■母を見舞わず、葬儀でやりたい放題の末っ子
都内に住む50歳の男性は、実家(栃木県日光市)にはまったく帰省することのない放蕩(ほうとう)息子であった。大学を出たものの、仕事は長続きせず、転職を繰り返していた。そのため、いつもお金には苦労していた。それでも男性に焦りはなかった。心の奥底に「いつか親の遺産が手に入る」という思いがあったからだ。
実際、男性の両親は1億円を優に超える資産を持っていた。男性は末っ子で、姉と兄がいた。母親が末期がんを患ったとき、末っ子は実家に帰ることも、お見舞いに行くこともなかった。亡くなったときも、葬儀の準備を手伝うこともなく、すべてを姉たちに任せた。
それでいて葬儀中は寿司を食い散らし、酔っぱらっていた。遺骨をお墓に入れる際も、末っ子は欠席した。
その後、父親は脳梗塞を発症する。命に別条はなかったが、運動障害などの後遺症が残った。この事態に、3人の兄弟姉妹は「当番制にして、協力し合って介護をしていこう」と話し合った。末っ子も「わかった」とは言ったものの、当番の日になると、「忙しくて……」と言って、実家には帰らなかった。
■「遺産は絶対に渡さない」と決めた父の執念
ある日、姉が実家に帰ると、父親は、こう告げた。「俺は、あいつ(末っ子)には遺産をやらん。冗談じゃない」こうした気持ちを父親が抱いたのは、ここまで触れてきた両親に対する不義理のほか、もう一つ大きな理由があった。末っ子は30代くらいまで、母親にお金を無心し、断られると暴力を振るっていたのだ。父親は、そのことを知らなかった。
母親が末期がんになったとき、夫に、初めて打ち明けたのだった。そこで父親は、長女と夫、夫の両親、長男と妻、妻の両親、長女の子供1人、長男の子供1人の合計10人に対して、暦年贈与をスタートさせた。
贈与する側は、1年に何人に贈与しても構わない。受贈者は、法定相続人だけではなく、誰でもOKだ。この仕組みを使って、父親は10年にわたって、合計1億1000万円のお金を動かし、暦年贈与はストップした。
■相続した家を売っても600万円の「赤字」
こうして父親の財産は、数百万円の貯蓄と、資産価値のほぼない自宅だけとなった。末っ子以外の子供や家族にたっぷり財産を分けた父親は、不自由な身体でありながら、頻繁に1人旅をして日本中を巡った。数百万円の貯蓄は、ほぼゼロになった。すべては末っ子への敵討ちのためだ。そして、父親は老衰で亡くなった。
末っ子は、葬儀にやってくるも、どこかウキウキしている様子であった。「やっと遺産が手に入る」と思ったからであろう。葬儀後、「相続しようぜ」と言ってきた末っ子に、兄がすべての事情を話した。
末っ子は、すぐに自宅を売却しようと不動産会社を訪れた。その査定額は、200万円であった。その時点で800万円ほどの借金があった末っ子は、もはやお金の当てがないことに、途方に暮れることとなった。そして、破産した。
■親への感謝がない子供に遺産はない
【破産しないために】
親が亡くなったら、その財産は子供が引き継ぐことになる。そのため、今回のケースの末っ子のように、相当な額を相続できると期待している子供も少なくないだろう。それは別に悪いことではない。しかし、親も生身の人間である。親不孝者の子供に対して、「絶対に遺産は渡さない」と考えたとしても何ら不思議はない。
今回のように、暦年贈与をする、あるいは遺言書に「末っ子には譲らない」と書くなど、特定の人物への遺産を減らそうと画策することは、それほど珍しいことではない。親に対して不義理を働けば、今回の末っ子のように罰を受けることがあると覚えておきたい。それだけに、ちゃんと親孝行をして良好な関係を構築すべきだ。
【ポイント】
・遺産相続額を減らす手段は多くある!
・親への不義理を繰り返すと罰を受ける!
・今すぐ親孝行をせよ!
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永峰 英太郎(ながみね・えいたろう)
フリーライター
母の末期がん、父の認知症の体験をもとに、実体験をもとにした、さまざまな本の企画・出版も行っている。『改訂版 70歳をすぎた親が元気なうちに読んでおく本』(二見書房)『親の財産を100%引き継ぐ一番いい方法』(ビジネス社)『マンガ! 認知症の親をもつ子どもが いろいろなギモンを専門家に聞きました』(宝島社)『マイナス相続サバイバルガイド』(東洋経済新報社)など。
1969年東京都生まれ。明治大学政治経済学部卒。業界紙・夕刊紙記者、出版社勤務を経て、フリーランスの執筆・編集業につく。ビジネスマンやスポーツマンなどの人物ルポを得意とする。著書に『日本の職人技』『「農業」という生き方』『日本の農業は“風評被害”に負けない』(アスキー新書)、『夢をかなえる!ネットショップのやさしい作り方』(技術評論社)など。母の末期がん、父の認知症の体験をもとに、実体験をもとにした、さまざまな本の企画・出版も行っている。『改訂版 70歳をすぎた親が元気なうちに読んでおく本』(二見書房)『親の財産を100%引き継ぐ一番いい方法』(ビジネス社)『マンガ! 認知症の親をもつ子どもが いろいろなギモンを専門家に聞きました』(宝島社)『マイナス相続サバイバルガイド』(東洋経済新報社)『人はこんなことで破産してしまうのか!』(三笠書房)など。
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(フリーライター 永峰 英太郎)

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