夜ぐっすり眠るにはどんな対策を取るべきだろうか。精神科医の奥田弘美さんの書籍『それ、すべて過緊張です。
』(フォレスト出版)より、睡眠の質を高める食事・生活習慣についての解説を紹介する――。(第2回)
■過緊張で眠れない時にやるべきこと
「睡眠が大切なのはよく理解したけど、過緊張(注)になってきたら、眠れなくなるんだよ」

「仕事のことがぐるぐる頭を回って、なかなか寝つけないし」

「ようやく眠っても、眠りが浅くて、夜中に何度も起きてしまう」
あなたは、今、そんなふうに思ってイライラしているかもしれません。
そのお気持ち、とてもよくわかります。私自身も、過緊張になると、すぐ睡眠に影響が出るタイプですから。
注:自律神経系の交感神経が、ストレスにより過度に緊張し続ける状態のこと。イライラや不安感が高まり、夜になってもリラックスできず気が休まらない、気になることが繰り返し浮かび寝付けないなど、不快な症状が発生し、長引くと心身の不調に発展することがある。
心配事や不安があると、頭が妙に冴えてしまって寝つけなくなることも、夜中に目覚めやすくなって睡眠が浅くなってしまうことも、何度も経験しています。
もしあなたが、このような過緊張状態に陥り不眠気味になってきたら、まずやっていただきたいことを、日中から順に書いていきます。これらは私自身、実行していることばかりです。
■カフェインは眠りの質を悪くする
コーヒーはもちろん、紅茶、ココア、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶にもカフェインが含まれています。エネルギードリンクや栄養ドリンクにも含まれていることが多々あります。
カフェインは体内に入ると、約4~6時間は覚醒効果が持続します(体質や体調によっては8時間以上続く場合もあるという研究報告もあるようです)。
カフェイン飲料を飲んで、たとえ眠れたとしても眠りが浅い質の悪い睡眠になってしまいます。
そのため体調が良い時期でも、カフェイン飲料は午後5時以降は飲まないほうが睡眠に良いとされていますが、過緊張症状があらわれているときは、ただでさえ交感神経が高ぶり覚醒度があがっていて、イライラや不安を感じやすくなっています。
■日中にほどよく体を動かす
カフェイン飲料はできるだけ飲まないほうがいいですが、もしどうしても飲みたければ朝食後や昼食後の眠気覚ましとして、1日1~2杯程度に抑え、午後からは飲まないようにしましょう。
夜に自然な眠気がやってくるためには、日中に身体を動かすことで得られるほどよい疲労感が必要です。精神的には疲れているが、身体は動かさず肉体的にはほとんど疲れていないという肉体と精神の疲れ度合いのアンバランスが高じると、寝つきが悪くなっていきます。
もしあなたが、電車やバスで通勤している場合は、平日の運動は、さほど意識する必要はありません。通勤によって屋外を徒歩で歩くことで、自然にウォーキング時間が確保できていることが多く、肉体的な疲労感が適度に得られているはずです。
しかしリモートワークの場合やドアツードアの車通勤をしている人の場合は、日中にウォーキングする機会がほとんどありません。この場合は、意識して身体を動かして、肉体的にもほどよく疲労を高める工夫が必要です。
■栄養バランスのとれた食事を摂る
昼休憩や帰宅後に、できればトータル20分程度のウォーキング時間をつくるか、屋内で軽く汗ばむ程度の体操をして、脳の疲れと身体の疲れのバランスをとることを意識してください。
社屋やショッピングセンターの階段を上り下りするだけでも、適度な運動ができますよ。
夕食後に血糖値が程よく上がることによっても、眠気が訪れやすくなります。

