草なぎ剛「『ミッドナイトスワン』は神様からのご褒美」今なお広がり続ける感動

草なぎ剛がトランスジェンダーとして生きる凪沙に憑依『ミッドナイトスワン』

草なぎ剛主演映画『ミッドナイトスワン』が、公開から8週目を目前にしてすでに6億円を突破した。さらには、大晦日からは日本を飛び出して台湾での上映も発表された。

10月25日放送のラジオ番組『ShinTsuyo POWER SPLASH』(bayfm)で、草なぎが作品について、「神様からご褒美いただいちゃって、みたいなね」と語った。香取慎吾と二人三脚で放送してきたラジオ番組も25年。公開直前から、度々作品について語ってきた。

香取は「僕、お芝居もうやめようと思ったんですよ。あまりにも草なぎ剛という俳優が素晴らしくて」。デビュー前から草なぎ剛の隣で過ごしてきた香取の説得力よ。続けて、「（芝居を）やめないですけどね」、「きっと、本当に嫌いじゃないからやらせていただいてるから、やめないと思うんだけど。（映画を）観ながら、途中でもうやめようと思ったの」。


普段はほのぼのとした雰囲気の放送だけに、草なぎの凄さと、香取の興奮が伝わってきた。

草なぎが演じたのは。新宿のニューハーフショークラブで働く、トランスジェンダーとして生きる凪沙。そこへ、育児放棄にあっていた広島の親戚の娘・一果（いちか）を一時的に預かることになり、凪沙と一果の物語がはじまる。一果役には今作で女優デビューした服部樹咲。

監督の内田英治著のノベライズ『ミッドナイトスワン』に、こんな一節がある。バレエ講師の実花と凪沙が月謝の支払いについて話すなかで、実花が「バレエって才能が全てなんです。生まれながらにしてそれを手にしている人間と、してない人間に分れる不平等なものでして」。



この時点で一果を支える意志は固まっていたが、時が来れば離れてしまうことが気がかりだった。一果の母になりたい気持ちと、凪沙とバレエの才能を手にしてない人間を重ね、「生まれ持った才能」を持つ一果に自分の夢も託すように、実花の事情と言葉によってもう一段ギアが入ったようだった。映画を観てから原作を読むと、描き切れなかったであろう場面も補完されて臨場感が高まる。

憑依型俳優などと評されてきた草なぎ。今回のインタビューでも、作り込まず、自然な形で役に入ったと明かしていた。10月2日放送の『ぴったんこカン・カンスペシャル』（TBS系）にゲスト出演した際には、頬から顎がほっそり。凪沙の面影を感じた。

大晦日からの上映が決定した台湾での反応はいかに

9月25日の公開以降、Twitterのハッシュタグで映画の感想を追っていくと、「感動」「号泣」という文字をいくつも目にした。2回3回と、“追いスワン”をした人も少なくないようだ。

一方で、手術や後半で凪沙が体調を崩すシーンを疑問視する声もあった。たしかに映像に衝撃は受けたが、そこまでの違和感はなかった……というのも、椿姫彩菜の自叙伝『わたし、男子校出身です。』（ポプラ社）で、思春期に味わった違和感、性別適合手術に至るまでの経緯、痛みを伴う術後のケアの大変さをそれで知った。

SNSだけでも、トランスジェンダーに対する理解や知識にバラつきがある様子が伝わってきた。



東京新聞では、映画に心を重ね、背中を押されるようにしてトランスジェンダーであることを明かした紙芝居師・三橋とら氏を取り上げていた。大晦日から公開される台湾上映では、どんな反応があるのか。

「ホントね、もうね、ないんじゃないかな、こういう作品に巡り会えることって」とラジオで声を弾ませた草なぎ。新しい地図発足から3年、「神様からご褒美」と喜ぶ姿があった。
（柚月裕実）

作品情報

上映中
『ミッドナイトスワン』


出演：草なぎ剛

服部樹咲（新人） 田中俊介　吉村界人　真田怜臣　上野鈴華
佐藤江梨子　平山祐介　根岸季衣

水川あさみ　田口トモロヲ　真飛 聖

監督・脚本：内田英治（『全裸監督』『下衆の愛』）
音楽：渋谷慶一郎
配給：キノフィルムズ

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