英語が話せなくても、英会話でその場をうまく乗り切れる方法はないのか。大学や企業で英語を教える濱崎潤之輔さんは「文法や単語より先に知るべき“暗黙の了解”がある。
『Yes』だけで答えたり、うなずくだけで会話を続けたりすると、相手に冷たい印象を与えてしまう。まずは一言加えることを試してほしい」という――。(第2回)
※本稿は、濱崎潤之輔『中学英語でつまずいた人が読む本』(日経BP)の一部を再編集したものです。
■英会話で「空気」よりも大事なこと
「単語も覚えたし、文法も理解したはずなのに、なぜか会話が弾まない」と悩む人は少なくありません。これは単なる語学力の不足ではなく、英会話の“暗黙の了解”を知らないことが原因の一つです。
暗黙の了解とは、誰もが自然に守っている会話のマナーのことです。日本語では空気を読むことで成立している部分も多いのですが、英語は空気よりも、言葉そのものをきちんと伝えることで相手との関係をつくります。
こうした暗黙の了解を知っておくことには、主に3つのメリットがあります。
①話が自然に続く
②相手に好印象を与えられる
③文法の細かい間違いが気にならなくなる
英語では暗黙の了解を押さえるだけで、多少の文法ミスがあっても話しやすい人として受け入れられるようになります。本章では、暗黙の了解とは何かを解説しつつ、すぐに実践できるキーフレーズを紹介します。
■得する相づち、損する相づち
①相づちは「音」ではなく「言葉」で
日本語では、「うんうん」「へえ」と声を出したり、うなずくだけで会話が成り立ちます。でも英語では、それだけでは伝わりません。

ある会社員が海外出張中に英語の会議に出席しました。内容はなんとか理解できたのですが、終始うなずくだけで会議を終えたところ、現地のメンバーに「彼は何も意見がないのか」と思われてしまいました。
そこで次の会議では“I see.”(なるほど)や“That's interesting.”(それは興味深いですね)と、短いあいづちを使って返すようにしたところ、その場の雰囲気が明るくなり、自然に会話に入れるようになったそうです。英語では「反応」することが、会話に参加することなのです。たった一言でもいいのです。まずは“Oh really?”や“That's nice.”を使うことから始めてみましょう。
A:I went to Osaka for a meeting yesterday.

(アイ ウェントゥ オオサカ フォラ ミーティン イェスタデイ)

昨日、大阪へ会議に行きました。
B:Oh really? How was it?

(オウ リアリィ? ハウ ワズ イッ?)

そうなんですか? いかがでしたか?

英語では、この“Oh really?”(そうなんですか?)の一言がとても大事です。なぜなら「話を聞いていますよ」「興味を持っていますよ」という気持ちが伝わるからです。さらに“How was it?”(いかがでしたか?)と続けることで、自然に会話が広がっていきます。
■「はい」だけで返事をしてはいけないワケ
日本語では、相手が話したあとに「うんうん」とうなずくだけでも、会話が続くことが多いですよね。でも英語では、うなずくだけだと「退屈している」「関心がない」と思われてしまいます。
一言でもいいので「言葉」で反応しましょう。
A:I went to Osaka for a meeting yesterday.

(アイ ウェントゥ オオサカ フォラ ミーティン イェスタデイ)

昨日、大阪へ会議に行きました。
悪い例B:うなずくだけ。

→ 相手から見ると、「聞いていないのかな?」と思われてしまう。
良い例B:That's nice. Hope it went well.

(ザッツ ナイス ホウプ イッ ウェンテェル)

いいですね。うまくいっていればいいですね。

→ たとえ単語が少なくても、「あなたの話に関心がありますよ」という気持ちは、しっかり伝わる。

②「Yes」だけは危険信号
日本語では「はい」だけでも、会話はちゃんと成り立ちます。でも英語では、“Yes.”だけだと冷たく聞こえることが多いのです。
ある国際会議で質問されて“Yes.”だけで答えてしまった日本人社員がいました。その外国人の上司は「コイツは本当に理解しているのか?」と不安になったでしょう。そこで“Yes, I'll send it by email this afternoon.”(イエス アイゥ センディッ バイ イーメイゥ ディス アフタヌーン/はい、今日の午後にメールで送ります)」と伝えたところ、その社員は上司の信頼を得られたそうです。

■「Yes」に付け加えるべき一言
英語では、返事の後に「少しの情報」や「気持ち」を添えるのが自然です。たった一言加えるだけで、相手の受け取る印象がまるで違ってきます。
A:Do you like sushi?

(ドゥ ユー ライク スシ?)お寿司は好きですか?
悪い例B:Yes.

(イェス)はい。

→ 素っ気なく聞こえます。まるで「会話を終わらせたい」ような印象です。
少しはマシな例B:Yes, I like it.

(イェス、アイ ライキッ)はい、好きです。

→ こちらが自然です。感じがやわらかく、会話も続きやすいです。
良い例B:Yes, especially tuna sushi.

