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そもそもドラマというジャンルにおいては後味がいいハッピーエンドが好まれがちで、「月9」という枠であってもそれは基本的には変わらない印象だ。しかし実を言うと、凄惨なバッドエンドを迎えた月9ドラマは意外と少なくない。
なかでも代表的なのが、木村拓哉と明石家さんまのダブル主演で話題となった2002年放送の『空から降る一億の星』だ。とある殺人事件をめぐって巻き起こるラブサスペンスドラマで、木村演じる主人公・片瀬涼のダーティな役柄に、当時衝撃を覚えた人も多かったはず。さらに最終話では最愛の人・堂島優子(深津絵里)によって涼が殺害され、その直後に真相を知った優子も後を追うという結末が描かれた。到底予想できない衝撃のエンディングだ。
同じく殺人事件をめぐる物語が展開された2019年放送の『トレース~科捜研の男~』も、後味が悪いバッドエンドを迎えたことで知られている。本筋としては「武蔵野一家殺人事件」を追う物語だったが、最終話にてその犯人が警視庁刑事部長・壇浩輝(千原ジュニア)だったことが判明。壇は自らの手を汚さず、権力を利用した脅迫によって事件を引き起こしていたが、その動機は「サイコパス」と言うしかない異常なものだった。あまりに救いようがない結末は、いまだに伝説として語り継がれている。
そして2023年に放送された『風間公親-教場0-』は、凄惨な最後を迎えた本編の前日譚。
他方でサスペンスはともかく、恋愛ドラマの場合には、どれだけ途中で波乱万丈があっても最後は笑顔で締めくくるのが王道だと思われる。たとえば昨年7月~9月に放送された『真夏のシンデレラ』は、まさに王道中の王道を突き進んだ作品だった。
しかし実際には例外もあるようで、1991年放送の『東京ラブストーリー』や2005年放送の『不機嫌なジーン』などは、メインカップルが結ばれない結末を迎えていた。こうした作品の数々を見るに、月9ドラマだからといって必ずしもハッピーエンドが約束されているわけではないのだろう。
翻って令和最新の月9ドラマ『君が心をくれたから』の内容を見てみよう。同作は「ファンタジーラブストーリー」と銘打たれているが、泣けるシナリオになることが予告されており、序盤から尋常ではない悲壮感が漂っている。
ヒロインの逢原雨(永野芽郁)は、10年前の学生時代に唯一心を通わせた人物である朝野太陽(山田裕貴)と地元・長崎で再会を果たす。しかしその直後、太陽が交通事故に遭ってしまうことに。現場で悲しみに暮れていた雨だったが、そこへ“あの世からの案内人”を名乗る日下(斎藤工)と千秋(松本若菜)が現れ、「奇跡を授けましょう」と告げる。だが、太陽の命を助ける交換条件として、雨は五感を奪われることになる……。
雨の五感は3カ月かけて順番に失われるらしく、1月15日に放送された第2話では“味覚”が奪われていく展開となった。1度は諦めたとはいえ、パティシエを志していた雨にとって、これほど残酷な運命は存在しないだろう。さらにこのまま残りの嗅覚と視覚、聴覚と触覚が奪われていけば、誰とも関われない人生を送ることとなる。その事実を知れば、おそらく太陽も絶望を味わうはずだ。
あまりに絶望的な状況で、順当にいけばバッドエンド一直線といった印象。しかしその一方、“過酷な奇跡”をもたらした日下が人間を試しているような側面を感じられるため、大どんでん返しの雰囲気も漂っている。はたして物語がどんなエンディングに収束していくのか、今後の展開に注目していこう。
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