柏木「中瀬の次女は、金を取れんでもええ思うとる」
小夜子「はあ? なんで?」
柏木「金より、お前をおとしめたいからや」

3月5日(火)放送のドラマ『後妻業』(フジテレビ系)第7話。原作は黒川博行の同名小説だ。


朋美(木村多江)と本多(伊原剛志)は、小夜子(木村佳乃)と柏木(高橋克典)を追い詰めて遺産を取り戻すために「裁判」「記者会見」などを武器に強く出てくる。小夜子と柏木は、それを阻止するために何か手を打つことを迫られていた。

小夜子には見せてしまう朋美の感情的な姿


小夜子「なんやの、突然呼び出して。彼氏とのデート見せつけよう言うわけえ? あっつい、あっつい!」

恒例の小夜子と朋美の口喧嘩が、今回は2回。一回戦は、朋美と本多が小夜子を喫茶店に呼び出した。朋美たちは小夜子が笹島を殺したと思っている。耕造の遺産を朋美たちに分配しなければ、司法書士を連れて笹島の家に向かう小夜子の写真をもって記者会見をするという。
「後妻業」ヨリ目でベロ出す木村佳乃、口汚く罵る木村多江、ダブル木村のケンカがドラマの見どころ7話
イラスト/まつもとりえこ

ことの重大さがはっきりとはわからない小夜子は、島津ゆたかの不倫ソング『ホテル』(1984)を歌って朋美と本多をからかう。小夜子の背中には金色のビリケンさん、マイクに見立てて手に持つのは金色の通天閣。昼からビール中ジョッキ、ヒョウ柄スカートの小夜子。大阪の圧が強い。

朋美は、青いジャケットに青いジーンズを着て、膝を揃えて座っている。わきまえた東京の女感。
でも、小夜子に煽られては大声を張り上げ、本多に叱られてしゅんと小さくなる。小夜子は、より目にベロを出して朋美に見せつける。

二回戦は、柏木と小夜子が待つブライダル微祥のオフィスを、朋美が訪ねてきたときだ。小夜子は、今度は白地に淡い花柄のブラウスと黒いスカート。今度は、圧を与えず話し合うポーズを見せている。

朋美は黄色いトップスに白いジャケット、グレーのパンツ。小夜子に煙草の煙を吹きかけられるとマスクを取り出し「悪女のばい菌避けに、常備してるんです〜!」と見せつける。マスクをかけた朋美の声が聞きとりづらいと小夜子が煽り、より目にベロ出し。こどものケンカか。

こうやって朋美が感情的に声を荒らげたり、自棄になって泥酔したりするのは、悪人だと思っている小夜子と柏木の前だけだ。小夜子の煽りのせいでもあるが、朋美自身もきっと、悪い奴には何を言ってもいいんだと自分の言動のストッパーを外している。

夫の司郎(長谷川朝晴)や本多に対しては、踏み込んで感情のままに発言したり甘えたりできなかった朋美。
小夜子とのケンカには、小夜子に対してだからこそ言えていること、ぶつけられている感情がある。

葉山奬之の細部が丁寧な演技


小夜子「金はあった。けど、さみしいじいさんやったんや、あの笹島のじいさん」

本多から連絡があり、笹島を殺したのは家政婦だったことが判明する。小夜子をおとしいれたいあまり、朋美は判断を誤った。逆に、笹島の孤独や切ない人生を憂う小夜子を見て、また少しだけ心が揺れてしまう。

その後、東京で柏木と小夜子の弟・博司(葉山奬之)が会う。

博司「俺、ほんまは知ってんねん」
柏木「なんや」
博司「小夜子は姉貴やなくて、母親やろ」
柏木「知ってたんかあ」

小夜子の弟だと言われていた博司は、本当は小夜子の息子だ。博司自身がその真実を知っているということが、あっさりと明かされる。

そのことを柏木に告白する博司は、ソファに体を預けて足を組み、貧乏ゆすりではなく、時折足首だけを揺する。スニーカーの黄色と白の靴底が画面の端で何度も揺れ、博司の苛立ちとも居心地の悪さともいえるこんがらがった感情が伝わってくる。葉山奬之はこれを計算してやっているのだろうか。それとも自然に。
足先や発声の仕方など、本当に細部の神経に気を配る演技をする。

小夜子の次のターゲットはイケメンじいさん・舟山(中条きよし)だ。舟山にときめく小夜子を見て、柏木は苛立つ。そんな柏木は東京で偶然朋美と会い、酔いつぶれた朋美をホテルの部屋に運ぶ。そして、それを見ていた本多。

クライマックスに向け、それぞれの嫉妬の感情が絡み合う第8話は、今夜9時から放送。

(むらたえりか)

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チェインストーリー(GYAO!)

ドラマ『後妻業』(フジテレビ系)
毎週火曜 よる9時〜
出演:木村佳乃、高橋克典、木村多江、葉山奨之、長谷川朝晴、篠田麻里子、平山祐介、田中道子、河本準一、濱田マリ、とよた真帆、泉谷しげる、伊原剛志、ほか
原作:黒川博行『後妻業』(文藝春秋刊)
脚本:関えり香、阿相クミコ
演出:光野道夫(共テレ)、都築淳一(共テレ)、木村弥寿彦(カンテレ)
音楽:眞鍋昭大
主題歌:宮本浩次「冬の花」
企画・プロデュース:栗原美和子
プロデュース:杉浦史明(カンテレ)、萩原 崇(カンテレ)、水野綾子(共テレ)
制作:カンテレ、共テレ
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