日本の大手菓子メーカー・カルビーは、中東情勢の緊迫化によるナフサ不足と、それに伴うカラーインクの調達難を理由に、ポテトチップスなどのパッケージを白黒2色のモノトーンへ順次切り替える方針を発表した。この「お葬式パッケージ」と揶揄される事態は消費者に衝撃を与え、先進国を自負してきた日本のサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしている。
背景には、素材メーカーや原材料供給メーカーによる便乗値上げの可能性も指摘されており、単なる地政学リスクにとどまらない構造的問題が透けて見える。

その他の写真:イメージ

 一方、東南アジアのフィリピンでは状況が全く異なる。ガソリンや軽油では、原油高とペソ安を背景に、政府の備蓄不足や週連動の価格改定(MOPSベース)を悪用した地方小売店の便乗値上げが起きた。しかし、食品フィルム用インクをはじめ、建築用塗料、家庭・オフィス用プリンターインク、商業印刷用オフセットインクに至るまで、主要市場は2026年1月比で5月15日現在も価格・供給ともに完全に安定している。日本の「インクショック」とは無縁であり、健全な市場が機能している。

 食品包装用インクの安定性

 カルビーが直面する食品フィルム用インク市場において、フィリピンの盤石さは際立つ。サカタインクス・フィリピンのグラビアインク「ベルカラー」はブラックが1キログラムあたり430ペソ、シアンやマゼンタなどカラー各色も490ペソで据え置き。DICの高機能白インキ「パネロン」は460ペソ、東洋インキの環境対応型「LP-NT」ブラックは510ペソ、フリントグループの水性フレキソインクも390ペソで安定している。供給制限や品不足の兆候は皆無で、現地菓子メーカーのカラフルなパッケージが変更される懸念は一切ない。

 建築・DIY市場の塗料価格

 ボイセンの水性塗料「パーマコート・フラットホワイト」は4リットル800ペソ、「セミグロス」は820ペソ、油性速乾エナメルは889ペソで固定。デビーズの「メガクリル・セミグロス」は850ペソ、防水塗料「サン&レイン」も800ペソと、年初から価格変動は皆無。地方ショップまで物流網は滞りなく機能し、便乗値上げや在庫切れによる高騰は完全に抑え込まれている。


 家庭・オフィス用プリンターインク

 エプソン「003ブラック」は310ペソ、「664ブラック」は295ペソ、キヤノン「GI-71」は440ペソ、ブラザー「BTD60BK」は430ペソ、HP「GT53ブラック」は310ペソと、主要5種すべてが安定。新学期需要期にも価格吊り上げはなく、健全な販促キャンペーンが展開されている。

 商業印刷用オフセットインク

 DIC「VALUES-G」プロセスブラックは494ペソ、カラー各色529ペソ、「マウントフジ」ブラックは475ペソ、東洋インキ「TKハイエコNVブラック」は580ペソ、大韓インキ「ダイハン・プロセスブラック」は635ペソ。いずれも価格改定はなく、出版やパッケージ印刷の現場で安定した環境が維持されている。

 安定の理由

 フィリピンでインク・塗料市場が「まとも」に維持されている理由は3点に集約される。

 ASEAN域内の強固なサプライチェーンにより、中東リスクを回避。

 若い人口構成を背景にした包装資材の巨大市場として、グローバルメーカーが供給を最優先。

 日系大手を含む現地法人の備蓄機能、互換品との健全な競合関係、安定したペソ相場が価格改定を不要にしている。

 結論

 カルビーのモノクロ化は単なる一企業の調達難ではなく、日本全体のサプライチェーンの脆弱性を示す象徴的事例だ。便乗値上げの可能性を含め、硬直的な市場構造が「異常性」を際立たせている。対照的に、フィリピンは発展途上国と見なされてきたにもかかわらず、安定した近代的市場を維持している。この逆転現象は、真に「豊かな社会」とは何かを問い直す契機となっている。

【編集:Eula】
編集部おすすめ