パレスチナ自治区ガザに対する国際社会の関心が薄れがちだ。
 イスラエルとイスラム組織ハマスが、米国の仲介で停戦に合意したのは2025年10月のことである。

 今年2月に米国とイスラエルがイランを先制攻撃したことで、ホルムズ海峡や原油価格の動向に国際社会の関心が集中した。
 国際情勢の変転で、停戦前の人道危機が叫ばれた頃に比べ、ガザが語られなくなったのだ。
 だが停戦とは名ばかりで、復興は遅々として進んでいない。
 イスラエル軍は「ハマスによる停戦違反」を理由に散発的にガザへの攻撃を続け、本来、保護すべき女性や子ども、一般市民が巻き込まれるケースが相次いでいる。
 ガザの保健当局によると、停戦発効後の死者は920人以上、23年10月の戦闘開始後の死者は7万2800人を超えている。
 懸念されるのは空爆だけではない。ごみや下水が処理されず衛生環境が悪化し、小動物や寄生虫による住民被害が急増しているという。
 避難テントで寝ていた子どもが夜、ネズミにかじられ、額と右手から出血していたという報告もある。
 国連人道問題調整室(OCHA)によると、調査した3分の2近くの避難所で、住民にシラミや疥癬(かいせん)などによる発疹、皮膚の感染症が見られた。
 医療物資をはじめガザへの物資搬入は、なお厳しく制限されている。
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 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長は「衛生環境や物資へのアクセスが改善されなければ、状況は悪化し、感染症の拡大につながる」と憂慮する。
 ところがイスラエルは、職員がハマスによる奇襲に関わっていたとし、昨年1月にUNRWAの活動を禁止する法を施行した。

 国際司法裁判所(ICJ)は昨年10月、「イスラエルはUNRWAなど国連機関の支援に同意し、手助けする義務がある」との勧告的意見を言い渡したが、イスラエルは拒否した。
 国連の「紛争関連の性暴力」についての年次報告書や、国連特別報告者による人権状況に関する報告書に対しても、イスラエルは激しく反発している。
 自衛権を強調するイスラエル側と、国際人道法の立場に立つ国連諸機関との溝は深い。
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 イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザの70%を支配するよう軍に指示したことを明らかにした。
 イスラエル軍は停戦発効後もガザの半分以上を支配しているが、これを「70%」に拡大すればハマスの反発は必至だ。
 政治の混迷の渦に巻き込まれ、もがき苦しんでいるのは保護されるべきガザの住民である。
 理不尽なガザの現状に国際社会が目を向けなくなれば、住民は閉ざされた空間で孤立を深め、物質的にも精神的にも追い込まれる。
 人道危機への対処が何より優先されるべきだ。
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