「いつでも探しているよ」実写化
飯島さんに好感度を高めてもらうため、あれやこれやの努力をする掛田氏。その中で発した「飯島さんにはほめるところがないじゃないですか」という言葉を本人に聞かれてしまう。
と、あらすじだけでは何も伝わらないのがこのドラマ。冒頭はクライマックスの「レーザー光線を前にたたずむ掛田氏」から始まり、映画の予告編のように、4話に登場するセリフを出演者たちが意味ありげに不穏に発している姿が次々と映し出される。30分のドラマにもかかわらず壮大な前振りがあり、なぜそんなことになったのかが時間を遡ってつまびらかになっていくというスタイル。今回は実験らしい実験はなく、また科学者のエピソードよりも名言に重きが置かれた回だった。
その中で今回も、3話に負けず劣らずじっくりと時間が使われるくだりがあった。「ほめるところがない」発言を聞いて研究室を飛び出してしまった飯島さんを掛田氏が追い、学校中を探し回るシーン。山崎まさよしの「One more time, One more chance」にのせて、ロケではなくなぜかスクリーンに様々な背景を映し出していろんなところを探している様子を表現する。最初からサビまでたっぷり。この時間は一体……。
第2話に続いて今回の脚本を担当したのは福田晶平。『攻殻不動戦記 ロボサン』(テレビ東京)、『また来てマチ子の、恋はもうたくさんよ』(tvk)と、第1話を手がけた土屋亮一との仕事を多くしているほか、『HIGH & LOW THE MOVIE』シリーズのいくつかの脚本にも菜を連ねている。
ドラマ1話につめこまれた情報量!
原作のあるドラマは通常、流れに合わせて編集した上で脚本化し、映像化している。中でも『決してマネしないでください。』はじつにダイナミックに原作を使っている。

原作2巻『決してマネしないでください。』蛇蔵
「飯島さんはほめるところがないじゃないですか」発言で誤解させてしまう部分は原作5話をベースにしている。マンガではこの回で行われる液体窒素の実験はドラマにはなし。代わりに登場する科学者は13話のベンジャミン・フランクリンだ。高科先生役の石黒賢が扮し、「やる気と我慢は全てを克服する」「よき言葉よりよき行い」などの名言を掛田氏に伝える。有名な「凧を飛ばして雷が電気と証明する」くだりは掛田氏の夢の中で行われる。
さらに照らし合わせてみると、好感度を上げるためのクイズ大会は12話、その途中に挟まれる「白雪姫の鏡」エピソードは13話。
細かなところまでかなり忠実ながら、大胆に再構成しているのだ。そもそもドラマ1話からして、原作1話をベースにしながらも、最終回直前の18話から話をはじめている。
マンガが全3巻と短く、さらに1話完結型で飯島さんとの距離がじわりじわりとしか近づかないものだからこそこの構成が成立するのだろうが、たった1コマをうまいことはさみ込むなど、比較してみると構成の妙にうなる。『決してマネしないでください。』こそ、脚本家の構成力、ドラマ化の面白さをたっぷり味わえるドラマかもしれない。
(釣木文恵)
「決してマネしないでください。 」
出演:小瀧望(ジャニーズWEST)、馬場ふみか、ラウール(Snow Man/ジャニーズJr.)、今井悠貴、織田梨沙、マキタスポーツ、石黒賢 ほか
原作:蛇蔵 脚本:土屋亮一、福田晶平、鎌田順也
演出:片桐健滋、榊英雄
制作統括:谷口卓敬、八木亜未
制作:NHK、大映テレビ