■オールドメディアは高市早苗を嫌っている
高市外交を巡る大方のオールドメディアの反応を見て目につくのは、彼らが思想信条的に、さらには生理的にといってよいほど高市早苗的なものを嫌っており、その結果として、いかに高市外交の成果を過小評価しがちかという点である。主要紙では産経新聞だけが例外で異彩を放っているといえよう。
具体例をあげよう。
2025年秋の自民党総裁選の過程で、オールドメディアは「小泉進次郎優位」と報じ続けた。
小泉進次郎候補の勢いが鈍ってくると、今度は「林芳正が台頭」ときた。世間には石破政権への辟易(へきえき)感が充満しているなかで、石破政権の農林水産大臣、官房長官として重責を果たしてきた候補が後任になるのは、相当に厳しい戦いであったはずだ。
■高市だけには勝たせたくない
しかも、世論調査においては高市候補が伸びており、自民党の党員票の相当部分が高市氏に投ぜられるだろうと素人目にも予想できたからだ。
にもかかわらず、私の記憶では、首尾一貫して「高市有利」と予測し続けたのは、政治評論家の門田隆将氏と産経新聞出身の佐々木類氏だけだった。なぜなのか?
「高市だけには勝たせたくない」という政治的立場が、彼らの眼鏡を曇らせたであろうことは間違いない。
実際、多くのメディアが「高市政権になれば、日中関係、日韓関係の悪化は必至」と半可通の評論を繰り返していた。
■「高市潰し」こそが社是
かつて、「朝日新聞は安倍政権を倒すことを社是としていると、主筆が述べた」と安倍総理自身が国会で語ったことがあったが、まさに「高市潰しこそが社是」といわんばかりの報道姿勢が総裁選報道の背景にあったと見るのが妥当だ。
問題は、高市政権が発足してからも、オールドメディアのこうした姿勢に本質的には変わりがないことだ。
自民党本部で高市総裁の写真を待って待機している間に、「支持率を下げてやる」などと暴言を吐いた時事通信のカメラマンは、はしなくもそれを露呈してしまった。
後述するが、まさに、公正な報道に携わるジャーナリストではなく、自らの政治信条の実現を図るアクティビスト(活動家)としての顔が前面に出てきている次第だ。
■朝日新聞が中国側の態度に大きな影響を与えた
そして、2025年11月7日の衆議院予算委員会における高市総理答弁。
朝日新聞の報道ぶりが、中国側の態度に大きな影響を与えたことが指摘されてきた。
当初、朝日はデジタル版で「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』認定なら武力行使も」との見出しで記事にして配信した。
そもそも存立危機事態認定は、イコール武力行使ではなく、日本が武力の行使をするためには事態認定に加え、政府として厳正な手続きを踏んで防衛出動を決定する必要がある。明らかに扇情的な見出しをつけて煽ったと言われてもしかたのない所作だった。
案の定、中国の薛剣(せっけん)駐大阪総領事は過剰反応し、「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」などと、一介の総領事が日本国の総理大臣の殺害予告をするという驚天動地の暴言をXに投稿した(薛剣総領事は朝日新聞の見出しを引用するかたちで投稿している)。
すると、こうした反応に腰を抜かしたのか、朝日は日和って見出しを変更した。変更後の見出しは、「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』武力攻撃の発生時」にトーンダウンしたのだ。
■典型的な「マッチポンプ」
当初の見出しが日本による武力行使につながると警戒感を煽るものであったのとは好対照だった。
これこそ、メディアによる典型的な「マッチポンプ」だ。
むろん、見出しに乗せられた薛剣の軽挙妄動は、沈着冷静であるべき外交官として言語道断だ。だが、火をつけておきながら、いったん火が大きくなると鎮火に走る、あるいはそのふりをする。こんなメディアの姿勢こそが俎上(そじょう)に載せられるべきだ。
根底に高市政権の足を引っ張ろうとの政治的動機があるのは、まさに火を見るよりも明らかといえよう。
慰安婦問題を想起する人がいてもおかしくない。吉田清治の虚言に飛びついて大きな外交問題に発展させていったのも朝日新聞だった。
こんなメディアと向き合っていかざるをえない高市政権は、本当に茨の道である。
■雑誌出身のジャーナリストと新聞記者の違い
外交評論活動を行うようになってから、交わるジャーナリストが大きく変わってきたことを実感している。インターネットテレビ「文化人放送局」で毎週木曜日に共演している加賀孝英氏や、刺激満載の対談本『媚中』の共著者である門田隆将氏らが典型だ。二人とも文藝春秋社や新潮社出身の敏腕ジャーナリストだ。
週刊誌・月刊誌記者と外交官。
外務省時代、「週刊誌・月刊誌による取材は報道課を通じて」というのが鉄則であり、直接相対することが避けられていたからだ。
課長、審議官、局長とキャリアを重ねるにつれ、外務省幹部が付き合うジャーナリストの大半は、外務省に設けられている「霞(かすみ)クラブ」に所属している、いわゆる「オールドメディア」の記者となる。具体的には大手新聞社、通信社、地上波テレビ局。霞が関のどの省庁でもとっている記者クラブ制度のなせる業だ。
■外交官時代はぬるま湯に浸かり守られていた
退官して野に身を置いて以来、いかに自分が狭い井戸の中でぬるま湯に浸かって守られていたか、理解できるようになった。
というのも、外交評論を行うなかで付き合う月刊誌、週刊誌、地方テレビ局、インターネットテレビなどで活躍する関係者は、官僚時代に相手をしてきた記者クラブ所属記者とはかなり趣が異なるからだ。
片や動物園で飼いならされた行儀のいい動物、片や獲物を捕まえるのに貪欲な野生動物といったら語弊があるだろうか?