過緊張症状が出ているときは、心身が疲労しているために、できるだけ栄養バランスのとれた食事を過不足なく摂りましょう。
肉や魚といったたんぱく質と、野菜などのビタミン・ミネラルとともに、ご飯やパン、麺など炭水化物が程よく含まれた食事を意識して摂取してください。
■眠る2時間前までに食事を終える
糖質オフダイエットをしている人は、過緊張症状が出ているときには、一時休止してくださいね。
ただし食事は、睡眠予定時刻の3時間前までに食べ終わることが理想です。眠る直前に食事をとってしまうと、胃腸の動きが活発になるため、睡眠が浅くなってしまいます。最低でも眠る2時間前までに食事を終えてください。
夜は極力、穏やかで心地よい、刺激の少ないリラックスした時間を過ごすように心がけます。ソファーでくつろぐ、静かに音楽を聴くなどして、のんびりと過ごすようにしてください。
夜に運動をしたり、SNSで他者とのコミュニケーションをとったり、ゲームをしたりすると、交感神経がさらに興奮してしまい、過緊張症状が悪化します。
■寝る少し前に入浴する
眠気は、身体の深部体温が上がったのち、下がってきたときに訪れます。
入浴により深部体温を上げ、血の巡りを良くすることで筋肉の緊張がほどけると、深い睡眠に入りやすくなりますので、過緊張時には、入浴は基本的にはおすすめです。
ただし深部体温が下がっていく時間が必要なので、その時間を見越して入浴することが大切です。

眠る直前に熱いお風呂にしっかり入ってしまうと目が覚めてしまうばかりか、夏場などは特に深部体温がなかなか下がらず、寝たい時刻になっても眠気が訪れなくなってしまいます。
■スマホやIT機器には触らない
スマホやパソコンからは太陽光線と似た波長のブルーライトが出ているため、脳が日中だと勘違いしてしまい、自然な眠気が阻害されてしまいます。
過緊張症状が出ているときほど、夜にスマホやパソコンなどのIT機器には、できるだけ触らないようにしてください。
特に眠る1~2時間前からは、IT機器の操作はやめてください。
蛍光灯も同じくブルーライトに近い波長ですので、寝室の照明には蛍光灯をやめて、ランプ色のものを使い、ホテルの部屋のような暗めの照明にすると、眠気を呼び起こしやすくなります。
■アロマオイル、ハーブティーなどを活用する
質の良いアロマオイルは、嗅神経から脳に作用することが証明されています。
鎮静系のアロマオイルであるラベンダー、カモミール、スイートオレンジなどを活用してみましょう。アロマオイル用のディフューザーがなくても、枕元においたティッシュに垂らしておくだけでも、香りの効果を得ることができます。
またカモミールティー、ビターオレンジ、パッションフラワーなどのノンカフェインのハーブティーにも、不安やイライラを鎮静させて、入眠を促す効果があるとされています。
アロマオイルやハーブティーには、睡眠薬のような劇的な催眠効果は期待できませんが、好みの香りや味があれば、ぜひ活用してみてください。
■寝床にスマホを持っていかない
寝床に目覚まし代わりにスマートホンを持ち込んでいませんか?
これは絶対にやめてください。目覚まし代わりにスマートホンを使っている人は、枕元から遠く離して置くか、アナログの目覚まし時計に変えてください。

スマートホンから出るブルーライトだけでなく、通知の着信などで頻繁に発生するバイブレーションで、安眠が妨害されてしまいます。
またスマートホンは、仕事中や日中の「オンタイム」に活用するアイテムです。今から睡眠をスタートしようとする究極の「オフタイム」に、オンタイムのイメージや情報がぎっしり詰まったスマートホンを眺めてしまうと、たとえブルーライトをカットしたとしても、日中の記憶や感情がよみがえってきて過緊張が増長され、眠りの妨げになってしまいます。
過緊張気味になったときは、特に寝室や寝床では、日中の記憶が誘発されないように、スマホだけではなく、仕事関係の本や書類を持ち込まないなど、細心の注意をはらってください。

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奥田 弘美(おくだ・ひろみ)

精神科医 産業医

1967年生まれ。約20年前に中村恒子先生に出会ったことをきっかけに、内科医から精神科医に転向。現在は都内にて診療および産業医として日々働く人の心身のケアに取り組んでいる。執筆活動も精力的に行い『一分間どこでもマインドフルネス』(日本医療情報マネジメントセンター)など著書多数。今回、念願であった恩師・中村氏の金言と生きざまを『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(すばる舎)にまとめて出版した。

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(精神科医 産業医 奥田 弘美)
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