
(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)
連続テレビ小説「スカーレット」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)
第4週「一人前になるまでは」21回(10月23日・水 放送 演出・佐藤 譲)
「即位礼正殿の儀」で放送時間が前倒しになったら、視聴率が13.9%になった。戦争関連の特番で時間帯変更になったときの「なつぞら」は14%。時間が変更になると下がってしまうのは仕方ない。
喜美ちゃんの低い声
最近台風関連の話が多かった「おはよう日本関東版」では久しぶりに高瀬耕造アナが朝ドラについて語った。
「喜美ちゃんがコツコツ低い声でがんばる姿が……」
「低い声」と高瀬アナが強調した喜美子(戸田恵梨香)の声は、21話では思索的な印象でj響いた。
眠れなくて絵を描いていると、ちや子(水野久美)が帰って来て、少しおしゃべり。
新聞社に一日体験働きし、新聞社の人たちはいい人だし、仕事にも興味ある。でもやっぱり大久保さん(三林京子)のことが気になる。謎のストッキング繕い指令は嫌いだが、おにぎりを作ってくれる優しさがあるのはわかる。
考えた結果、いま、荒木荘を辞めたら中途半端になって、「おんなの意地と誇り」が廃ると考えた喜美子は荒木荘に残ることを決意する喜美子。平田(辻本茂雄)が、ちや子に「ブンヤの誇り」があると聞いたとき、こどものときに叫んだ「意地と誇り」を思い出したのだ。
ちや子はそんな喜美子の話を傾聴し、荒木荘を卒業してから自分の道を選べばいいと受け止める。
15歳で、こんなに自分のことも他者のこともちゃんと考えるとは、なんて立派な。
昔、男の子は12〜16歳で「元服」し、大人になった。
しかもこの場面のツインテールでパジャマ姿の戸田恵梨香はとてもかいらしい(照明の力もある)。この時代のこどもたち(とくに女性)が早々に自立せざるを得なくて、しかも半ば強制的に進路を決められてしまっていたなかで、喜美子は行く道(可能性)はいくつもあることを知って元気になるという流れは、やさしさに溢れている。
喜美子が荒木荘に残ることになったと知った圭介(溝端淳平)は喜ぶ。
圭介には妹がいたが、戦後原因不明の病気で亡くなったと喜美子に語る圭介。喜美子のことが亡くなった妹のように思えるんだなというのは想像に難くない。溝端淳平が静かな語り口でしんみり聞かせた。
前借り
大阪はとりあえず一件落着。ところが、信楽で事件が。川原家で働く保(中川元喜)と博之(請園裕太)が
無断で顔を見せず、と同時に家のお金が盗まれてしまった。保と博之の仕業に決まっていると大野(マギー)は言うが、常治(北村一輝)は深く追求しようとしなかった。
まだ月1000円しかもらえていないのに、貸せる金なんてない。ちょうどさだ(羽野晶紀)も東京に出張に出てしまっている。さて、どうなる?
常治がゲーリー・クーパー主演映画「真昼の決闘」のポスターの前を通る遊びにくすりとなった。
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)
登場人物のまとめ
●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空 主人公。空襲のとき妹の手を離してトラウマにしてしまったことを引きずっている。 絵がうまく金賞をとるほどの腕前。勉強もできる。とくに数学。学校の先生には進学を進められるが中学卒業後、就職する。
川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。
川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。
川原百合子…福田麻由子 幼少期 稲垣来泉
●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死しているため、家業を継がないといけない。婦人警官になりたかったが諦めた。
熊谷秀男…阪田マサノブ 信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母
●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。
大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。
●滋賀で出会った人たち
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を
「ゴミ」扱いされる。
草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいた。帰国の際、離れ離れになってしまった妻の行方を探している。
工藤…福田転球 大阪から来た借金取り。 幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。
保…中川元喜 常治に雇われている。
博之…請園裕太 常治に雇われている。
●大阪 荒木荘
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対する。
酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。
庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者で不規則な生活をしていて、部屋も散らかっている。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて引きこもり中。
静 マスター…オール阪神 喫茶店のマスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。
平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ
石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。
あらすじ
第一週 昭和22年 喜美子9歳 家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。
脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき