※本稿は、野口聡一『宇宙でラーメンは食べられるか 宇宙暮らしのロマンと現実』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■宇宙でおしゃれは難しい
宇宙は究極のファッション砂漠です。「今日はこのトップスにこのボトムスを合わせて」なんてコーディネートを楽しむ余地はゼロ。流行に敏感なファッショニスタや旅先でもおしゃれを楽しみたい人は、残念ながら宇宙での暮らしには向いていないかもしれません。
宇宙飛行士の服は宇宙服と船内服に大別できます。宇宙服は生命維持装置を備えた高性能スーツで、ヘルメットや手袋をつけて全身をおおっているものです。みなさんが想像する宇宙服は通常こちらでしょう。
じつは、この宇宙服にも2種類あります。打ち上げ時や帰還時に操縦席に座って宇宙船を操作するときに着用する「船内与圧服」と、ISS(国際宇宙ステーション)の外で活動する際に着用する、大型のバックパックつきの「船外活動服」です。
いっぽう、船内服は、ISS内で生活するための、いわば普段着です。ISS内は温度や湿度が一定に保たれているため、船内服は地上の服とほぼ同じ。
■洗濯ができず、服はすべて使い捨て
ただ、地上とは異なる点もあります。宇宙ではファッション性よりも安全性と機能性が優先されるため、服装の選択肢が極めて限られるのです。
火災はISSにおける重大なリスクの一つです。火事が起こったら、閉鎖空間であるISSには逃げ場がありません。
したがって船内服の素材は、静電気が起こりやすく、火災の原因になる可能性がある化学繊維はNG。難燃性にすぐれた綿100%が基本となります。加えて、安全性実証試験と飛行安全性審査をパスしなければ宇宙には持って行けません。
さらに、船内服は使い捨てで枚数制限があります。ISSでは水は貴重な資源であり、汚れた水を処理する設備もありません。そのため洗濯ができず、服はすべて使い捨て。
だからといって、滞在日数分の衣服を持って行ったら、ISSが宇宙飛行士の服であふれかえってしまうでしょう。
■パンツは3日間同じものを履く
ポロシャツやTシャツなどの船内服は15日に1枚、下着は3日に1枚、トレーニング用のタンクトップやショーツも3日に1枚。つまり、船内服は15日間、下着は3日間、つけることになります。
近年の船内服で、吸水速乾や抗菌消臭といった機能性が重視されているのは、この枚数制限が大きな理由です。
中継などのときに着る「よそ行き」のポロシャツなどは月に1枚支給されます。半年の宇宙滞在でたった6枚しかありません。中継やSNSで見る宇宙飛行士がいつも似たような格好をしているのには、このような事情があるのです。
「同じ下着を3日間、同じ服を15日間着るなんて不潔!」と思ったそこのあなた、大丈夫です。無重力空間では服も浮くため肌にはほとんど触れず、汚れにくくなっています。きれい好きな人でも安心して宇宙にお越しください。
■宇宙では下半身が細く、上半身がデカくなる
すでにお話ししたように、宇宙はファッション砂漠です。地上のようにコーディネートを考える楽しみはないものと心得て、服は着回し優先で選ぶとよいでしょう。
また、サイズ選びにもご用心。いつもと同じサイズの服を持って行くと、宇宙ではちょっと不便かもしれません。
地上では、重力の影響で体液は下半身に集まりやすくなっています。しかし、重力がない宇宙では上半身に移動するため、からだにさまざまな変化が起こります。
体形の変化もその一つ。重力から解放された宇宙では下半身が細くきゅっと締まり、上半身のボリュームが増します。
宇宙に行く際はこのように体形が変わることを見越して、ボトムスは地上よりもワンサイズ小さいもの、あるいはウエストを調整できるものを、トップスはゆったりめのものを選ぶとよいでしょう。
■宇宙飛行士がみんな「丸顔」のワケ
ここまで読んで、「激しいトレーニングや食事制限をせずにスタイルアップできるなんて、宇宙はなんてすばらしいところなんだろう!」と思った人もいるかもしれません。
よろこんでいるところに水を差すようで気が引けますが、ここでクイズです。上半身に移動した体液は、最終的にどこにたどり着くのでしょうか?
そう、顔です。スタイルアップと引き換えに、宇宙では顔がむくんでパンパンになってしまうのです。これを「ムーンフェイス」といいます。
服装の話に戻りましょう。宇宙飛行士には女性もいますが、NASAから支給される船内服にはスカートはなかったと記憶しています。無重力状態ではスカートがめくれ放題で、実用的ではないからでしょう。
■Tシャツのすそはズボンにインが基本
同様の理由から、装飾が多い服は宇宙向きとはいえません。また、トップスのすそはボトムスに“イン”が基本となります。なぜかというと、無重力ではシャツも浮いてしまいがちなので、トップスが浮かないようにボトムスに入れておくことが多いからです。
なので、ベルトは必須。地上ではベルトはボトムスがずり落ちることを防ぐ役割をしますが、宇宙ではトップスが浮き上がるのを押さえる役目をしているというわけです。
このように、宇宙での服装にはさまざまな制約がありますが、それもやがて変わるかもしれません。
宇宙では現在、ISSの後継となる民間宇宙ステーションの開発が進んでいます。民間宇宙ステーションがオープンすれば、一般の人も気軽に宇宙に行けるようになるでしょう。
そのころには、さまざまなアパレルブランドから宇宙に適したおしゃれな衣類がリリースされ、地上と変わらないファッションを楽しめるかもしれません。
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野口 聡一(のぐち・そういち)
宇宙飛行士
1965年神奈川県生まれ、博士(学術)。2回の宇宙飛行に成功し、世界初3種類の方法で宇宙から帰還した宇宙飛行士としてギネス世界記録認定。「宇宙からのショパン生演奏」動画などでYouTube Creator Awards受賞。宇宙帰還後の燃え尽き体験や死生観の変化を掘り下げた「宇宙飛行士による当事者研究」で日本質的心理学会論文賞など受賞。ボーイスカウト特別功労賞受賞。合同会社未来圏代表、(株)国際社会経済研究所理事兼CTO、IHIアカデミー長、カップヌードルミュージアム名誉館長、立命館大学学長特別補佐、東京大学特任教授、世界経済フォーラム上級フェロー、宇宙財団理事。趣味は料理、キャンプ、作詞、飛行機操縦。©合同会社未来圏
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(宇宙飛行士 野口 聡一)

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