◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
第5週「なつよ、雪原に愛を叫べ」 33話(5月8日・水 放送 演出・渡辺哲也)視聴記録
冬の日、映画デート
なつ(広瀬すず)と天陽くん(吉沢亮)は帯広にディズニーの「ファンタジア」を観に行く。
「ファンタジア」は「くるみ割り人形」「魔法使いの弟子」「アヴェ・マリア」など8曲のクラシックからイマジネーションを発想させて作ったアニメのアンソロジー。これに影響されたクリエイターは少なくない。
魔法使いの弟子に扮したミッキーマウスが魔法の暴走に大わらわする話が最も楽しめるのだが、残念ながらそれはオンエアされなかった。
まったくの余談だが、クラシック好きで有名なアニメーター平松禎史(「彼氏彼女の事情」「ユーリ!!! on ICE」など)は「ファンタジア」の指揮者・レオポルド・ストコフスキーのファンクラブの日本支部に入っていたそうで、それだけ凄い指揮者なのだ。
絵も凄い、演奏も凄い「ファンタジア」に圧倒されたなつは、わくわくデート中、その話ばかり。しかも、映画上映のあと、東洋映画が新作アニメ「白蛇姫」を作るにあたりスタッフ募集するCM(東洋映画の社長は角野卓造)を見て、心を動かされてしまう。東洋映画は東映動画、「白蛇姫」は「白蛇伝」(58年)から意識したものであろう。「なつぞら」のアニメ制作には東映動画が名前を変えた東映アニメーションも協力している。
それにしても広瀬すず、凄い。「ファンタジア」を見ながら、仲努(井浦新)の話や、こどものとき、お父さんの絵を頭のなかで動かしてみたことを思い出して、アニメというものにどんどん惹かれていくところを3分近くセリフなし、表情の動きだけで見せた。さすが若いながら場数を多く踏んでいるだけある。
なつはすっかりアニメに夢中だが、天陽くんはなんだかちょっとつまらなそう? わくわくデートを雪月の妙子(仙道敦子)ととよ(高畑淳子)がからかうが、なつにはそもそもデートいう意識がないように見える。恋という概念がなつには未だなく、おそらく天陽くんのほうには恋の意識があるだろう。ふたりがとても仲良しでそこに入っていける者はいないにもかかわらず、簡単に物事が進まないところがたまらない。
それにしても天陽くんは難しい人である。「絵は描きますけど絵描きじゃありません」と言って「理屈ぽいんだねえ」ととよに驚かれてしまう。モデルである神田日勝は「画家である。農民である」と画家と農民を分けていたそうだ。たとえば農民画家みたいにまとめられ日曜大工のような片手間ふうに感じられるのを嫌ったのだろう。天陽くんの絵かきではないというのは、人生と絵が切り離せないという意味か。こんな難しい話を朝ドラでやるとはなんというチャレンジであろうか。こんな哲学的なことを朝から考えていたら遅刻する。さらに、天陽はなつがアニメはなんでもできると憧れると「なんでもできるということはなんもないのと同じだよ」とも言う。なにもないゼロからなにかをはじめることは可能性がいっぱいあるが反面、とても大変だ。そこに思いきって飛び込むか、いまあるもので折り合いをつけていくか。ものを作ることは荒野や大海にひとり出ることで、簡単には決心できず尻込みしてしまうものだということまでわざわざ描く誠実さ。
今シーズンの「あさイチ」で、十八番の受けがいまひとつし辛そうなのは、さくっと笑って流すことのできない真面目さが「なつぞら」にあるからだろう。ネタとして消費できないのだ。従来なら、「おはよう日本」で「朝ドラ」に送り、本編があり、「あさイチ」でその回のまとめをして、ワンパッケージが終了。気持ちを切り替えてその日一日の生活に入っていく流れが、「なつぞら」では登場人物たちの簡単に言い表せない心情が気になって、ずっと引きずってしまう。共感できることもできないことも含めて、つねに「なつぞら」のことを考えてしまう、それこそもどかしい恋みたいなドラマである。東洋動画の「白蛇姫」も気になって気になって……。
第6週 「なつよ、雪原に愛を叫べ」(5月6日・月〜 演出・渡辺哲也)あらすじ
兄・咲太郎(岡田将生)を探すため、東京を訪れていたなつ(広瀬すず)と富士子(松嶋菜々子)。ふたりは偶然、天陽(吉沢亮)の兄・陽平(犬飼貴丈)と再会する。陽平は東京の美大に通いながら、漫画映画を作る会社で働いていた。なつは陽平に誘われて会社を見学、漫画映画の制作現場を目の当たりにし、心を奪われる。一方、十勝では、照男(清原翔)が大事な話があると天陽を呼び出していた。なつへの思いを確かめようとしていたのだ。そんな二人は青年団のスキー大会で対決することになり、それを見つめるなつは……。

第35回(5月10日・金 放送)あらすじ
クロスカントリーのスキー大会が開かれ、天陽(吉沢亮)と照男(清原翔)が出場することになった。大会の当日の朝、照男は天陽を呼び出し、なつ(広瀬すず)に対する思いを聞き出す。一方の天陽も、照男に自分の思いをぶつけ、大会の結果によって、勝った方の主張を受け入れるよう確認しあう。スタートを合図するフラッグが振られた。天陽と照男の間に交わされた約束を知らないなつは、ふたりを同時に応援するが…。


登場人物とキャスト 登場順
奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。父の描いた家族の絵を大切にもっている。生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。これからは酪農の時代だと考え、十勝農業高校で学んでいる。演劇部に入る。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。
柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。牛乳嫌い。同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。勉強ばかりして家の手伝いを全然しない。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院にいる。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。
2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。
4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。演劇部。
5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。馬が好き。農業をしながら絵を描いている。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。
8回
山田陽平 (31話から)犬飼貴丈 幼少期 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。東京で芸大に通いながらアニメの美術の仕事をしている。なつに絵画の道具を贈った。
9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。
10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。
13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。演劇部に入り衣裳を担当する。
村松 近江谷太朗…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。
倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。
14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。
19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。演劇部に入り、村長役を略奪する。
高木勇二 重岡漠 …十勝農業高校演劇部。メガネ。門倉に役をとられてしまう。
石川和男 長友郁真…十勝農業高校演劇部。
橋上孝三 山下真人…十勝農業高校演劇部。
21回
太田繁吉 ノブ(千鳥)…十勝農業高校の教師。ヤギのチーズは牛より「クセがすごい」と言う。
27回
前島光子 比嘉愛未… 川村屋のマダム
野上健也 近藤芳正… 川村屋のギャルソン
茂木一貞 リリー・フランキー… 角筈屋社長
煙カスミ 戸田恵子… 歌手。ムーラン・ルージュにいた。
三橋佐知子 水谷果穂…川村屋の店員
土間レミ子 藤本沙紀…カスミのいるクラブの店員
28回
島貫健太 岩谷健司
ローズマリー エリザベス・マリー…浅草の踊り子
30回
藤田正士 辻萬長 親分
松井新平 有薗芳記 …浅草の芸人
岸川亜矢美 山口智子 …元ムーランルージュの踊り子。咲太郎を助けた。
31回
下山克己 川島明 …新人アニメーター
仲努 井浦新 … 実力派アニメーター
脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美 舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション
制作統括:磯智明 福岡利武
(木俣冬)