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ジャムハウスから刊行された書籍、『中学生から身につけておきたい賢く生きるための金融リテラシー』。タイトルの通り中学校からの金融教育に向けた指南書として構成された一冊だが、その内容は「お金とは何か?」から「金利」や「ライフプランニング」まで幅広い。



「小学生のうちから親子で学べるテキストを」との思いで制作されたというこの書籍について、ジャムハウスの代表取締役社長・池田利夫さん、執筆者の宮下由多加さんを迎え、乙武洋匡が制作の舞台裏に迫る。

金融教育の必修化に備え、家庭で学べる一冊を

友人の詐欺被害が執筆のモチベーションに。中学生向け金融指南書の作者を、乙武洋匡が直撃!
今回お話を伺ったジャムハウスの池田利夫さん(左)と、ライターの宮下由多加さん(中央)

乙武 宮下さんのご経歴を拝見すると、今回の『中学生から身につけておきたい賢く生きるための金融リテラシー』もそうですが、物事をわかりやすく伝える仕事をたくさん手掛けてきた方なんですね。

宮下 そうですね。こうした子ども向けのものを含め、題材を噛み砕いて解説するというのが、ライターとしてひとつのスタンスかもしれません。

乙武 今日はもう一冊、『SNS炎上なんてしないと思っている人が読むべき本』という作品もお持ちいただいていますが、これなど私が一番勉強しなければいけないテーマですよ(笑)。まずはそんな宮下さんが、池田さんとタッグを組んで金融教育をテーマに本を作ることになったきっかけから聞かせてください。

宮下 2022年4月から金融教育が義務化されるにあたり、その1年くらい前からニュースでもこうしたテーマがたびたび取り上げられていました。そこで漠然と、「その時期に合わせて、家庭で気軽にお金について学べる本があるといいかもしれない」と、池田さんとお話ししていたのが発端になっています。

友人の詐欺被害が執筆のモチベーションに。中学生向け金融指南書の作者を、乙武洋匡が直撃!
ジャムハウスと宮下さんがタッグを組んだ最近の2作品

池田 私たちジャムハウスではそれ以前にも、2020年から小学校でプログラミングが必修化されたのに合わせて、『ゆび1本ではじめるScratch 3.0かんたんプログラミング』という本を作ったことがありました。

これが学校など教育の現場で好意的に受け止められたことから、金融が必修化するのであれば、同じようなガイド本が必要になるだろうという直感がありました。非常にいいタイミングで宮下さんからご提案いただいたと思います。

乙武 なるほど。ジャムハウスさんはこうした実用系を中心に刊行している出版社なんですか?

池田 我々はもともとIT系の出版社で、プログラミングは得意とする分野のひとつなんです。

その一方で、ここ数年は子ども向けのコンテンツを強化したい思惑がありまして、お天気(気象学)の本を作ったり、あるいは児童向けの文学賞を主催したり、様々な取り組みの中で金融という題材が出てきたということですね。

乙武 金融教育を題材に一冊作るにあたり、お二人の間でまず、どのような話し合いがあったのでしょうか。

宮下 タイトルは「中学生から身につけておきたい…」となっていますが、実際には中学校で本格的に金融を学ぶ前に、小学校の高学年くらいから家庭で学べる本にしたいという思いがありました。

ただ、小学生にお金のことを説明するとなると、そもそも「お金とは何か?」という初歩の初歩から優しく解説しなければなりません。大人にとっては当たり前のことを、いかにわかりやすく噛み砕いていくかという点は、最初からかなり気を使っていましたね。

乙武 実際、お金がどうやって生まれたのかとか、銀行とは何をやっているところなのかとか、非常に丁寧でわかりやすい解説が特徴的でした。でもその半面、この『中学生から身につけておきたい賢く生きるための金融リテラシー』を拝読して私が真っ先に感じたのは、これはぜひ大人にも読んでほしい本だな、ということなんです。

