放送はサンテレビ(月曜23:30~)→GYAO配信→東京MX(火曜)25:40~。
主演、鳥居みゆき。監督はパンク映画の鬼才・島田角栄。

ツッコミ不在。ボケっぱなしパンクドラマ
神戸元町の裏通りにある古着屋のオーナー、マリア(鳥居みゆき)。
そこへ顔を血まみれにしたモズ(後藤まりこ)が客を殴りながら入ってくる。
マリアは落ち着いた声でモズを諭す。
「もういい加減やめたら?スカジャン狩り」
スカジャン狩り。
スカジャンを着ている男は棒でモズに殴られスカジャンを奪われてしまうのだ。
なんでこんな女が野放しになってるんだ?この街に警察はいないのか?……という野暮なツッコミはよそう。
ツッコミ不在、ある意味ボケっぱなしのこの世界観に全力で乗っかっりながら見る方が気持ち良い。
モズには恋する女なりの理由がそれなりにきちんとあって、スカジャン狩りをしているのだ。
モズを探すヤクザ(古市コータロー)にマリアが言う。
「わたしの大事な友達なの。見逃してやって」
「元気があっていいじゃないですか。男からしかスカジャン狩らないでしょ。自分より強い相手から奪ってる。俺は人間として惚れますけどね」
島田角栄監督の作品は「変な人」に優しい。
鳥居みゆき主演(塩谷瞬とのW主演)映画「ヴィヴィアン武装ジェット」もそうだった(ちなみに映画公開イベントレポは→こちら)。
多くの人が見て見ぬ振りだったり軽蔑の眼差しだったりするところを、立ち止まって「どしたん?何があったん?」と踏み込んでいく。

イラストと文/まつもとりえこ
スウィンドルってなに?
タイトルの元ネタもセックスピストルズのドキュメンタリー映画「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル」だろう。
「スウィンドル」は人をだましてお金を取るとかそういった意味だ。
ピストルズのマネージャーであるマルコム・マクラーレンが語り手となり作られたこの映画。サントラ準備の時点でバンドは解散状態、ボーカルのジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)は参加をきっぱり拒否した代物。出来上がった映画の内容も「事実無根のでたらめ」とジョニー・ロットンらの怒りを買った。
一番まともそうなマリア(鳥居)が実はマルコム・マクラーレン=一番でたらめなやつ、という可能性もある。
あるいは語り手(鳥居/マルコム・マクラーレン)とパンクスたち(各話メインゲスト/ピストルズ)という構図を表しているのかも。って考えすぎかな。
第2話以降も マツモトクラブ、仲野茂(パンクバンド・アナーキーのVo)、松永天馬(アーバンギャルド)等……と、クセの強い面々が控えている。
(イラストと文/まつもとりえこ)
【配信サイト】
・GYAO
「元町ロックンロールスウィンドル」(サンテレビ)
(サンテレビ開局50周年、初の連続ドラマ)
監督:島田角栄(『冴え冴えてなほ滑稽な月』『乱死怒町より愛を吐いて』 『PLAN6 CHANNEL9』『寝たきり疾走ラモーンズ』『ヴィヴィアン武装ジェット』など)
キャスト:鳥居みゆき、マツモトクラブ、松永天馬(アーバンギャルド)、星光子、仲野茂(アナーキー)、古市コータロー(ザ・コレクターズ)、後藤まりこ、ほか