「SNS社会」とも言われる現代では、芸能人がInstagram、X、TikTokなどのアカウントを持っているのは当たり前になった。俳優や女優は作品の告知だけでなく、日常の一コマやオフショットなども発信し、ファンとの距離を縮めている。
一方で、そうした流れに乗らず、SNSをやらずに高い人気を得ている俳優・女優もいる。むしろ発信しないこと自体が独自の魅力になっているようにも見えるが、なぜ彼らは支持されるのか。

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象徴的なのが新垣結衣だ。本人名義のXアカウントはあるものの、プロフィール欄には「なりすまし発生防止を目的としたアカウント」と記され、本人が発信する場ではないことが明示されている。Instagramもやっていないが、2019年のビジュアルブック発売時のライブ配信で、その理由について「映える毎日を送ってないんですよ、本当に」「見せたいものが……ない……」と率直に語っていた。華やかな仕事をしていても、私生活まで切り売りしない。その絶妙な距離感が、かえって新垣らしい清潔感や神秘性につながっている。

「SNSをやらない俳優」の代表格と言えるのが阿部寛だ。2025年公開の主演映画『俺ではない炎上』に関連したインタビューで、阿部はSNSをやらない理由について「俳優だから、演技で見せればいい」と説明し、「私生活とか分からない方がいい」「見えすぎちゃうと『あの人がやってる』ってなってしまう」と語った。さらに、有名な「シンプルすぎる公式サイト」を刷新しない理由についても、「考えは一緒ですよね。特にいいかなって」と話した。役柄より本人の素顔が先に立つことを避けたいという、俳優としての職人気質がにじむ。


この考え方は、他の実力派と呼ばれる俳優・女優にも共通する。池松壮亮は2018年に出演したトーク番組で、SNSで発信しない理由として「自分の言葉を使わなくていいから俳優をやっている」と発言。蒼井優も同番組で、SNSをやらないことで「役者としての自分を守っていると思う」と語っていた。近年はSNSのフォロワー数がキャスティングにも影響するといわれるが、蒼井はそれにも「そういうのはどうなのかなって」と疑問を呈している。

小栗旬は2025年10月にPodcast番組の公開収録で、SNSをしない理由として「自分たちの仕事は作品を観てくれた方たちにいろんな考えを持ってもらうことだと思っているので、僕自身のパーソナルはそんなに関係ない」と述べた。作品の評判をチェックするための「見る専用アカウント」はあるというが、「やっぱり(SNSに)触れると落ち込みますよね。いいことばっかりじゃない」と本音をこぼした。

個性派で知られる市川実日子も、2025年1月のインタビューでSNSについて「私の何かを見たい人いるんですかね? 特にやらない理由を考えたこともない。自分の中で腑に落ちてないから、やる予定はございませんね」と語っており、その私生活の見えにくさが独特の存在感を際立たせている。

SNSをやらないことには、もちろんデメリットもある。宣伝力は頻繁に発信するタレントに及ばず、先述のようにキャスティングで不利になる可能性もある。だが俳優・女優について言えば、必ずしも不利益だけではない。


私生活を見せすぎないことでミステリアスさや特別感が保たれ、役柄のイメージが本人の人柄に引っ張られにくい。炎上や失言のリスクも減らせるうえ、批判や中傷でメンタルを消耗させずに済む。小栗が語った「触れると落ち込む」という感覚は、多くの芸能人にも共通するはずだ。

では、この時代にSNSをやらなくても彼らが支持される本質的な理由はどこにあるのか。それは結局、作品だけでファンを惹きつける力があるからだろう。発信の量ではなく、出演作の質や演技の説得力で記憶に残る実力がある俳優は強い。

阿部寛は作品ごとにまったく違う顔を見せ、新垣結衣は露出が多くなくても登場した瞬間に空気を変える。市川実日子や池松壮亮のように、私生活が見えないことで、作品内での存在感が際立つという例もある。事務所や制作側に宣伝を委ね、仕事に集中できる環境が整っていることも、SNSを必要としないでいられる理由だろう。

俳優や女優がSNSをやらないことは、是か非か。答えは一つではない。身近な発信によって親しみが増し、ファン層が広がるケースもある。
一方で、見えすぎないからこそスター性が保たれ、作品に没入させる余白も生まれる。SNSを使うかどうかは、時代への適応の問題というより、自分がどんな俳優・女優でありたいかを考えた結果なのだろう。

発信しないことが"遅れている"のではなく、アナログに見える戦略が、現代ではかえって強い個性になる。そんな逆説が「SNSをやらない俳優・女優」への支持には表れている。

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