(イェス、エスペシャリィ チューナ スシ)はい、特にマグロの寿司が好きです。

→ さらによい返しです。相手が“Oh, me too!”などと続けやすくなり、会話が広がります。

このように英語では“Yes”で終わらせるより、「Yes, + 一言」を足すだけで、相手に「話したい気持ち」が伝わります。
これは、日常会話でもビジネスにおける会話においても大切なポイントです。
これは日本語でも同じです。「できますか?」と聞かれて「はい」だけで終わると、どこか頼りなく聞こえませんか? 一言を加えて「はい、やります」と言った方が、相手は安心します。英語でも同じなのです。“Yes.”だけだと、気持ちが伝わらないのです。だからこそ、英語では“Yes”で終わらせない。「Yes, + 一言」を意識するだけで、あなたの英語はすぐに自然に聞こえるようになります。次に“Yes, but”や“Yes, I think so.”など、バリエーションを増やしていくと、会話の幅がぐっと広がりますよ。
■「大人の英語」を話すテクニック
③意見をやわらかく伝えるクッション表現
日本人に比べ、アメリカ人は自己主張が強く、意見を明確に伝える傾向があると思われがちです。しかし、英語で「できません」「違います」とハッキリ言ってしまうと、やはり角が立ってしまいます。例えば“ No, you're wrong.”(ノー ユーァ ゥロング)なんて言い方をすると、相手はドキッとしてしまいます。そんなときに使えるのが、クッション表現(やわらかく伝える言い回し)です。
これは、相手の意見を否定せずに、自分の考えをやんわり伝えるためのフレーズです。
よく使われるクッション表現
・I think……

(アイ シンク)

私は~と思います。
→ I think it's a bit difficult.

(アイ シンク イッツ ア ビット ディフィカゥト)

少し難しいと思います。
・Maybe……

(メイビィ)

たぶん~かもしれません。
→ Maybe not.(メイビィ ナット)

そうではないかもしれません。
・I'm not sure, but……

(アイム ナット シュア バッ)

よく分かりませんが~。
→ I'm not sure about that.

( アイム ナット シュアバウ ザット)

それについてはよく分かりません。
・In my opinion……

(イン マイ オピニオン)

私の考えでは~。
→ In my opinion, it might be too expensive.

( イン マイ オピニオン イット マイト ビー トゥー エクスペンシブ)

私の考えでは、それは高過ぎるかもしれません。

このような言い方を使うと、相手を否定せずに意見を伝えることができます。英語では、ストレートに反対するよりも、少しやわらかく伝える方が大人の会話として自然に聞こえます。
■日本語でも英語でも「婉曲」が大事
会話例
A:Let's buy 100 new chairs for the office.

(レッツ バイ ワンハンドレッド ニュー チェアズ フォ ジ オフィス)

オフィスに新しい椅子を100脚買いましょう。

B: I think it might be too expensive. Maybe we should start with 20.

(アイ シンク イッ マイ ビー トゥー エクスペンシブ メイビィ ウィ シュッスタートゥィズ トゥエンティ)

それは高過ぎると思います。20脚から始める方がいいかもしれません。

この会話では、Bは“ No, that's too expensive.”(ノー、ザッツトゥー エクスペンシブ)とは言っていません。“I think it might be(~かもしれません)” とやんわり言うことで、相手に「反対されている」ではなく、「提案されている」と感じてもらえます。
例えば日本語でも「それは違う」よりも「そうかもしれませんが、別の考えもあります」と言われた方が、ずっと受け入れやすいですよね。英語でも全く同じなのです。“クッション表現” は、言葉の優しさで相手の心を守るテクニックです。まずは“ I think it's a bit difficult.” や“Maybe not.”から始めてみましょう。

----------

濱崎 潤之輔(はまさき・じゅんのすけ)

大学・企業研修講師、書籍編集者

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。これまでにTOEIC L&Rテスト990点(満点)を100回以上取得。現在は、明海大学、獨協大学、神戸女学院大学、早稲田大学EXT、福岡女学院大学など、全国の大学で講師を務めるかたわら、ファーストリテイリングや楽天銀行、SCSK(住友商事グループ)、エーザイ、オタフクソース、ブシロードといった大手企業でもTOEIC L&Rテスト対策の研修を行う。主催するTOEIC L&Rテスト対策セミナーはいつも満席になるほどの人気で、スコアアップだけでなく英語力も身につけたい多くの人たちに支持されている。著書に、『改訂版 中学校3年間の英語が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版)、『TOEIC L&Rテスト990点攻略 改訂版』、『TOEIC L&Rテスト990点攻略 文法・語彙問題1000』(旺文社)などがあり、累計100万部以上の実績を誇る。

----------

(大学・企業研修講師、書籍編集者 濱崎 潤之輔)
編集部おすすめ