5月24日(日)Kアリーナ横浜にて最後の来日公演「Wu-Tang Forever: The Final Chamber」を開催するウータン・クラン(Wu-Tang Clan)が、ロックの殿堂(Rock & Roll Hall of Fame)入りを果たした。栄誉の重み、フィル・コリンズへの愛、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン再結成の夢を語った、RZAの最新インタビューをお届けする。


ウータン・クランのロックの殿堂入り式典でのパフォーマンスについて、RZAはまだそれほど深く考えていない。グループとソロのディスコグラフィを合わせれば1,000曲を超える中から選ぶのだから、それは並大抵のことではない。「これが現実なんだという実感を、今はまだ噛み締めているところだよ」 2026年度の殿堂入りが決まった翌日、彼はRolling Stone誌にそう語った。

大成功を収めている最終ツアー「Wu-Tang Forever: The Final Chamber Tour」のこれまでの公演中、グループは観客をファン投票へと誘導し、殿堂入りの後押しをしようと試みてきた。「毎晩、スクリーンにQRコードを表示して、ファンに投票を呼びかけていたんだ」とRZAは言う。「俺は謙虚に、『もし俺たちに投票したいと思ってくれるなら、光栄だよ』という感じでね。でもレイクウォンは違った。『いや、そんなの関係ねえ。お前ら、絶対投票しろよ』って感じだったな」

ウータンの中心人物である彼は、殿堂入りについて「最高の気分」で語ってくれた。キャリアの初期には「ほとんど想像すらできなかったこと」だという。

「C.R.E.A.M.」日本語字幕付きMV

人生の道標としての「ロックの殿堂」

―おめでとうございます。まだ進行中のプロジェクトが山ほどあるあなたにとって、これが集大成というわけではないでしょうが、一つの大きな頂点ですね。


RZA:いや、集大成に近いものがあるよ(笑)。やるべきことはまだあるし、今も何らかの形でアートを創り続けられているのは恵まれていると思う。でも、これは間違いなく人生における大きな柱の一つであり、俺にとっての道標の一つだ。俺が初めて買った家はクリーブランドにあったんだ。ロックの殿堂の前を車で通り過ぎたり、実際に訪れたりしたことは、それこそ何百回とあるよ。

―(殿堂入りの報せを)どのように知ったのか、経緯を教えてください。

RZA:ビジネスパートナーから食事に誘われてね。妻も「私も一緒に行くわ」って言うんだ。店に着くと、シャンパンが冷やしてあった。彼がボトルを開けてグラスを用意して、そこで妻が教えてくれたんだ。それから妻と一緒に、『アメリカン・アイドル』の東海岸版と西海岸版の両方をチェックしたよ。そして朝に目が覚めた時、妻が最初に言った言葉が「おはよう、ロックの殿堂入りアーティストさん」だった。
自分の中の子供が歓喜しているのを感じたよ。

―グループには2018年から被選出資格がありましたが、ここ数年、殿堂入りを意識していましたか? それともあまり考えていなかったのでしょうか?

RZA:考えてもみなかった。これは俺にとって、特にキャリアの初期には予想もできなかった栄誉だよ。プラチナディスクを獲得したり、プロデューサーとしてグラミー賞にノミネートされたり受賞したりするのは、もちろん最高の気分だ。でも「ロックの殿堂」は現実味がないものだった。1997年にレイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)とツアーを回っていた頃でさえ、クリーブランドの自宅に帰って殿堂の横を車で通りながらギターなんかを買い始めていたけれど……ヒップホップがあの建物の中に入るなんて思えなかったんだ。ほとんど想像もできないことだった。

資格を得たとき、クエストラヴが「よう、お前ら資格ができたぞ」って連絡をくれた。俺は「ああ、わかった。まあどうなるか見てみようぜ」と返したよ。それから年月が経って、3、4年前かな、ノミネートされるっていう噂を耳にしたことがあったんだけど、その時は実現しなかった。今年ノミネートされた時、俺は友人のラッセル・クロウと一緒にいたんだ。
彼もミュージシャンだからね。彼は「これは本当に大きなことだけど、一回目で入れる人は多くないから、気にするなよ」と言ってくれた。それが今、ついに仲間入りだ! Bamalama!

確執を越えたメンバー間の祝福

―グループの全員とはもう話をしましたか?

RZA:何らかの形で、全員としたよ。もう幸福感一色だね。今朝もインスペクター・デックからすごく美しい長文のメッセージが届いたんだ。これまでの道のり、お互いへの感謝。自分たちがどこから来て、今どこにいるのかを噛み締め、お互いの存在をありがたく思っている。みんなが次々に「ありがとう、兄弟」「愛してるぜ、兄弟」ってね。まさに愛にあふれた時間だった。

―過去30年間、あなたたちほどグループ内での揉め事が多かったグループも珍しいですが、今週ばかりはそういったことも全て脇に置かれているようですね。

RZA:まったくだ。本当にその通りだよ。
ほんの数週間前、オーストラリアでの不運なトラブルがあって、マネジメントとの電話でその対応に追われていたんだが……そこに、Bamalama! 良いニュースが飛び込んできた。全員がこの誇らしさを感じているし、良い香りが漂ってくれば、嫌な臭いは消えてなくなるものさ。

―出席を予定していないメンバーはいますか?

