■オフィシャルレポート
1997年の2ndアルバムですでに「永遠」を誓ったウータン・クランが、29年ぶりに来日を果たした。「ファイナル・シャンバー」「最後の邂逅」ともある。メンバーのうち、インスペクター・デックとU-ゴッド、カパドンナは、ビザの都合で揃わないと事前に知らされた。大事なヴァースを担うデックが来ないのかー、と10秒ほど落ちたのは事実。だが、この邂逅自体が奇跡なのだ。
オープニングアクト4組がきっちり場を温めた、ほぼ満席のKアリーナ。ステージのバックドロップの巨大な寺院の輪郭が浮かび上がり、バンドが見えてきた。ツインドラムにキーボード、ベース、ギター、コーラスにDJ。気合しか感じないセットだ。
総帥・RZAが登場、「Sunlight」が流れる。続いてニューヨーク・ニックスのカラーのジャージのゴーストフェイス・キラー(以下、GFK)、レイクウォンで「Bring Da Rukus」。GFK、レイクウォン、マスター・キラーは体型が似てきて、口を開くまでなかなか見分けられない。
「Clan in Da Front」で哲学者然とした佇(たたず)まいのGZAが落ち着いたフローを披露。「Wu-Tang Clan Ain’t Nothing tha Fuck Wit」で会場がぶち上がるなか、ステージ上の人数を数える。メソッド・マンの姿がまだ見えなくて、不安になる。と、ひょうひょうと出てくるジョニー・ブレイズことメス。ここで、「Method Man」を投下。このチームワーク、このタイミング。「M-E-T-H-O-D メェン!」でオーディエンスの声が揃った。亡き父、オールダーティー・バスタードの髪型にしたヤング・オールダーティ・バスタードが父のヴァースを担う。私たちが目にしているのは、通常のライヴではない、と悟る。ヒップホップの歴史が刻まれる瞬間を目撃しているのだ。「Protect Ya Neck」で『Enter Tha Wu-Tang』のパートは終了。
一旦、はけてソロパートへ。
メソッド・マンの『Tical』パートでは、ウータンおよびキラ・ビーズ関連のラッパー、ストリートライフが登場。DJもマスマティックスだし、ファミリーの結束は固い。圧倒的な華を見せたメスの次は、渋すぎるGZA。MCで哲学を語ってくれるのだが、英語がわかっても難しい。そのハードルの高さも、ウータン・クランだ。
セットチェンジのたびに映るのは、武道やカンフーを思わせる映像だ。2度目の衣装替えをしたRZAが1990年代ヒップホップのエネルギーを語りながら、亡くなったラッパーを背景に映して追悼を始めた。ビズ・マーキーの「Just a Friend」、ア・トライブ・コールド・クエストのファイフの「Can I Kick it?」で客席とのコール&レスポンスがしっかり成立した。ほかのメンバーも戻ってきて、『Wu-Tang Forever』から「Reunited」。「It’s Wu-, Mother fuxker(これがウーだ、バカ野郎)」の締めで2つのドラムの乱れ打ちが決まる。大団円は当然、「C.R.E.A.M」。
100分間、短く切った分を含め30曲弱のステージが終わった。平均年齢56歳のウータン・クランの面々がこの夜に見せつけた声の強さ、ラップのキレ、スワッグは伝説になるだろう。イースト・コーストの1990年代ヒップホップの美学と、紆余曲折があっても仲間でまとまる生き様に、横浜まで足を運んだ全員が食らったはず。ウータン・クランは、たしかに永遠だった。
(文・池城美菜子)


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