頼した。

弁護士としての理念をまだ確立していない拓


黒川は弁護士としてまだ理念を確立していない。“本当のこと”の追求にぶれが生じることもある。

 弁護士として僕がやったことが正しかったのかどうか……。
和倉 正しかったかどうかわからないってことは、正しかったかもしれないってことじゃないですか?

「弁護士に向いてないのかもしれない」と思い悩んでいる中、この言葉は大きい。理論として的を射ているし、心の支えに成り得る絶妙な一言だ。

2話辺りまではうるさくて仕方なかった和倉楓(川口春奈)。拓の邪魔ばかりする目障りな存在だった。でも、今は他の誰よりも理解者。弁護活動のパートナーというより、拓が理念を確立するまでの重要サポーターとして欠かせない同僚だ。

このドラマは、拓が弁護士としての理念を確立させる姿こそが本筋である。彼の葛藤は、弁護士の存在意義をそのまま問うている。
地味な回もあるが、この作品が持つ意義は決して少なくない。
(寺西ジャジューカ)

『イノセンス 冤罪弁護士』
脚本:古家和尚
音楽:UTAMARO Movement
音楽プロデュース:岩代太郎
主題歌:King Gnu「白日」(アリオラジャパン)
参考資料:「冤罪弁護士」今村核(旬報社)
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:荻野哲弘、尾上貴洋、本多繁勝(AXON)
演出:南雲聖一、丸谷俊平
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中
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