RZA:俺の知る限り、出席しない奴なんていないと思う。ボイコットしようなんて奴もいないはずだ。

―過去には、式典をボイコットした殿堂入りメンバーも確かにいました。

RZA:俺たちはこれを誇らしい瞬間として捉えている。もちろんファンがすべてだし、賞のためにやってるわけじゃない。好きだからやっているんだ。金をもらえようがもらえまいが、俺たちはこれをやる。だが、成功を収め、コミュニティの仲間たちが(自分たちを称えてくれる)とき、それはアーティストが大切にすべき特別な瞬間なんだ。ミュージシャン個人としてはどう振る舞おうが自由だが、一人のアーティストとして、そしてプロフェッショナルとして、これは最高峰の栄誉なんだよ、ブラザー。

オハイオ時代の最初の弁護士は、大学でロックバンドを組んでいた。
今は裁判官だが、音楽を心底愛している。彼からも「おめでとう、誇りに思うよ」と連絡があった。音楽を愛し、バンドを組み、挑戦しながら、この種の栄誉を手にできない人がどれほどいることか。それがヒップホップ出身となれば、さらに大きな意味を持つ。俺たちの前に殿堂入りした仲間も何人かいるが、それでもまだ極めて少数だ。心から光栄に思うし、感謝しているよ。

「Protect Ya Neck」日本語字幕付きMV

―2014年、Eストリート・バンドが30分以上もスピーチを行い、ロックの殿堂史上最長の記録として語り継がれています。ウータンはその記録を塗り替えようとしますか?

RZA:俺たちの中には、よく喋る奴もいれば、喋らない奴もいる。俺は言葉にするならリリックを通してだ。だから、おそらくメンバーの誰かが代表として話すことになるだろう。「誰が話したい? 整理しようぜ」なんて、みんなで話し合うことになると思うよ。

―では、何人かの代表者が話す形になって、9人全員が10分ずつスピーチするなんてことにはならないと?

RZA:(笑)。
そこは多少のルール作りが必要だろうな、ブラザー。一つ面白い話をさせてくれ。去年、ビルボードの賞をもらったんだ。何人かの兄弟たちが話して、最後に俺が締めた。そしたら俺が締めくくった後に、別の兄弟がマイクに戻ってきて、さらに5分も喋り出したんだ。俺は「もういいや、あいつがそうしたいなら」って思ったけどね。

「ヒップホップ自体が今やロックンロール・ライフスタイル」

―MCライトが以前、あなたやグループとの長い歴史について語ってくれました。今回、彼女と一緒に殿堂入りすることについてはどう感じていますか?

RZA:個人的に、これにはすごく大きな意味がある。ウータンが売れるずっと前、(プロデューサーの)ミルク・Dや彼女のDJだったKロックとは、近所でよく顔を合わせていたんだ。ミルク・Dの親父さんがレコードレーベルのオーナーだったから、「自分たちでやれるんだ」っていう知識をそこから学んだよ。彼女の「I Cram to Understand U」はずっと流れていたし、メソッド・マンがその曲のリミックスをやったこともある。ライトはずっとヒーローだったし、紛れもなく史上最高の女性ラッパーの一人だ。あの当時は、男のラッパーたちを何人も蹴散らしていたよ。

―あなたとクイーン・ラティファも、ごく初期の頃は同じレーベルにいましたよね。

RZA:その通り。最高なのは、俺たちはみんな10代後半くらいの頃に、何らかの形で出会っているってことだ。ラティファに会ったのは彼女のファーストシングルの時だったのを覚えている。彼女はTommy Boy(レーベル)の女王で、俺は契約したばかりの新人として、必死に自分の地盤を固めようとしていた。だから、あのあたりの世代のアーティストには特別な思い入れがあるんだ。彼女たちは俺たちより先にデビューしたけれど、同じクラスの仲間だと思っているよ。

―他に、会うのを楽しみにしている殿堂入りメンバーはいますか?

RZA:リストの全員がパワフルだ。その名前の中に自分たちが並んでいることに感謝しているよ。俺たちの名前がルーサー・ヴァンドロスと並んでいるんだぜ、ブラザー。シャーデーの隣だ。どちらも10代の頃、初めてのキスの時に流れていたようなレコードだ。今回の栄誉の多くは、俺たちのヒーローたちだ。レコードを買い、曲を聴き、恋に落ちた相手なんだよ。

湿っぽい話にするつもりはないが、映画『カリブの熱い夜』が公開された時のことを覚えているよ(フィル・コリンズの主題歌「見つめて欲しい(Take a Look at Me Now)」の一節を歌い出す)。当時、彼女と喧嘩したばかりで、あの曲はもう、たまらなく胸に突き刺さった。まあ、その後ちゃんと仲直りしたけどね。

RZA独占取材 ウータン・クラン「ロックの殿堂入り」への想い「ヒップホップ自体が今やロックンロール・ライフスタイル」

Photo by Danny Hastings

―2026年にもなってこんな質問をするのは馬鹿げている気もしますが、未だにヒップホップはロックの殿堂にふさわしくないと信じている人々がいます。ウータンの殿堂入りは、ヒップホップ・カルチャーにとってどんな意味を持つと思いますか?