インターネットテレビや月刊誌での対談は、そういった野性を失っていないジャーナリストとの対談だからこそ、歯に衣着せず肝胆相照らすやりとりになっているのではないかと受け止めている。
まず圧倒されるのは、その圧倒的な取材力と博識である。
日中国交正常化、日朝交渉や拉致問題の舞台裏の話など、彼らでなければ語れない話ばかりだ。
■オールドメディアの記者は寄りつかなくなった
第二は、組織にとらわれない自由な思考だ。
官僚時代、朝日新聞を筆頭とする主要新聞の記者からしばしば取材を受けた。
そんな彼らは、私が役職を外れ、野に出て自由に言論活動を展開するようになると、ベストセラー本を何冊出そうとも二度と寄りつかなくなった。
何のことはない、社命を背負って有力な取材源に近づいてネタを取ろうとしただけであって、社論にそぐわない一評論家の意見などに関心はないのだ。
こうした連中が石破総理(当時)の訪米に同行し、日本の総理大臣がトランプ大統領からさんざん皮肉と当てこすりの嵐を浴びせられようが、日本にとって喫緊の課題の関税引き上げやウクライナ戦争について日本の立場を申し入れるのを避けようが、「首脳会談は成功」と囃(はや)し立てることになる。
■「記者というより活動家」が実態
これこそ、大半のオールドメディアの実態ではないか。
公正で客観的なジャーナリスト(記者)というよりも、社論をプロモートするアクティビスト(活動家)または社論に抗う気もないサラリーマン。だから、多くの国民が離れていく。
こんな状態では、永田町や霞が関にはびこる媚中勢力を一刀両断するなど、到底期待できない。
日本全国を講演行脚するにつれ、そうした辛口の深掘り評論こそ、多くの国民が求めているものだと肌身で感じてきた。だからこそ、オールドメディアが事あるたびにその危険を強調するネットやSNSでの発信こそが貴重なのだと痛感している。
■「オールドメディア離れ」は顕著
新聞、通信社、地上波・BS放送など、オールドメディアの関係者と会うたびに聞かされるのは、暗い将来展望だ。かつて栄華を誇った大新聞社の記者からは、購読者数が減り広告も激減してきた話、社員の給与が引き下げられた話、ライバル紙に吸収合併されるかもしれないという話を聞かされる。
通信社からは、地方紙への配信が頼りであるのに、その地方紙自体が若い世代から相手にされず発行部数が激減していること、支局所在地で行っている有識者を招いての懇談会の会員数がなかなか伸びないといった苦悩を聞かされる。
テレビ局からは、インターネット番組のユーチューブ再生回数がしばしば数十万回にも上ることへの羨望と危機感が表明される。
彼らこそがいわば「第四の権力」であるにもかかわらず、メディア自身、国民の厳しいチェックと批判から免れてきたのではないかとの指摘は絶えない。
慰安婦問題で吉田清治の詐話に飛びつき、世紀の誤報を拡散し続けた朝日新聞。
2024年8月、ラジオの国際ニュース生放送中に、中国人スタッフが突然、中国語で「南京大虐殺を忘れるな」「釣魚島(尖閣諸島のこと)は中国の領土」などと発言する事態を許してしまい、生放送で中国共産党のプロパガンダ拡散に一役買ってしまったNHK。
タレントによる局アナへの不祥事対応で世論の厳しい指弾を招いたフジテレビ。
世が世であれば「お家取り潰し」にあっても致し方ないようなマグニチュードの失態を招いていても、どこ吹く風とばかりやり過ごす。
他者の批判にあたる役まわりだけに、厳しい自己批判を実践しなければならないとの峻厳さがオールドメディアには欠けているのではないか?
こうした不満が徐々に国民の間に蓄積して、今のメディア不信を招いてきたのではないだろうか?
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山上 信吾(やまがみ・しんご)
前駐オーストラリア特命全権大使
1961年東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、1984年外務省入省。コロンビア大学大学院留学を経て、2000年在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官、その後同参事官。
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(前駐オーストラリア特命全権大使 山上 信吾)

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