連続テレビ小説「なつぞら」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

第15週「なつよ、ワクワクが止まらない」88話(7月11日・水 放送 演出・田中正)視聴記録


咲太郎は声優プロダクションをつくる
なつ(広瀬すず)が短編アニメーション「ヘンゼルとグレーテル」の制作に励み、風車に帰って来ると、蘭子(鈴木杏樹)とレミ子(藤本沙紀)と雪次郎(山田裕貴)が飲みに来ていた。そこには茂木社長(リリー・フランキー)もいたが、なつになかなか気づいてもらえずウスバカゲロウのように影が薄いと嘆く。
咲太郎(岡田将生)は昨今の外画ブームで吹き替えの需要が増えたため、声だけの俳優・声優のプロダクションを作るとなつに宣言する。
蘭子がその所属俳優第一号。レミ子も雪次郎も劇団活動をしながら声優をやるという。日本の役者と劇団を救うと大きなことを言う咲太郎に、茂木はいいところに目をつけたと褒めた。
すでに藤正親分(辻萬長)にも挨拶を済ませた(このへんの顔だから?)と話したところ、当の藤正親分が登場。浅草の劇場で一緒だった松井新平(有薗芳記)と島貫健太(岩谷健司)を連れてきて面倒を見てやってくれと頼む。新しい劇場をつくると勘違いしていたのだが、とにかく面倒見てやれと親分に言われ、「わかりました」と言うしかない咲太郎。
松井は盗んだ時計を渡して咲太郎に濡れ衣を着せた過去があり、なつはむくれるが、咲太郎は水に流しているようだ。というか有耶無耶に。この時代はこういう懐の広い人たちがいたってことなのか。もしくは浅草でも新宿でも下っ端だった咲太郎がいつの間にか頼りになる存在になってきたことを、東洋動画におけるなつや神地(染谷将太)などの新世代の台頭と平行して描いているようにも見える。

日本のアニメや洋画や外国テレビの声の仕事はそもそも映画俳優や舞台俳優がやっていて、中から声の仕事を専門職にする俳優たちが現れ、声優という職種が誕生した。「なつぞら」で咲太郎も語っているが舞台の仕事だけでは生活できない俳優も多くいるので、そんな者たちのために声優の仕事は大助かりだった。

現実の世界では、日本ではじめて声優に特化した芸能事務所は青二プロダクションとされている。所属している声優には劇団から移籍している者も多い。ベテランだと、イデオンのベスなどの田中秀幸は青年座出身、ガンダムのカイなどの古川登志夫は劇団櫂から声優に、ハイジの杉山佳寿子、「わんぱく牛若丸」の声優として「なつぞら」にも出た、モンキー・D・ルフィなどの田中真弓はテアトル・エコー、赤毛のアンのダイアナなどの高島雅羅は薔薇座に所属していたことも。青年座は高畑淳子のいる老舗、テアトル・エコーは井上ひさしも参加した喜劇の老舗でルパン三世の山田康雄をはじめとした声優も多い、薔薇座はアラン・ドロンの吹きかえで有名だった野沢那智が主宰し、戸田恵子、鈴置洋孝、玄田哲章などアニメブームを彩る声優たちが所属した。簡単に記すだけでも、いまでは声優として認識されている俳優たちの多くの原点が舞台なのである。

坂場が夢に
アニメが進化すると同時に、声の仕事が誕生。とってもわくわくする黎明期だが、進化の途中なので苦労もある。なつたちの短編は結末が決まらず暗礁に乗り上げてしまう。
ヘンゼルとグレーテルが森に逃げ込むことで描くべきは「子どもたちがいかにして森を信じられるか」「自分の生きる世界が信じられるか」ということだと坂場(中川大志)は言う。なんかちょっとむずかしい。
せっせと森の絵を描いていたなつは、うたた寝して高校生のとき吹雪の森で遭難しかかった夢を見る。助けてくれた弥市郎(中原丈雄)がいつの間にか坂場に変わっていてびっくり。

ふたりはそのまま意見を交換し、なつは弥市郎の木彫りを参考に木の怪物を思いつき、クライマックスのイメージ画をつくりあげる。ふたりが接近してやりとりしているところがなかなかいい感じ。
原作とはだいぶ違った「ヘンゼルとグレーテル」面白そうだ。

なつの作業机には民芸品のような素朴な馬、麻子の机にはヨーロッパ調の陶器の人形やセンスのいい人形が置いてある。小道具のスタッフがいろいろ考えて用意しているんだろうなあと思う。小道具を見るのは朝ドラの楽しみのひとつ。ついでに書くと、なつの正面の鏡はレフ板の代わりにもなりそう。

【第15週あらすじ】「なつよ、ワクワクが止まらない」 7月8日・月〜13 日・土 演出:渡辺哲也


天陽(吉沢亮)との決定的な別れを痛感したなつ(広瀬すず)の里帰りは、終わろうとしていた。そんな中、北海道大学に通う夕見子(福地桃子)が帰省して来る。夕見子のハッキリとした物言いに富士子(松嶋菜々子)たちが振り回される姿を見て、なつはどこか懐かしさを感じる。出社後、十勝でヒントを得た企画が正式に採用され、なつが初めて原画を務める漫画映画の制作が動き出す。坂場(中川大志)の自分勝手な進め方に麻子(貫地谷しほり)や下山(川島明)は反発するが、何故かなつは彼の情熱に心を動かされていく。一方、兄・咲太郎(岡田将生)はテレビ時代の到来を見越して、洋画にアテレコする声優たちの会社を立ち上げようとしていた。

