2024年11月30日、秋篠宮が59歳の誕生日会見で語った「皇族は生身の人間」の意味を考え続けている。
当時も、皇族数確保のための制度改正論議は行われていた。
加えて、制度によって「どういう状況になるのか、どういう考えをもっているかということを、生活や仕事の面でサポートする宮内庁のしかるべき人たちは理解しておく必要がある」と、宮内庁を叱った。
もちろん、宮内庁を名指しした裏には、皇室典範改正によって人生設計に影響を受ける、若い皇族たちの意見も聞くべきではないか、という強い思いがあったことは間違いないだろう。
秋篠宮はそれ以前の2009年の会見でも、今後の皇室のあり方が議論される際には「将来その当事者になる皇太子ほかの意見を聞くという過程も必要」と発言をしていた。
その若い皇族というのは、当時は、天皇の長女・愛子さん、秋篠宮家の長女・眞子さん、次女・佳子さん、長男・悠仁さんであることは間違いない。
■愛子様、悠仁様の意向は誰も知らない
佳子さんは、皇室典範が改正されれば、長女の眞子さんのように結婚して皇室を出るという願いは叶わなくなる。
愛子さんは、国民の7~8割が天皇に即位することを望んでいるといわれるが、高市早苗首相は、女系天皇はもちろんのこと女性天皇にも否定的である。
悠仁さんは秋篠宮に続いて皇位継承順位第2位だが、秋篠宮は辞退するといわれているので、このままいけば“異例”の事態で天皇に即位する可能性がある。
だが、“生身”の人間である3人から、自身が自分の将来をどう考えているのかはまったく伝わってこない。
宮内庁の人間が3人に直接話を聞いたという報道も読んだことはない。
私は、秋篠宮の発言に込められているのは、「象徴」という制度への静かな“異議”ではなかったかと考えている。
さらに、長女・眞子さんと小室圭さんが結婚する際、週刊誌、テレビを中心に激しいバッシング報道が続いたが、秋篠宮家は反論の機会を持たなかった。
しかし、皇族というのは「何を言っても傷つかない偶像」ではなく、普通の人たちと同じように悩み、傷つき、体調を崩す存在なのだという、当たり前だが切実な事実を訴えたのだと考えている。
眞子さんが結婚後、ニューヨークへ旅立った後も、紀子さんをはじめとする秋篠宮家への誹謗中傷とも思える激しい週刊誌のバッシング報道は続いた。
秋篠宮の発言は、職業の選択、居住の自由、恋愛の自由、言論の自由が制限されている皇族の一人として、われわれにも尊厳を認めてほしいという切実な“訴え”ではなかったのか。
■麻生太郎の暗躍
今回、皇室典範の改正の焦点になっているのは二つ。一つは「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する」、二つ目は「旧宮家の男系男子を養子に迎える」というものである。
2022年1月に、政府の有識者会議がまとめた報告書が国会に示され、24年5月から与野党協議で皇族数の確保についての議論が進められてきた。
だが、自民党の麻生太郎と立憲民主党の野田佳彦との意見が食い違い、25年4月を最後に開催されてこなかった。
しかし、首相に就任した高市早苗は、圧倒的な数を背景に皇室典範の改正を言明して、4月15日、およそ1年ぶりとなる与野党協議(全体会議)が開かれたのだ。
「自民党内の議論をリードしてきた麻生太郎副総裁の側近である森英介元法相が2月、協議の“行司役”である衆院議長に就任。自民は7月中旬に迎える会期末までに皇室典範の改正にこぎ着けたい意向です」(全国紙デスク=週刊新潮4月30日号)
拙速とも思える進め方だが、まだまだ問題は山積している。
■立憲議員からの“正論”
2017年に衆参両院で行った「天皇の即位等に関する皇室典範特例法案に対する付帯決議」では、政府は(安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等)について、速やかに検討し、国会に報告するよう求められている。
ところが2021年の有識者会議の報告書では、本来論じるべき皇位継承問題が棚上げされてしまったのだ。
