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二・二六事件はどう描かれてきたか更に検証「パトレイバー」にも登場した事件のイメージ

       
二・二六事件から3ヵ月後、まだ戒厳令が続いていた東京で、愛人の男を殺害し、その局部を切り取って逃亡していた女が逮捕される。女の名前から阿部定事件と呼ばれるこの事件はセンセーショナルに報じられ、国民の耳目を集めた。阿部定事件もまた、たびたび映画化されてきた。大島渚監督の『愛のコリーダ』(1976年)はその一つである。本作には、藤竜也演じる石田吉蔵が、定と愛欲の日々を送るなか、ひとり町を歩いていたところ、兵士たちの隊列とすれ違う場面がある。二・二六事件後、軍部が力を強めていく時代にあって、吉蔵が世間に背を向けるさまがうかがえるシーンだった。

『愛のコリーダ』に続き大島が世の話題をさらった『戦場のメリークリスマス』(1983年)では、坂本龍一演じるヨノイ大尉が、二・二六事件直前に満州に赴任したため二・二六事件に参加できなかったと打ち明ける場面があった。ちなみに坂本龍一は学生運動にのめり込んでいた高校時代、「青年日本の歌(昭和維新の歌)」をよく歌っていたという。この歌は、五・一五事件に連座した海軍青年将校の三上卓がつくったもので、二・二六事件の青年将校のあいだでも愛唱された。坂本のエピソードは、前編に書いたように、1970年安保を前に学生運動に参加した若者たちが、右翼的心情に共感していたことを示す証拠といえる。

坂本と同年代の映画監督・押井守も、二・二六事件のイメージをたびたび自作に反映している。『機動警察パトレイバー』のOVA(オリジナルビデオアニメ)シリーズの第5〜6話「二課の一番長い日」(1989年)は、陸上自衛隊員の部隊がクーデターを起こして東京を制圧するという話だった。その前編のラストでは、クーデター発生の報を受けて、北海道にいた警視庁特車二課の泉野明と篠原遊馬が汽車に乗って東京に向かう。そのシーンは、前出の『けんかえれじい』のラストシーンへのオマージュとなっていた。押井はさらに劇場アニメ『機動警察パトレイバー 2 the Movie』(1993年)では、大雪の降った東京で自衛隊が治安出動し、各所に部隊が配置される様子を描いた(時代設定は2002年)。これも二・二六事件のイメージをなぞったものといえる。

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