RZA:ヒップホップ・カルチャーには独自のカラーがあるけれど、ヒップホップのライフスタイル自体が今や「ロックンロール・ライフスタイル」になっていると思う。ヒップホップ界のヒーローたちを見てみろよ。エイサップ・ロッキーは今パンクロックをやっているし、ジェイ・Zだってステージでギターを抱えてきた。この二つのカルチャーはずっと隣り合わせだったんだ。Run-D.M.C.のアルバムだって『King of Rock』だろう? 重要なのは「ロック」だけじゃなく「ロール」の部分だ。「ロック(揺らす)」の方は、ほら、会場をロックするとか、マイクをロックするとか言うだろ?

だが「ロール」の方はどうだ。身のこなし方、音楽の転がり方、物事の動かし方、リズムの刻み方……。そういったものは、かつてはロックンロール・カルチャーの代名詞だったかもしれないが、当時はまだ「それがそこに属するかどうか」を議論できるほどヒップホップ・カルチャーが確立されていなかっただけだ。でも、カルチャーが成長するにつれて「おい待てよ、ここには殿堂にふさわしい要素があるぞ」ってなったんだと思う。エミネムの「Lose Yourself」なんてロックソングそのものだしな。殿堂の理事会や選考委員たちも、そういう視点で選んでいるんだと思うよ。

―ビリー・アイドルが以前、我々に「ロックンロールなアティチュードを誰よりも持っているのはウータンだ」と語っていました。

RZA:(笑)。リスペクトだね。90年代に俺たちの基盤を作ってくれたある重役から今日電話があったんだ。何年も話していなかった男なんだが、彼は昔からずっと「お前らはパンクロックだ。お前らはロッカーだ。まるでストーンズみたいだ」って言っていた。今日彼から電話が来たとき、俺は「あんたの言った通りだったよ、ブラザー」って返したよ。ODB(オール・ダーティ・バスタード)なんてファーストアルバムの頃からロックンロールな生き方をしてたしな。メソッド・マンの客席へのダイブだって、ロックンロールを見て形作られたものなんだ。

―もし自分で選べるとしたら、誰にプレゼンター(殿堂入りの紹介役)を頼みたいですか?

RZA:おお、それはヤバい質問だな。いくつか名前を挙げてみようか。まずはめちゃくちゃ思い上がった提案をさせてもらうなら、俺が超大ファンで、まだ一度も会ったことがない唯一の人物、バラク・オバマだ。それから、(クエンティン・)タランティーノが自分のことを「ロックンロールな監督だ」って言っていたのをずっと覚えている。タランティーノも最高だし、レオナルド・ディカプリオもいい。もう一人挙げるとしたら、カルチャーの象徴としてレブロン・ジェームズなんてどうかな? ……ところで、一つ質問していいか。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンはもう殿堂入りしてるのか?

―2023年に殿堂入りしましたが、式典に来たのはトム・モレロだけでした。

RZA:もし、レイジが俺たちの紹介をしてくれたらどうだ? 彼らがまた集まって、「俺たちの兄弟を迎え入れたい」なんて言ってくれたら。クソ、いつの日か、その歴史に終止符を打つために一度だけコンサートをやってくれないかな。一夜限りでいい。そんなことが起きたら、最高にクレイジーだよな。

From Rolling Stone US.

RZA独占取材 ウータン・クラン「ロックの殿堂入り」への想い「ヒップホップ自体が今やロックンロール・ライフスタイル」
Wu-Tang Forever: The Final Chamber | ウータン・クラン、最後のツアーとなる「Wu-Tang Forever: The Final Chamber」

Wu-Tang Clan「Wu-Tang Forever: The Final Chamber」日本公演
さらばウータン!最後の邂逅
2026年5月24日(日)神奈川県 Kアリーナ横浜
出演:Wu-Tang Clan
ゲスト:キングギドラ / Awich / 般若 / ¥ellow Bucks
特設ページ:https://www.creativeman.co.jp/artist/2026/05wutang/

RZA独占取材 ウータン・クラン「ロックの殿堂入り」への想い「ヒップホップ自体が今やロックンロール・ライフスタイル」

ウータン・クラン
『燃えよウータン(Enter The Wu-Tang: 36 Chambers)』
【カセットテープ】
2026年5月13日(水)リリース
価格: 2,200円(税込)
■完全生産限定盤 ■国内盤限定 ■ホワイト・カラー・カセット仕様 ■外箱スリーヴ付 ■日本語解説付

ウータン・クラン必聴曲プレイリスト:https://WuTangJP.lnk.to/essentials

日本公式ページ:https://www.sonymusic.co.jp/artist/WuTangClan/

>>>記事の本文に戻る
編集部おすすめ