この報告書を受けた与野党協議でも、皇族数の確保に限ってだけ議論されてきたのだ。
新潮によれば、こうした現状に、再開された与野党協議で早々に異を唱えたのは、立憲の長浜博行参院議員だったという。昨夏までは、参院副議長として“行司役”の一端を担ってきた長浜議員に、新潮が尋ねると、
「本来の課題から切り離され、もっぱら皇室数確保についての方策を示すばかりで、本質的な議論が避けられている。そんな全体会議の状況について私は、はなはだ遺憾だと協議の場で述べました」
「総理大臣が皇室典範改正を声高に叫び、選挙公約にも掲げる。『静謐な環境』での議論が大事だと言われているのに、それは静謐からは程遠い。数の力を持って“今ならやれる”とばかり、典範改正を進めようとしているのです」
「“養子”という文言はどこにも登場しません。最優先である安定的な皇位継承の確保のための方策こそ検討されなければならず、新たに有識者会議を立ち上げるのも一案でしょう」(=週刊新潮4月30日号)
■国民の理解が得られるのか
高市首相は自民党大会でも、旧宮家の男系男子養子案を優先的に進めるといったが、それに疑問を呈するのは、2021年の有識者会議でヒアリングを受けた笠原英彦・慶應義塾大学名誉教授(日本政治史)だ。
「明治に制定された旧皇室典範でも、皇室が養子をとることを禁じています。容認すれば、際限なく“血統の乱れ”に繋がっていきかねないという懸念のためです。それを現行の典範も引き継いでいるわけですから、この原則は、よほど明確な根拠がない限り、解禁すべきではないと思います。
そもそも旧宮家の男系男子の中から、自らが養子入りして皇室を支えていくという方々がどのくらい出てくるのか。保守派の人たちは、男系男子が続くのであればそれでいいと考えているのでしょうが、制度設計を安易に捉えていると言わざるを得ません」(=週刊新潮4月30日号)
保守的な新聞といわれる読売新聞も、4月16日付の社説で、「80年間も民間人として生活してきた旧宮家の人を唐突に皇族に復帰させ、その後生まれた男子を天皇と想定することに、国民の理解が得られるのか」としている。
これに関連して、驚くべき「暴論」を吐いた自民党幹部がいると、女性自身(5月5日号)が報じている。
■「愛子様に未婚を強いる」という暴論
女性自身(5月5日号)に掲載されたタイトルは「愛子天皇の結婚・出産は許されない」。自民党内の保守強硬派122人が名を連ねる議員連盟「日本の尊厳と国益を護る会」の代表である青山繁晴環境副大臣がその人だという。
「皇族数確保の全体会議が開かれる直前の4月1日、護会は会合を開き、提言について議論しています。その後のブリーフィングでの青山氏と記者のやり取りの内容に、宮内庁にも驚きが広がったのです」(宮内庁関係者)
青山氏は記者とのやり取りで、こういったという。
「論争の種になることをあえて言う。愛子内親王殿下がもし即位されれば女性天皇として9人目でいらっしゃる。日本の歴史と何も違うことはないが、古代のいわば知恵のように『ご成婚召されるな』『御子はもうけられません』――そんなことは言えるはずがないし、絶対に言ってはいけない。古代と現代では基本的人権に対する考え方が違う」
「護る会の考え方としても、古代と違って、皇族の方々におかれても基本的人権は貫かれるべきだ」
などとまともなことをいっていたのだが、記者から、「愛子天皇も決して否定しないが、未婚を強いかねないということか」と聞かれ、
「そういうことも考えに入れるべきだということ」といったというのだ。
愛子さんの人格への配慮や思いやりなど欠片もない、天皇は男系男子に限るというウルトラ保守派の“ホンネ”が漏れたといえるだろう。
■高市首相の「女性天皇NG」に関する一考察
ホンネといえば、高市首相がこれまでの女性天皇容認を、突然、翻したのはなぜかという疑問に答えてくれるメディアは、私が知る限り全くなかった。
皇族数を確保するだけの皇室典範改正をなぜ急ぐのか?