「なつぞら」88話。咲太郎(岡田将生)がつくる日本初の声優事務所のモデルはあれか

「なつぞら」88話。咲太郎(岡田将生)がつくる日本初の声優事務所のモデルはあれか

「なつぞら」88話。咲太郎(岡田将生)がつくる日本初の声優事務所のモデルはあれか

90回あらすじ  7月12日・金 放送


仕事のことで落ち込み、風車で飲んだくれていた雪次郎(山田裕貴)の元に、突然夕見子(福地桃子)が現れた。北海道で大学に通っているはずだ、と驚くなつ(広瀬すず)や雪次郎達。上京の理由を訪ねるが、夕見子は質問をはぐらかしたまま、行き先も告げずに去ってしまう。一方東洋動画では、なつの携わる短編映画の絵コンテがようやく完成するが、下山(川島明)は、仲(井浦新)や井戸原(小手伸也)に思わぬ指摘をされて…。
「なつぞら」88話。咲太郎(岡田将生)がつくる日本初の声優事務所のモデルはあれか

「なつぞら」88話。咲太郎(岡田将生)がつくる日本初の声優事務所のモデルはあれか

{木俣冬)

登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。父の描いた家族の絵を大切にもっている。生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。これからは酪農の時代だと考え、十勝農業高校で学んでいる。演劇部に入る。
高校卒業後、アニメーターを目指して東京に出てくる。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。
孤児院で働きながら勉強している。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。
柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。牛乳嫌い。同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。
勉強ばかりして家の手伝いを全然しない。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
なつをほんとうの家族にしたいと願い、照男と結婚させようとする。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院を出て新宿で亜矢美に助けられ、ムーラン・ルージュを経て、浅草の劇場で働いていたが、盗み濡れ衣を着せられ捕まってしまう。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。


2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。演劇部。高校卒業後、川村屋に修業に出る。

5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。馬が好き。農業をしながら絵を描いている。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。

8回
山田陽平 (31話から)犬飼貴丈 幼少期 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。東京で芸大に通いながらアニメの美術の仕事をしている。なつに絵画の道具を贈った。東洋動画に就職。

9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。

10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。 
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。

13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。演劇部に入り衣裳を担当する。「白蛇伝説」のラスト、白蛇として登場し喝采を浴びる。
村松 近江谷太朗…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。

倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。演劇部の顧問。「魂」が口癖。なつの問題、十勝の伝承を交えて「白蛇伝説」の台本を書く。

14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。 

19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。演劇部に入り、村長役を略奪する。
高木勇二 重岡漠 …十勝農業高校演劇部。メガネ。門倉に役をとられてしまう。
石川和男 長友郁真…十勝農業高校演劇部。
橋上孝三 山下真人…十勝農業高校演劇部。

21回
太田繁吉 ノブ(千鳥)…十勝農業高校の教師。ヤギのチーズは牛より「クセがすごい」と言う。

27回
前島光子 比嘉愛未… 川村屋のマダム
野上健也 近藤芳正… 川村屋のギャルソン
茂木一貞 リリー・フランキー… 角筈屋社長
煙カスミ 戸田恵子… 歌手。クラブメランコリーの看板。ムーラン・ルージュにいた。
三橋佐知子 水谷果穂…川村屋の店員。川村屋社員寮でなつと同室に。咲太郎を「同志」と思っている。
土間レミ子 藤本沙紀…カスミのいるクラブの店員。咲太郎のことが好き。「真心を一晩貸したままだから」返してほしいと思っている。

28回
島貫健太  岩谷健司
ローズマリー  エリザベス・マリー…浅草の踊り子

30回
藤田正士 辻萬長  親分
松井新平 有薗芳記 …浅草の芸人
岸川亜矢美 山口智子 …元ムーランルージュの踊り子。咲太郎を助けた。

31回
下山克己 川島明 …新人アニメーター
仲努 井浦新 … 実力派アニメーター

37回
阿川弥市郎 中原丈雄 … 東京から北海道に移住。彫刻で生計を立てている。
阿川砂良 北乃きい… 弥市郎の娘。

44回
杉本平助 陰山泰… 川村屋の料理長

45回
蘭子 鈴木杏樹… 劇団の女優
虻田登志夫栗原英雄… 劇団の俳優

49回
井戸原昇 小手伸也… 東洋動画アニメーター

55回

森田桃代 伊原六花…仕上げ課の先輩、といっても年齢はなつと同じで19歳。あだ名は「モモッチ」
山根孝雄 ドロンズ石本…仕上げ課のえらい人。
石井富子 梅舟惟永…仕上げ課のベテラン。といってもまだ30歳。
大沢麻子 貫地谷しほり…原画スタッフセカンド。周囲に一目置かれている才能あるアニメーター。
おしゃれしているなつを敵視している。
堀内幸正田村健太郎…動画スタッフ 芸大出身で、線画のきれいさには定評がある。

58回
露木重彦木下ほうか…演出家、第一製作課長
山川周三郎古屋隆太…東洋動画スタジオ所長

66回
泉千恵
岡部たかし
池間夏海


脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武
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