宮下 ありがとうございます。おっしゃる通りで、私自身も制作中、「これ、自分は本当に理解していただろうか」と立ち返るパートが多々ありました(笑)。だから途中から、親子で一緒に学べる一冊というコンセプトは意識していたと思います。

乙武 そうですよね。実際問題として我々の世代は金融教育とは無縁だったわけですから、あらためてこういう一冊を手にすると、普通に勉強になることがたくさんあります。



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「1つのテーマを噛み砕いて説明するのが得意」と語るライターの宮下さん

友人の詐欺被害が執筆のモチベーションに

池田 そういう世代間のギャップがあるところは、確かに作っていて新鮮でしたよね。

宮下 私たちの親世代というのは、子どもに対してお金のこと、家計のことを隠すのが当たり前でしたからね。おかげで金融について学んだり話し合ったりする機会が得られず、昨今、投資詐欺の被害に遭っている人たちの多くは、おそらくそうした我々の親世代が中心なのだと思います。

乙武 たしかにそうですね。つまりリテラシーが養われていない、と。

宮下 だからこそ、その反省も踏まえて、いまの子どもたちにはしっかりお金のことを学びながら成長してほしいんです。

乙武 これは宮下さんが本書のプロフィール欄で触れていたことですが、ご友人が詐欺被害に遭ったことも、今回の本を手掛けるきっかけのひとつになっているそうですね。これ、詳しくお聞きしてもいい話ですか?

宮下 これは中学時代から付き合いのある友人の話なんですけど、彼はとにかく騙されやすくて、英会話教材やマルチ商法など、いちいち引っかかってしまうんです(苦笑)。

人が好すぎるのか、会社の先輩から持ちかけられた投資話に乗って50万円くらい損をするようなことがたびたびあり、とても見ていられないなという感情が、結果として今回の書籍を作るモチベーションになっています。

乙武 うーん、私の身近にもそういうタイプがいるので、決して他人事とは思えません。

宮下 それにいまはSNSを見ていると、お金配りや投資案件についての胡散臭い情報が溢れているじゃないですか。それに付いているコメントを見ると、真に受けて飛びついている人が山ほどいて……。

これはどうにかしなければと強く感じました。

乙武 目次に目をやると、第一章でお金とは何かを解説し、その後、お金の使い方や銀行の仕組み、そして家計管理やライフプランニング、さらには金利や保険、積立などまで、本当にお金に関するすべてのことが網羅されています。構成面でとりわけ苦労した点があれば教えてください。

友人の詐欺被害が執筆のモチベーションに。中学生向け金融指南書の作者を、乙武洋匡が直撃!
お金の基礎から金融の仕組みまで網羅した構成に感心する乙武氏

池田 それが、最初に宮下さんからご提案いただいた企画書が、もうほぼこのままなんですよ。その意味ではわりとすんなり構成がまとまった本ではあります。

宮下 これは金融庁が配布している、「基礎から学べる金融ガイド」という資料を参考にしているんです(※令和5年12月に改定済み。実際に参考にしたのは旧バージョン)。「こんな簡潔にまとめられた資料があるのに、ほとんどの国民の目にはとまっていないのだろうな」と、もったいなく感じました。だったらこれを膨らませて構成すれば、よりわかりやすい本になるだろう、と。

乙武 この本が素晴らしいのは、これだけ金融の基礎を網羅していながら、決してボリューミーではない点ですよ。分厚くないし、イラストを交えて非常にわかりやすく情報がレイアウトされている印象を受けました。

池田 学校で使っている教科書も、どちらかといえば広く浅く取り上げる構成なので、あまり文字を詰め込みすぎないことは意識していました。



宮下 最近の若い人は長い文章を読んでくれないですしね。登場人物として、中学1年生の「ゆうたくん」を軸に、両親や学校の先生との会話形式で構成したのも、ひとえに読んでほしいからなんです。

乙武 最近は若い世代だけでなく、中高年層もあまり長文を受け付けなくなっていますから、大正解かもしれませんね。後編では、さらに本書の踏み込んだ内容についてお聞きしたいと思います。

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