彼女の変節は、多くのメディアや識者たちから批判を浴びているが、高市首相はそれについて全く説明しようとしない。
その謎を解くカギを、新潮で「日本ルネッサンス」を連載している櫻井よしこが提供してくれた。
櫻井はこの国の保守派の論客の一人である。高市首相とは思想的に似ているといっていいだろう。2021年9月17日のAERA dotでは「総裁選出馬の高市早苗氏のネット人気が急上昇 『軍師』には安倍前首相、櫻井よしこ氏も」と書かれていた。
その櫻井は、4月30日号のコラム「皇室を狙う情報工作は中国発だった」でこう書いている。
櫻井は、週刊誌はほぼ全誌が愛子さまを礼讃し、秋篠宮家を非難する偏った報じ方に疑問を呈する。
「愛子様人気は高いが、それをさらに煽るのがネットだ」と、櫻井は見る。その一例がFacebookやYouTubeなどの動画を上げているアカウント「日本の魅力」だと指摘するのである。
「どれほど、日本が好きになる内容かと思えばとんでもない。間違いと嘘で溢れた皇室を貶める悪意の塊である。同じようなサムネで多くの動画が出されている。内容はいずれも定型で、今上陛下御一家への手放しの礼讃と秋篠宮御一家への究極の貶めが対になっている」
■愛子天皇は中国の思惑?
中曽根平和研究所の上席研究員の大澤淳は、「日本の魅力」がFacebookに上げられた時、直ちにアカウントやコメントを追跡し、位置情報を割り出した結果、発信元は全て香港だと判明したというのである。
「中国の情報工作があるのは明白です。目的は『敵社会』、つまりわが国の安定を崩すことです。皇室に目をつけたのは彼らが日本国を非常によく研修している証拠だといえます」(大澤氏)
今は皇室典範の改正にかかっているから、この機に愛子様、悠仁様を軸にして、日本の世論を分断するのが狙いだというのである。
櫻井曰く、「わが国の皇室は神武天皇以来、ずっと男系のお血筋で皇位を継承してきた。中国はそれを変えさせようと情報工作に余念がない」として、中国は、愛子天皇を望む人と悠仁親王の皇位継承を推す人々を対立させて分断し、悠仁親王の天皇実現の可能性を潰すために、秋篠宮への嫌がらせを繰り返しているのだと見ている。
愛子天皇を実現することは中国の思惑通りになることであり、もし愛子天皇が即位して天皇となり、民間人と結婚すれば、愛子さんの子どもは男子であろうと女子であろうと、母親の血のみで皇統につながる女系天皇である。その方が天皇になれば女系天皇の誕生になり、男系の血筋は絶えることになる。
「真の意味での皇統は滅びてなくなる」「私たちはその罠に嵌ってはならない」(櫻井)というのである。
私のようにFacebookやYouTubeをやらない人間は、「バカバカしい陰謀論」と思うしかない。
■まさか陰謀論を信じたのでは…
だが、高市首相が信頼する人間は極めて少ないようだから、その一人である櫻井が唱えるこうした陰謀論が、高市首相の耳に入っている可能性は極めて高いのではないだろうか。そして、櫻井同様、中国嫌いの高市首相もこの話を信じたのではないか。
そう考えれば、「女性天皇」を容認していたはずの高市首相が、急に、認めないと変節した理由がわかる。
高市首相は毎回、世論調査に一喜一憂しているといわれる。同じ世論調査で「愛子天皇を待望」している国民が7~8割もいるのである。その人たちのほとんどは陰謀論に動かされているのではなく、悠仁さんが天皇になることを否定しているのでもなく、純粋に愛子さんが天皇に相応しいと考え、その実現を望んでいるのだ。
現代の天皇は、国民の総意に基づくのだから、その総意を無視して、女性天皇の可能性を一切議論せず、最初から排除することなどあってはならないはずである。
早くも女性誌は、旧宮家の中に愛子さんにピッタリの男性がいるのではないかと、旧宮家の具体的な名前まで挙げて報じ始めている。
しかし、皇族の数合わせしか関心のない政治家から、無理やり押し付けられた相手と彼女が結婚して、幸せになれるのだろうか。
私は、彼女の晴れやかな微笑みに隠された深い哀しみを思う。たった一度の自分の人生を、自分の思う通りに生きることができないほど辛いものはないはずだ。
「愛子さんの24の春を泣かせない」
政治家は、そのことを常に考えながら皇室制度改革に携わるべきである。
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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。
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(ジャーナリスト 元木 昌彦)

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