本作は、2020年に発表されたマギー・オファーレルの同名小説が原作。史実を大胆に再解釈し、ウィリアム・シェイクスピアの妻アグネスの視点から、家族の喪失と再生を描く。夫がロンドンで働く中、父親不在の家庭で子どもたちを守り、ペスト禍を生き抜く女性の姿を通して、これまで語られてこなかった“もうひとつの物語”が紡がれる。
アグネス・シェイクスピアを演じるのは、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』のジェシー・バックリー。「第83回ゴールデングローブ賞」主演女優賞(ドラマ部門)や「第98回アカデミー賞」主演女優賞など獲得し、賞レースを席巻する原動力となった。
ウィリアム・シェイクスピアを演じるのは『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(2024年)のポール・メスカル。共演にエミリー・ワトソン、ジョー・アルウィンらが集結。製作にはスティーヴン・スピルバーグ、サム・メンデスが名を連ねている。
ジャオ監督は、感情の重いシーンが続く現場で、キャスト&スタッフの心身をリセットするため、ダンスを取り入れたと明かす。「蓄積した感情を解き放つのは楽じゃない」「大きな声で叫ぶのが一番」「だから人は太古の昔から火の周りで踊るの」と説明。本作のプロデューサーを務めたスピルバーグが参加したこともあったといい、「基本は金曜日だったけど、(つらい撮影の後は)金曜以外でも踊った」と振り返る。
特に「4日間も悲しい撮影が続いた」グローブ座では、リアーナの楽曲「We Found Love」に合わせてクロエ・ジャオ監督も一緒になって踊り、「すごく楽しかった」と笑顔を見せる(リアーナの楽曲「We Found Love」は劇中歌ではありません)。
また、原作を初めて読んだ際には「完全に打ちのめされた」と振り返り、「マギーが行間に隠した感情を映像に落とし込む」「空白のページを映像化」にこだわったとも明かした。ウォン・カーウァイ作品のファンということで意気投合した原作者オファーレルと脚本を共同執筆した背景や、バックリーとメスカルのキャスティングについてのエピソードも語られている。
最後にジャオ監督は観客へ向け、「自分の中にある優しさに触れてほしい」とメッセージ。「苦しい時もあるし、心を削られるような痛みを感じる瞬間もある。そそれでも、その痛みを乗り越えて人は優しくなれるはず。本作で描かれる悲劇が、観る人の痛みを少しでも浄化できたら」と思いを明かす。さらに「映画館を出る頃には、隣にいる見知らぬ誰かとの距離が、観る前より少し近づいているはず。それこそが映画館という場所の役割だと思う」と、作品に込めた願いを語っている。
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